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従来比で感度100倍以上、ノイズ10分の1以下


東京工業大学の益一哉学長らとNTTアドバンステクノロジは複数の金属層で形成される積層メタル構造を用い、超低雑音・超高感度特性を有するMEMS(用語)加速度センサーの開発に成功した。従来のMEMS技術では困難だった1マイクロ(μ)Gレベル(G=9.8 m/s2、 重力加速度)の高分解能の検知を実現した。

 超小型加速度センサーの高分解能化・汎用化における革新的な技術であり、医療・ヘルスケア、インフラ診断、移動体制御、ロボット応用など様々な動き検知用途において新しいデバイス・システム開発につながると期待される。




 加速度センサーはスマートフォンなどの民生市場や社会インフラ全般のモニタリング用途の拡大に伴い、今後も大幅な需要増加が見込まれる。これらの小型・量産可能な加速度センサーでは、製造プロセスが確立したシリコンMEMS技術が広く普及している。


 しかし、加速度センサーの機械構造に由来する雑音は可動電極(錘)の質量に反比例するため、サイズ小型化と低雑音化にはトレードオフが生じた。さらに感度はおおよそサイズに比例するため、サイズ小型化と高感度化にもトレードオフが生じる。加速度センサーの高分解能化には低ノイズ・高感度性能が必要なため、従来の小型シリコンMEMS加速度センサーでは1 μGレベルの検出が困難であった。




 同研究グループはこれまでに金材料を用いてMEMS加速度センサーの錘(おもり)を10分の1以下に小型化する手法を提案。この実績をもとに今回はMEMS構造を複数の金の層を重ねて形成することで面積あたりの錘質量を増やし、従来の同サイズセンサーに比べて感度を100倍以上に向上、ノイズを10分の1以下に低減することに成功した。




 研究成果は国際学術論文誌「Sensors and Materials(センサーとマテリアル)」に掲載され、2019年7月23日にオンライン公開される。




■ 研究成果


 東工大とNTTアドバンステクノロジの研究グループはこれまで、金材料を用いてMEMS加速度センサーの錘を10分の1以下に小型化する手法を提案している。今回はこの技術をさらに発展させて、複数の金属層から形成される積層メタル構造を錘やばねに用いることで、超低雑音・超高感度特性を有するMEMS加速度センサーを開発した。




 具体的には図1に示すように、複数の金の層を重ねて錘を形成することで、面積あたりの錘質量を増やし、錘質量に反比例するノイズ(ブラウニアンノイズ)を低減した。さらに、その錘の反りを低減することで、4 mm角チップ面積を最大限利用した静電容量センサーを実現し、感度(加速度あたりの静電容量変化)を増大した。試作したデバイスの全体写真および拡大した電子顕微鏡写真を図2に示す。




 以上の結果、図3に示すように、従来の同サイズセンサーと比較して感度100倍以上、ノイズ10分の1以下を達成した。これにより、超小型センサーによる1 μGレベルの検出の見通しを得た。MEMS作成には半導体微細加工技術と電解金めっきを用いており、集積回路チップ上に今回開発したMEMS構造を形成することも可能である。したがって、超小型加速度センサーの高分解能化・汎用化技術として期待できる。

図1:デバイス断面構造

図2:試作デバイス写真

図3:ノイズと感度の性能比較

 超小型・高分解能の加速度センサーを実現することは、多種多様な動き検知用途でブレークスルーとなり得る。人体行動検知による医療・ヘルスケア技術、振動検知によるインフラ診断、ロボットの超精密制御・超軽量化、移動体制御、GPSが利用できない場所での自動航行制御システムの実現、超低加速度の振動モニタリングが必要な宇宙環境計測など様々な分野に応用できる。


 また近い将来、あらゆるモノに大量のセンサーを配置する時代の到来が予想されており、その際に動作検知の最も基本となる加速度センサーの超小型化と高分解能化を実現する本技術は極めて有効であるといえる。

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