今、ドイツ勢のプレミアムブランドに直列6気筒復活の兆しがある。かたやメルセデスはEクラスとCLSに新開発M256型3.0ℓ直6ターボを搭載し、こなた頑なに直6ターボをラインナップし続けたBMW5シリーズ。なぜ、彼らは直列6気筒にこだわり続けるのか?

REPORT◎高平高輝(Koki Takahira) PHOTO◎田村 弥(Wataru Tamura)

直列6気筒の頂上決戦?

 増殖著しいメルセデスAMGの新シリーズは、V6の「43」とV8の「63」の間の「53」として登場した。最大の特徴は、久しぶりに復活した直列6気筒エンジンを搭載していること。しかもこの新型M256型直6ターボは、48V電源で駆動されるISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を備えたいわばマイルドハイブリッドユニットで(メルセデスは単にISG付きと称しているが)、その上電動スーパーチャージャーによって、ターボチャージャーが苦手な低回転域を補うという、いわば全部載せの最新パワートレインである。



 M256型と称する新型直6ターボは、メルセデスにとってほぼ20年ぶりの直6エンジン、振り返ればW124型Eクラス等に積まれていたM104型直6以来のストレートシックスである。なぜ今になって直6が復活したかについては様々な理由があるが、何よりも効率の追求が挙げられる。V6ならば各バンク毎に必要なターボや触媒などが直6では少なくて済むというメリットもあるし、ガソリン4気筒(M264)だけでなく、新世代のディーゼル(OM654&OM656)とも構造を共有するモジュラーユニットという利点もあるうえに、この6気筒は今後さらに厳しくなるエミッション規制に対応するためにも必要な新型である。

新開発3.0ℓ直6ターボの「M256」エンジン。大型のターボを組み合わせることで最高出力435㎰、最大トルク520Nmを発生する。AMGがチューニングを施したAIR BODY CONTROLスポーツサスペンションを標準装備。

Mを除く現行5シリーズの頂点に君臨する540i Mスポーツ。搭載されるエンジンは環境性能と高出力(340㎰/450Nm)を両立させた3.0ℓ直6ツインパワーターボエンジンを搭載。タイヤはピレリP-ZEROを履く。

 EUでは2021年にはCO2の平均排出量が95g/㎞に引き下げられ、未達成の場合は超えた分に応じてペナルティを支払わなければならない。PHVやEVはもちろんだが、現実に販売台数の多いモデルの排出量を改善すべく、できることはすべて実行しなければとても届く数値ではない。電動化されたM256型直6ターボは、メルセデスの決意が形になったものなのである。

 

 エンジンとトランスミッションの連結部には48V電源で駆動されるISGを内蔵しているのが特徴で、これによって減速エネルギーを回収するほか、発進時などでアシストする。またウォーターポンプ、エアコンコンプレッサーなども48Vによる電動式で、必要な場合だけ効率的に作動するアダプティプ型だ。ターボが苦手とする低回転域は電動スーパーチャージャーが担当、さらに発進加速時などはモーターも加わり、排気圧が上がってからの過給はターボが担うという贅沢エンジンだ。

 S450より大型のターボチャージャーを採用したというAMG 53シリーズ用は435㎰/520Nmとエンジン単体でも大幅にパワーアップしている。大径ターボを使うとターボラグが気になるところだが、それを補うのが電動スーパーチャージャーと16kWと250Nmを生み出すモーターである。53シリーズは「AMGスピードシフトTCT」なるトランスミッションが積まれている。こちらは9Gトロニックをベースに、より素早いシフトを可能にしたという専用品らしいが、TCT(トルク・クラッチ・トランスミッションの略)と言いながらクラッチはなくトルクコンバーター式である。

 

 もっとも、穏やかに加速する際などは、カツンカツンとまるでツインクラッチ式のようなダイレクトなショックを伝えてくる。S450の直6は徹頭徹尾滑らかスムーズに回り、シフトも洗練されていかにも6気筒の美点を強調したパワートレインだが、E53用はAMGだからなのか、もっと精悍なキャラクターを打ち出しているのが特徴だ。回転フィーリングは6気筒らしく滑らかだが、音はやんちゃな武闘派という、ちょっと不思議なユニットである。

 

 もちろん、演出だけでなく大パワーと駆動力可変式の4マティック+を活かした発進加速は実際にも素晴らしく、0→100㎞/hは4.5秒という。ちなみにライバルとして引っ張り出したBMW540i xドライブ(以下540i)は4.8秒。ご存知かと思うが念のために付け加えると、4秒台は立派な高性能スポーツカーの数字で、4秒を切ればもうスーパースポーツの世界だ。

どんな場面でも痛痒を感じない

 BMWも近頃はダウンサイジングユニットが主力になっているような雰囲気があるが、やはり看板は守り通してきた直6である。540iのエンジンは、BMWの最新の看板機種たるB58B30A型直6ターボ。1.5ℓ3気筒から2.0ℓ4気筒、そしてこの6気筒までボア・ストロークをはじめ多くの共通構造を持つモジュラーユニットである。

 

 直噴バルブトロニック、ダブルVANOS、さらにはシリンダー壁のツインワイヤー・アークスプレー・コーティングなど最新メニューを盛り込み、340㎰/450Nmを生み出す6気筒ターボで、変速機はよりスポーティな設定の8速ATである。低速での微妙なコントロール性と滑らかさ、全開時のシャープでパワフルな吹け上がりを併せ持ち、どんな場面でも痛痒を感じない見事なエンジンであり、E53と比べるとなおさら洗練度が際立っていた。

 というのも、長く走っていると段々疲れる攻撃的なサウンドもさることながら、E53のほうはたとえコンフォートモードでも時にびっくりするようなガツンという突き上げを感じるほど足まわりが硬く、締め上げられてはいるもののストローク感がある540iとはまったく性格が異なっていた。ハンドリングも同様、ピーキーすぎると思うほどシャープに向きを変えるE53に対して540iはリニアなターンインが大人の落ち着きを感じさせた。M256型直6は今後さらなる展開が期待されるが、今のところ車全体としてはE53はやや演出過剰気味、洗練度ではBMWが明らかに上回っている。

 

※本記事は『GENROQ』2018年12月号の記事を再編集・再構成したものです。

Mercedes AMG E53

最新AMGモデルに採用される「AMGパフォーマンスステアリングホイール」を装備。ステアリングから手を離さずに車両の設定を行えるタッチコントロールボタンを備える。シートは上質なナッパレザーを採用。

メルセデスAMG E53 S 4マティック+

■ボディスペック

全長(㎜):4950

全幅(㎜):1850

全高(㎜):1450

ホイールベース(㎜):2940

車両重量(㎏):1980

■パワートレイン

エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ

総排気量(㏄):2996

最高出力:320kW(435㎰)/6100rpm

最大トルク:520Nm(53.0㎏m)/1800~5800rpm

■トランスミッション

タイプ:9速AT

■シャシー

駆動方式:AWD

サスペンション フロント:4リンク

サスペンション リヤ:マルチリンク

■ブレーキ

フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク

■タイヤ&ホイール

フロント:245/35R20

リヤ:275/30R20

■環境性能

燃料消費率(㎞/ℓ:JC08モード):10.0

■車両本体価格(万円):1202
BMW 540i

10.2インチの高精細カラーディスプレイを採用するおなじみのインパネデザイン。Mスポーツのみナッパレザーを採用した専用のステアリングを装備。試乗車はオプション装備のメリノレザーを採用していた。

BMW 540i xドライブ Mスポーツ

■ボディスペック

全長(㎜):4945

全幅(㎜):1870

全高(㎜):1480

ホイールベース(㎜):2975

車両重量(㎏):1810

■パワートレイン

エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ

総排気量(㏄):2997

最高出力:250kW(340㎰)/5500rpm

最大トルク:450Nm(45.9㎏m)/1380~5200rpm

■トランスミッション

タイプ:8速AT

■シャシー

駆動方式:AWD

サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン

サスペンション リヤ:マルチリンク

■ブレーキ

フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク

■タイヤ&ホイール

フロント:245/40R19

リヤ:275/35R19

■環境性能

燃料消費率(㎞/ℓ:JC08モード):12.5

■車両本体価格(万円):1075

情報提供元:MotorFan
記事名:「 直6ハイパフォーマンスサルーン対決! メルセデスAMG E53対BMW 540i