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トヨタの豊田章男社長が自工会会長に就任、「現場に一番近い自工会会長でありたい」


 日本自動車工業会は5月17日、パレスホテル東京(東京都千代田区)で、新たに18代会長に就任した豊田章男氏(トヨタ自動車社長)の定例会長会見を開催した。また、前会長の西川廣人氏(日産自動車社長)は副会長となった。豊田社長が自工会会長に就任したのは2012年5月~2014年5月に続き2度目。

 豊田新会長は就任挨拶で、日本の自動車産業の特徴として、顧客の品質に対する要求が厳しいこと、裾野が広い産業で多くの現場があることを掲げ、前者については「日本のお客様がクルマ・バイクから離れるということは、日本企業である我々が競争力を失うということそのもの」と、国内市場規模の縮小に強い危機感を示した。




 後者については、「国内の雇用は540万人、全産業の約1割。輸出金額は16兆円、製造業の約2割。研究開発費・設備投資額は合計6兆円、製造業の2割を占める」と、その重要度の高さを数字で示しながら、「自動車産業はお客様と現場に近いからこそ、自動車工業会の会長は現役の社長が就任することが多かったのだと思う。私もトヨタ自動車の社長を務めながら、日本のために少しでもお役に立ちたいという思いで、今回会長職を全うしたい」と、その意気込みを述べた。




 また、国内のマーケットの活性化に向けた施策として、「お客様にとってクルマ・バイクが購入しやすく保有しやすい環境を作ること」、「現場力の再徹底を通じてものづくりの信頼回復に努めること」を掲げ、前者は積年の課題である自動車諸税の簡素化・軽減、後者は現場での人づくりの継承を具体策として挙げている。




 そして、電動化や自動化など100年に一度と言われるモビリティ社会の大変革に対し、「次の100年もクルマ・バイクはモビリティの主役でいられるのか。ライバルも、競争のルールも変わってきており、まさに未知の世界での、生きるか死ぬかの戦いが始まっているのだと思う」とコメント。






「こうした変化の厳しい時代だからこそ、常に原点に立ち戻り、お客様視点と現場に寄り添う視点を持って、自工会加盟14社、オールジャパンでこの難局を乗り越えたいと思う。私自身も私らしく、現場に一番近い自工会会長でありたいと思っている」と決意表明している。




 豊田新会長の就任挨拶の全文は下記の通り。

 6年ほど前、当時会長だった志賀俊之さんからたすきを受け、自動車工業会会長を務めさせていただいた。その後池史彦さん、西川廣人さんと、業界の発展に向けて共に悩み、共に苦労を重ねてきた。そして本日の理事会において、日本自動車工業会の18代目の会長のたすきを受け取った。先輩の皆様方に感謝するとともに、100年に一度と言われる大変革の時代、身の引き締まる思いがする。




 日本の自動車産業には二つの特徴がある。一つ目は、日本には品質に厳しいお客様がたくさんいらっしゃるということ。自動車はBtoCの産業であり、日本メーカーの品質・技術力は、日本のお客様から教えていただいたものに他ならない。日本のお客様がクルマ・バイクから離れるということは、日本企業である我々が競争力を失うということそのものなのだと思う。お客様にとって一番良いやり方は何かを常に考えながら進んでいくことが必要だと考えている。




 二つ目は、自動車は裾野が広い産業で、たくさんの現場があるということ。二輪車や商用車を含め、自動車産業には素材や部品、物流など、多くの産業が集積している。改めて数値で言うと、国内の雇用は540万人、全産業の約1割。輸出金額は16兆円、製造業の約2割。研究開発費・設備投資額は合計6兆円、製造業の2割を占める。




 歴史を振り返ると、1967年、今から50年ほど前、日産自動車の川又克二社長が初代会長を務めたが、自動車産業はお客様と現場に近いからこそ、自動車工業会の会長は現役の社長が就任することが多かったのだと思う。私もトヨタ自動車の社長を務めながら、日本のために少しでもお役に立ちたいという思いで、今回会長職を全うしたい。




 世の中の声に耳を傾けると、自動車産業は今後は安泰とは言えないだろうという声が聞こえる。自動車産業のみならずいくつかの産業で品質管理をめぐる不正問題が発覚し、世界有数の技術力を誇る“ものづくり大国日本”の根底が崩れかけているのかもしれない。ものづくり不信だけではなく、いたるところで世の中の不信が叫ばれている。




 また、自動車産業を取り巻く環境は、電動化、自動化、コネクテッド、第四次産業革命と呼ばれるIoTやAIなどの技術進展により、異業種も巻き込んだ100年に一度の変革期を迎えている。さらに日本では近い将来、環境や渋滞、事故などの問題が都市化に伴い一層深刻化する恐れがある。世界経済のけん引役の不在、保護主義の進展など、為替や輸出に関する不透明さも増している。




 モビリティ社会が大きく変わっていく中で、自動車産業は存在感を示せるか、次の100年もクルマ・バイクはモビリティの主役でいられるのか。ライバルも、競争のルールも変わってきており、まさに未知の世界での、生きるか死ぬかの戦いが始まっているのだと思う。




 こうした変化の厳しい時代だからこそ、常に原点に立ち戻り、お客様視点と現場に寄り添う視点を持って、自工会加盟14社、オールジャパンでこの難局を乗り越えたいと思う。私自身も私らしく、現場に一番近い自工会会長でありたいと思っている。




 日本自動車工業会は、日本で生まれ、日本で育てていただいた。日本のお客様にこれからもクルマ・バイクを愛し続けていただくことが、国内の生産台数を支えることにつながる。一定の国内生産台数があるからこそ、我々は日本で様々な先進的なものづくりの挑戦を続けることができる。




 国内のマーケットの活性化に向けて、日本の特徴を念頭にこだわっていきたいことが二つある。一つ目は、お客様にとってクルマ・バイクが購入しやすく保有しやすい環境を作ること。




 そのためには我々メーカーが魅力ある商品作りに率先して取り組むことはもちろん、税金、保険代、駐車場代、ガソリン代など、クルマ・バイクを保有するうえでは多くの費用がかかる。シェアリングやカーリース、レンタカーなど保有の形態、乗り方の選択肢も増えている。




 お客様にとって何が最適なのか、これまでの常識にとらわれず、一つひとつチャレンジを重ねていくことが、お客様とクルマ・バイクとの接点を増やすことにつながる。その結果として代替のタイミングを早めることにつながる。




日本には四輪だけで8000万台近い保有があり、この特徴を活かせればマーケットの活性化はまだまだ可能だと考えている。本年は自動車税制改正の論議も大きな山場を迎える。複雑、過重な自動車関係諸税に終止符を打ち、制度の簡素化、お客様の負担軽減に向けて取り組んでいきたい。




 もう一つは、現場力の再徹底を通じてものづくりの信頼回復に努めること。生産現場でのすり合わせやカイゼン、匠の技、現場が問題や課題を発見し、部門を超えた連携を惜しまず、ものづくりのプロセスの中でイノベーションを起こしていく。現場での実践を通じた芸の積み重ねこそ、まさに日本の強み。




 自動運転やAIなど、新しい分野の技術を実用化に落とし込むこれからのステージにおいては、この日本の現場力という強みが最も活きてくると考えている。新しい分野での取り組みでもあるがゆえに課題も出てくると思うが、何かあれば決して焦らず一度立ち止まる、そして現地現物でしっかりと真因を追究していくことが、日本ブランドの信頼回復につながることと考えている。




 また今後は、海外からの労働者も増え、職場の多様化も進むと思う。だからこそ現場力、現場での人づくりという日本の強みを先輩方から継承し、大事に育みながら、次の世代に伝えていくことが重要と感じている。




 日本自動車工業会のメンバー1社1社がそれぞれの会社のらしさ、ブランドとらしさとは何かを突き詰め、磨きをかけていければ、日本らしさという魅力の向上、ひいては日本全体の競争力の底上げになると信じている。




 最後になるが、2年後の2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催される。その前年の2019年の東京モーターショー、自動車業界として変革の真価を問う重要なマイルストーンであると考えている。




 具体的な検討はこれからだが、来年の東京モーターショーでは、未来のモビリティ社会の一端を見せ、真に世界一のテクノロジーショーとなり、そして2020年、さらにはその先に続く先進モビリティ社会・日本への期待感を膨らませていく場にしていきたいと考えている。




 日本自動車工業会は、日本をふるさとにする企業の集まり。日本のお客様のため、一緒に働く従業員、その家族のため、もう一度日本のものづくりを背負っているという責任の重さを胸にして、日本経済の持続的安定に貢献できるよう、自動車工業会が一丸となって全力と尽くしていきたいと思う。
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