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VW:「 I.D. Rパイクスピーク」の成功のカギとなった技術


 パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムはさまざまな面で独特な大会になっている。このレースが他のレースと異なる点の一つが本番コースを走れる機会の圧倒的な少なさだ。フォルクスワーゲン・モータースポーツがパイクスピークで驚異的な新記録を樹立した同社初のEVマシン「I.D. Rパイクスピーク」の開発においてはサーキットを走るF1チームみたいに数百周も走ることはできなかった。ドライバーのロマン・デュマがゴールの4,302m地点にレコードタイムで通過したとき、彼は一度もコース全体を最初から最後まで通しで練習走行することができていなかった。




 フォルクスワーゲン・モータースポーツの計算/シミュレーション部門のトップBenjamin Ahrenholz氏は「I.D. Rパイクスピークの開発の初期段階ではコンピュータシミュレーションに大きく頼った。シャシーやモノコックからリアサブフレームやリアウイングまで、厳しい構造荷重や衝撃に曝されるコンポーネントの強度計算などではシミュレーションプログラムを駆使した」と言う。




 CAE (Computer Aided Engineering : コンピュータ支援設計) を使う理由はただ一つ: マシンに搭載するコンポーネントはレース中の過酷な環境に耐えなければならないと同時に最軽量でなければならない。また、同様にFEM (有限要素法)でパーツ一つ一つを評価した。全体としてコンピュータはマシンの完成度向上につながった。「CAE技術を駆使することでI.D. Rパイクスピークのどのコンポーネントを強化すべきか、どこをより軽量化できるか、またどこの構造を変更/改良すべきかを知ることができた」とAhrenholz氏は説明する。より洗練されたデザインのためにトポロジー最適化を取り入れた部品もあるとのことだ。




 Ahrenholz氏の開発チームの大きな支えとなったのはコースのコンピュータモデルがほとんど既にあったことだ。フォルクスワーゲン・モータースポーツのエンジニアにとって大きな難関となったのは特にコースの最終セクションだった。「路面が一定じゃなく、スタートセクションにかかる一番大きな瞬間荷重以上の衝撃がシャシーにかかっていた」と同氏は振り返る。「マシンにどのような、またどれぐらいの荷重がかかるのかが予想がつかなかった。だからこそ大きめの安全マージンをとった」




 CAE技術は個々のコンポーネントを直接触れなくても画面上で限界まで持っていくことが可能だけでなく、再計算の手間や時間も大幅に短縮した。

コンピュータで何百回と繰り返した空力テスト

 I.D. Rパイクスピークのエアロデバイスに欠かせなかった技術はCFD (数値流体力学) だった。専用に作られたプログラムはマシンのごくわずかな変更が車体やウイングの抵抗係数やダウンスラスト、冷却流をどのように影響するのかを測った。「風洞内の1:2模型で何百種類にも及ぶテストを行った」とAhrenholz氏は言う。




 フォルクスワーゲン・モータースポーツの計算/シミュレーション部門のメンバーにとってマシンが始めてコロラドのサーキットのピットを出た時の喜びは大きかっただろう。「レーシングカーが改良されるときは必ず一抹の不安が残るものだ」と彼は言った。

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