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新型日産スカイライン「プロパイロット2.0」で現実の道路事情と著しく乖離した速度規制のあり方も浮き彫りに。道路交通行政関係者は全員体感すべし!


13代62年の歴史を持ち、日産そして日本を代表する高級スポーツセダン「スカイライン」が7月16日、2度目のマイナーチェンジを実施。高速道路のナビ連動ルート走行と同一車線でのハンズオフ走行を可能にした「プロパイロット2.0」をハイブリッド全車に標準装備したほか、従来のダイムラー製M274A型直4直噴ターボエンジンに代わり、新たに自社製のVR30DDTT型3.0ℓ V6直噴ツインターボエンジン搭載車を2種類設定している。




フロントマスクも日産ブランドの「Vモーショングリル」へと生まれ変わったこの大幅改良モデルに、ハイブリッド車を中心として河口湖(山梨県南都留郡)周辺および中央自動車道で試乗した。




REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、鈴木慎一、日産自動車

1957年にデビューした初代プリンス・スカイライン

 誤解を恐れずに言えば、スカイラインの13代62年は、嘘と裏切りの歴史である。




 「高級」かつ高性能な「スポーツ」セダンとして、1957年に生を受けたスカイラインは、落ち着いた内外装や快適な居住空間・乗り心地を持つ「高級」セダンと、高い動力性能や意のままに操れるハンドリングを備えた「スポーツ」セダンとの間を行ったり来たりし、一途なスカイラインファンを振り回し続けてきた。

ボディサイズを縮小し走行性能を追求した、1989年デビューの八代目R32型スカイライン

 時にはボディサイズを拡大したりインフィニティバッジを付けたりして「スポーツ」セダンとしてのスカイラインを求めるユーザーのニーズに逆行し、また時には全高やホイールベースを縮小し内外装をスポーツ路線に転換して「高級」セダンとしてのスカイラインを求めるユーザーを裏切るというその在り方は、まるで三角関係を描いた恋愛ドラマの優柔不断な主人公のようだと言っても過言ではあるまい。

「FMパッケージ」を採用し、初のグローバルモデルとなった、2001年デビューの11代目V35型スカイライン

 それでも、北米などで「インフィニティG」として販売されるグローバルモデルとなった、2001年デビューの11代目V35型以降、「高級」セダンとしてのスタンスを堅持、進化してきたことで、成功とは言い切れないものの一定の成果を収めてきた…彼の地では。




 だが日本ではスカイラインに対し、ホモロゲーションモデルとして生を受けた歴代「GT-R」を筆頭としたハイパフォーマンスカーとしてのイメージと、それらが勝ち取ったレーシングフィールドでの栄光が、メーカー・ユーザー双方に対して呪いのように取り憑いている。




 結果的に18年もの時を経てなお、日本ではこの呪いを打ち払うことは能わず。価格帯の上昇と全世界的なセダン離れも相まって、四代目以降続く販売台数の減少に歯止めどころか拍車をかけることになった。

2013年11月デビュー当初の現行13代目V37型スカイライン

 そして、2013年11月のデビューから6年を経て行われた、今回で二度目となる現行13代目V37型スカイラインのマイナーチェンジである。




 現行V37型は海外仕様「インフィニティQ50」のみならず、インフィニティブランドを展開しない日本市場向けの「スカイライン」に対してもインフィニティバッジを与えたことで、デビュー当時話題になった。

全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm ホイールベース:2850mm

日産ブランド共通の「Vモーショングリル」を採用したフロントマスク
スカイライン伝統の丸目四灯コンビネーションランプを採用したリヤまわり


 だが今回のマイナーチェンジではその方針を一転。日産ブランド共通の「Vモーショングリル」を採用し、リヤコンビネーションランプにも四代目「ケンメリ」C110型から10代目R34型までのスカイラインが用いていた丸目四灯のモチーフを与えることで、「スポーツ」セダンとしてのスカイラインに宗旨替えしている。




 だが、このエクステリア変更は諸刃の剣。高級車ブランドのインフィニティから大衆車ブランドの日産へと都落ちしたことで、マイナーチェンジ前のスカイラインが備えていた優美さや高級感は少なからず損なわれている。

ハイブリッドGTタイプSPの運転席まわり。パーキングブレーキは電子式

 ただしインテリアに関しては、3.0ℓターボ車に新規設定されたホットバージョン「400R」を除き、従来との大きな違いはない。これがインテリアの質感低下を防いだという点では歓迎できるものの、スポーティになったエクステリアとのチグハグ感を生み出していることには、首を傾げざるを得ないだろう。

「ダイレクトアダプティブステアリング」のシステム構成

 そして実際に、「プロパイロット2.0」を搭載したハイブリッド車の最上級グレード「GTタイプSP」を走らせると、ますますそのチグハグ感は強まっていく。今回のマイナーチェンジで全車に標準装備されたステア・バイ・ワイヤシステム「ダイレクトアダプティブステアリング」のセッティングが変更され、低速域でのアシストトルクが増やされているのか、操舵力が軽くなるとともにステアリングインフォメーションも希薄になり、適切な舵角を手の平から判断しにくくなっている。

ハイブリッドGTタイプSPは245/40RF19 94WのダンロップSPスポーツMAXX 050 DSST CTTを装着

 一方で乗り心地は旧来の日産製スポーツモデルと変わらぬ、良く言えば男らしい、率直に言えば硬いまま。スカイラインにはグレード・サイズを問わず全車にランフラットタイヤが装着されるのだが、これがサスペンション自体の硬さに相乗効果をもたらしているのか、大きな凹凸で強烈な突き上げを乗員に与えてくる。




 特に245/40RF19 94Wのランフラットタイヤを装着したハイブリッド車のGTタイプSPは、低中速域で目に見えないレベルの細かな凹凸をも忠実に拾って乗員に伝えるため、リラックスした気持ちには決してなれなかった。

「プロパイロット2.0」のシステム構成(前側)
「プロパイロット2.0」のシステム構成(後側)


 では、今回の目玉の一つである最先端の先進運転支援システム(ADAS)「プロパイロット2.0」の仕上がりはどうか。

日産がついに「プロパイロット2.0」で手放し自動運転を実現する! 今秋、まずは新型スカイラインから
ZFの単眼カメラ「トライカム」

 技術的な詳細は上記記事に詳しいので概要のみお伝えすると、従来の「プロパイロット」が単眼カメラのみで自車周囲の状況をセンシングして加減速および操舵アシストを行っていたのに対し、「プロパイロット2.0」はZF製の三眼カメラ「トライカム」と、インパネ中央に設置される「ドライバーモニター」、GPSのほか、フロント中央のミリ波レーダー、前後バンパー両端の準ミリ波レーダー、ドアミラーなど四方に配置される「アラウンドビューモニター」用広角カメラ、前後合計12個のソナーも装着。

インパネ天面中央に装着される「ドライバーモニター」の赤外線カメラ

 さらには3D高精細地図データ(HDマップ)を組み合わせ、ナビで設定したルートと連動させることで、HDマップがある高速道路における同一車線内でのハンズオフ(手放し走行)を可能にした。また、「プロパイロット2.0」で走行中、ドライバーが警報に反応せずシステムが車両を緊急停止させると、専用のオペレーターに自動接続する「プロパイロット緊急停止時SOSコール」も搭載している。

「プロパイロット2.0」の操作スイッチ。右上の矢印が「車線変更支援」のスイッチ

 操作方法はいたって簡単だ。従来の「プロパイロット」とほぼ同じく、ステアリング右側にあるプロパイロットボタンを押し、「CANCEL」ボタンを押し下げれば、メーター中央のディスプレイやHUD(ヘッドアップディスプレイ)表示が緑色になり、ハンズオンでの加減速・操舵アシストが起動。




1.HDマップがカバーする道路上


2.中央分離帯がある


3.車速が制限速度内に収まっている




 などの条件を満たしていると、ディスプレイ表示が青色になり、ハンズオフでの走行が可能になる。

ハンズオフ走行時のメーターディスプレイ表示
ハンズオフ走行時のHUD表示


プロパイロット2.0を起動し、ハンズオフでドライブしてみた。安心感は非常に高い。ただし、高速道路の一般的な流れは制限速度より速い場合が多い。制限速度内でないとハンズオフできないのは、少し違和感があった

 恐る恐るステアリングから手を放してみると、それまで車線の若干右側を走っていたところ、即座に修正舵が入り、車線にピッタリ真ん中へ。その後路面のうねりや凹凸、バンク角のついたカーブを物ともせずに車線中央を維持し、かつ周囲の車両や速度制限の切り替わりにも素早く的確に反応しながら走行し続けた。

ハンズオフ走行のイメージ。よそ見や居眠りを「ドライバーモニター」が検知すると即座に警報が鳴る

 ディスプレイ表示が青色である限り、周囲の状況にしっかり目を配ってさえいれば、アクセル・ブレーキペダルやステアリングに触れる必要はない。むしろクルマ側の制御に完全に委ねてしまった方が、スキルが低い、または疲労困憊のドライバーが運転するよりも遥かに安心できる。




 ADASは急速に進化し、その制御技術も徐々に自然なものへと改良されているが、このプロパイロット2.0は従来のADASとは次元が異なる。「初めて人間を超えたADAS」と表現しても決して言い過ぎではない。




 でもだからこそ、「車速が制限速度内に収まっている」という起動条件の存在が悔やまれてならない。そして、道路状況に合わせて適宜「プロパイロット2.0」を停止しなければ、自車のみならず周囲のクルマをも、かえって危険にさらすことになる。なぜならば、余りにも正確に、速度制限標識に合わせて車速を制御するため、工事区間や合流分岐とその前後では他のクルマとの速度差が大きくなりすぎるからだ。

「車線変更支援」の使用を促すディスプレイ表示
「車線変更支援」の使用中のディスプレイ表示


 実際に今回の試乗でそれを最も強く体感したのは、中央自動車道富士吉田線上り・大月ジャンクションとその手前。1km以上手前から「車線変更支援」の起動とハンズオンへの復帰を促され、ナビで設定したルートの通り車線変更、ハンズオフ走行に復帰すると、間もなく制限速度が80→60→50km/hへと低下し、車速もその通りに下がって行く。だが他のクルマはジャンクションの中に入り、タイトなコーナーの入口へ進入するまで車速を落とさないのが一般的。後ろへピッタリと張り付かれたり、やがてしびれを切らした後続車に追い抜かれるといった場面が何度かあった。




 筆者が運転免許を取得して23年、これほどまでに制限速度通りに走ることがむしろ危険だということを体感し、心の底から恐怖を覚えたことは一度もない。「プロパイロット2.0」の恩恵にあずかろうとすればするほど、昨今社会問題となっている重大なあおり運転や追突事故を誘発するばかりである。




 国土交通省や警察などの道路交通行政に携わる人は、全員漏れなくこのスカイラインハイブリッドに乗って「プロパイロット2.0」を試し、いかに日本の制限速度の設定ロジックが現実の道路交通事情と著しく乖離しているかを、身をもって知ってほしい。心の底からそう願わずにはいられなかった。

日産スカイラインV6ターボGTタイプP

 今回は短時間ながら、北米仕様から4年もの遅れをもって日本仕様に設定されたVR30DDTT型3.0ℓ V6直噴ツインターボエンジン、そのうち304ps&400Nm仕様を搭載する「V6ターボ」の中間グレード「GTタイプP」にも試乗したので、その印象をお届けしたい。

V6ターボGTタイプPのVR30DDTT型エンジン。写真はヘッドカバーを外した状態

 そのVR30DDTT、印象を一言で言えば「良い意味でターボらしくない」、これに尽きる。極低回転域からレブリミットの7000rpmまでスムーズかつレスポンス良く、だがターボらしいトルクの山谷を感じさせることもなく、回せば回すほど元気に加速していく。エンジンルームを見ずに予備知識ゼロで乗ったならば、良く出来たNAエンジンと誤解しかねないフィーリングだ。

VR30DDTT型エンジンのヘッドカバー裏側。吸音材の配置・形状は400Rも共通

 しかし、「3.0ℓ V6直噴ツインターボ」という記号からすれば、304ps&400Nmというスペックは今や取り立てて高性能なものとは言えず、実際の加速性能もその額面以上でも以下でもない。304psというパワーだけを見れば、3.0ℓならばNA、ターボならば2.0ℓで実現しているエンジンも存在する。304ps仕様に限ってはあくまでも、小型軽量かつ低燃費なダウンサイジングターボエンジンという位置付けに徹しているのだろう。

V6ターボGTタイプPのインテリア。パーキングブレーキが足踏み式となる

 なお、「V6ターボGTタイプP」は「ハイブリッドGTタイプSP」に対し130kg軽く、タイヤも225/50RF18 95Wのランフラットタイヤにサイズダウンされているが、低中速域での乗り心地はこちらの方が格段に上。しかしながら、ターボ車専用にセッティングされたという「ダイレクトアダプティブステアリング」の感触は大差なく、低速域で軽すぎる傾向も全く同じだった。

日産スカイライン400R

400RのVR30DDTT型エンジン
全面的に強化された400Rのシャシー


 今回は展示車両の確認のみに留まった「400R」は、405ps&475Nm仕様のVR30DDTTを搭載する。その詳細は下記記事の通りだが、エンジン以外にもスポーツサスペンションや電子制御ダンパー、フロント4POT/リヤ2POTの対向ピストンブレーキ、専用デザインの19インチアルミホイールが標準装備。

新型スカイラインが搭載するV6ターボ! とにかくレスポンス。そのためにEGR不採用も辞さず。──VR30DDTT
本アルミフィニッシャーを装着した400Rの運転席まわり

後席にもダイヤモンドキルティングとレッドステッチ入りのブラック本革を採用
ダイヤモンドキルティングとレッドステッチが施された本革スポーツシート


 そして室内には、ダイヤモンドキルティングとレッドステッチが施された本革スポーツシートが装着され、Vモーショングリルの新しいマスクによく似合ったスパルタンな雰囲気が醸し出されている。

8月25日時点の新型スカイライン受注状況

 この新型スカイライン、7月16日の発表から8月25日時点までに、目標月販台数200台の約8倍に相当する1560台を受注する好調ぶり。このうち約1/4を「400R」が占めており、かつ30歳代以下の若いユーザーと他社銘柄からの代替も多いのだとか。




 冒頭で述べた過去の歴史を振り返るにつけ、今回のマイナーチェンジの方向性には「またか」という想いを禁じ得ないが、これが販売好調に直結したということは、スカイラインを実際に購入するユーザーの多くが待ち望んでいたものなのだろう。




 それならば今後はブレることなく、「スポーツ」セダンとしてのスカイラインの道を邁進してほしい。率直に言って、まだ迷いが見え隠れする。ゴーン体制から脱却し再建の道を歩み始めた今こそまさに、日産の真価が問われている。

【Specifications】


<日産スカイラインハイブリッドGTタイプSP(FR・7速AT)>


全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm ホイールベース:2850mm 車両重量:1840kg エンジン形式:V型6気筒DOHC 排気量:3498cc ボア×ストローク:95.5×81.4mm 圧縮比:10.6 エンジン最高出力:225kW(306ps)/6800rpm エンジン最大トルク:350Nm(35.7kgm)/5000rpm モーター最高出力:50kW(68ps) モーター最大トルク:290Nm(29.6kgm) JC08モード燃費:14.4km/L 車両価格:604万8000円

【Specifications】


<日産スカイラインV6ターボGTタイプP(FR・7速AT)>


全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm ホイールベース:2850mm 車両重量:1710kg エンジン形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ 排気量:2997cc ボア×ストローク:86.0×86.0mm 圧縮比:10.3 最高出力:224kW(304ps)/6400rpm 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-5200rpm WLTCモード平均燃費:10.0km/L 車両価格:455万4360円

【Specifications】


<日産スカイライン400R(FR・7速AT)>


全長×全幅×全高:4810×1820×1440mm ホイールベース:2850mm 車両重量:1760kg エンジン形式:V型6気筒DOHC直噴ターボ 排気量:2997cc ボア×ストローク:86.0×86.0mm 圧縮比:10.3 最高出力:298kW(405ps)/6400rpm 最大トルク:475Nm(48.4kgm)/1600-5200rpm WLTCモード平均燃費:10.0km/L 車両価格:552万3120円
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