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素性の良さはすぐにわかる。スカイアクティブX+スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーのプロトタイプ


マツダの次世代エンジン技術「スカイアクティブX」と次世代ボディ&シャシー技術「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー」を載せたプロトタイプの試乗を美祢テストコースで行なった。乗ってどうだったか?

マツダが美祢テストコースで報道陣に公開、試乗が許されたスカイアクティブXエンジンについては、下記の記事で紹介した。

マツダ・SKYACTIV(スカイアクティブ)-Xエンジンは、内燃機関を次のステージに引き上げるマツダ・SKYACTIV-Xエンジンは、カプセル・エンジンだった!

ここでは、スカイアクティブ・ボディ&シャシーGEN.2について、試乗記を含めて書いてみたい。


スカイアクティブ・ボディ&シャシーGEN.2と言われていたものは、このMAZDA Japan Tech Forum 2017の直前に、「スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャー(SKYACTIV VEHICLE ARCHITECTURE)」と新しい名称になった。シャシーとボディを切り分けて考えられない、といって、プラットフォーム、という言葉より包括する範囲が広いから、ビークル・アーキテクチャーということになったのだろう。




ここで告白しておくが、ドイツのプレス試乗会の写真を見せてもらった際に、「次期型ボディ&シャシーの考え方を現行シャシーに一部載せたものにスカイアクティブXエンジンを積んだプロトタイプカー」だと思っていた。


それは大きな誤解で、まさに、「次期型ボディ&シャシーそのもの」にスカイアクティブXをとりあえず載せたプロトタイプカー、というのが正解だった。

現行は上下/左右方向に環状構造を配置しているが、フロントとリヤの左右をつなぐ環状構造を強化し、力を受ける部分を閉断面としたうえで、これを前後につなぐための骨格構造を追加した。

写真にあるBIW(ボディ・イン・ホワイト=ホワイトボディ)は、ほぼ次期型そのままだという。




現在のマツダ(第6商品群)のプラットフォームは、スカイアクティブ・ボディ(GEN.1)である。その前のプラットフォームは、フォード主導でマツダ、ボルボが参加したケルン・プロジェクトで作られたものだった。いまモデル末期となっているボルボV40の基本プラットフォームがそれだ。




今回、発表されたスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーには、新しい考えや知見が盛り込まれるが、工場の製造設備自体に大きな変更はなしで造れるようになっているという。


具体的には、スチールからアルミ、樹脂などへの材料置換はせず、工法も抵抗スポット溶接からレーザー溶接、構造接着剤の多用などの変更はしない。




プレゼンテーションを行なった松本浩幸氏(マツダ執行役員車両開発本部長)は、「鋼を使い切ることを考えました。剛性もNVHも鋼を使いこなして性能を出すことを考えました」と説明していた。

ボディ前半部。新しいボディも基本は鋼。1.5GPa級の超高張力鋼板も使う。

ルーフサイドレールとBピラーの接合部がそのままルーフのクロスメンバーへとつながる。従来はこの部分はスポット溶接だったが、新型ではスポット溶接で骨格を作ったうえでブレースをボルト締めしている。

ボディ真正面から見る。バンパービームは裏側に1.5GPa級の熱間成形材を貼り付ける。

真後ろから見る。リヤサスペンションのダンパートップからテールゲート開口部につながるブレースが追加され、ボディ後端のフロアは左右サスペンション間〜ダンパートップマウント〜テールゲートにつながる環状構造となった。

使用している鋼板は、


・引っ張り強度1.5GPa級の熱間成形材:6%


・1.3GPa級:5%


・1.2GPa級:17%


・980MPa級:8%


・780MPa級:9%


・590MPa級:9%


残りの46%が軟鋼だ。




今回のスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーの考え方は、「剛性の”節”(ふし=変曲点)のないボディを作る」ということだろう。路面反力は乗員まで伝わる伝達経路と伝達時間(時間軸)について人間中心の考え方で徹底的に分析した結果を反映しているという。




「左前輪に入った入力をそのまま素早く右後輪に伝わるようにする。その際に、途中に節がないようにする」というのがキーだ。




シャシーの作り方も従来はばね上のピークを抑えることを狙っていたが、スカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーは、ばね上に伝わる力を遅れなく滑らかにコントロールすることに主眼が置かれている。




リヤサスペンションは、リヤが現行のマルチリンクからTBA(トーションビームアクスル)に改められた。


これは、「コストダウンを狙ったわけでない」という。


「タイヤの位置決めや動きの連続性でTBAにはメリットがあります。この車両重量ならTBAの良さが活かせるからです」ということだった。




乗ってみてどうだったか? さて、試乗の時間である。


(次ページに続く)



車両の評価ができる能力があるわけではないので、あくまでも「普通のドライバーが気づく点」についてレポートする。




コースは、美祢テストコースに作られた試乗コースで、本コース、路面の粗い舗装路(といってもさほどひどくはない)などを組み合わせて設定していた。最高速度は120km/hだった。




最初に乗ったのは、現行アクセラスポーツ。SKYACTIV-G 2.0(2.0ℓ直4DOHCエンジン)搭載のMT車とAT車だ。


国内仕様ではSKYACTIV-G 2.0ℓ仕様は現在ラインアップされていない。マツダは、今回の比較試乗のために、世界各国からSKYACTIV-G2.0+Gベクタリングコントロールのクルマを調達したという。


ちなみに、私が試乗したAT車は、中東仕様だった。




試乗は、


現行AT→スカイアクティブXのプロトタイプAT→現行MT→スカイアクティブXのプロトタイプMTの順に行なった。また現行車には助手席に50kgの重りが載り、プロトタイプにはマツダのエンジニアが同乗した。




まず、現行AT。久しぶりに乗ったアクセラスポーツは、相変わらずいいクルマだった。エンジンも気持ちよく回る。155ps(114kW)/196Nmのスペックは必要十分。昨今のダウンサイジング過給エンジンのトルクに慣れている身からすると、ちょっと物足りなさは残る。

プロトタイプカーは、全車マッドブラックの左ハンドル仕様だった。

プロトタイプカーは思いの外静粛性に優れていた。本来ならガタピシいっても不思議ではないツギハギボディ(に見えた)なのに、室内はうるさく感じなかった。音の大きさだけでなく音の変化率を抑えているためで、人間は音の絶対値よりも変化率に敏感なのだという。

音や振動が想像と同じ時間で乗員に届けば不快には感じない。そこに時差があるとうるさく、不快に感じるのだ。

16カ所に減衰ボンドを使い、部位ごとに歪み特性に合わせた減衰構造を作っている。その場所の選定には開発初期から生産技術部門も巻き込んで作業性にも配慮したという。このあたりが最近のマツダの強みのひとつだ。

こらが「減衰節」。Bピラーとルーフサイドレールの接合部はインナーパネル側(左)に四角い三層構造の樹脂を接着している。一方向だけパネルと接着していない構造であり、ここで集中する歪みをこの高分子樹脂が熱に変えて放出する。

次に待望のプロトタイプだ。シートに座ってまず言われるのは、「シートの前端を持ち上げるレバーがあります。これを上げて、腿の裏側がしっかりシートと密着するようにしてください」ということだ。プロトタイプは、シートも新開発なのだ。このシート、非常によかった。一度ポジションを決めたら、もう動かなくていい。シートの調整も、そのまま市販車に採用されるそうだ(もちろん上級車種は電動になるのだろうが)。




エンジンはすでにかかっていた。(もしや、エンジン始動に問題があるのか?)と思って、隣に座っているエンジニア氏に、「一回切って、かけ直してもいいですか?」と訊くと、「じゃああとでやってみましょう」とあっさり認めてくれた。実際に後で始動を試してみたが、特に問題なし。拍子抜けだった。




走り始めてすぐに気づいたのは、静粛性の高さだ。明らかに現行アクセラスポーツより静か。高級な感じがする。




エンジンのカプセル化がいい影響を与えているのは間違いない。


試乗なので、やや意地悪な運転を試す。50km/hくらいでいったんアクセルを抜いて、再度アクセルをONすると、かすかにカリカリというエンジンの音が聞こえる。「音がしますね?」と訊くと、「そうですね。まだエンジンを載せただけで細かいセッティングをしてませんから。載せて問題なく走っているだけも僕らとしてすごいことだと思っていますよ」という返事だった。

いわゆる燃費の目玉が大きく深くなってので、トランスミッションのギヤ比をスポーツ側(ロー側)に振っても燃費の悪化が小さい。

エンジンのフィーリングは、NAエンジンでもなくターボエンジンでもなく、もちろんディーゼルでもない。レスポンスのいい過給エンジン、あるいはトルクがしたから盛り上がるNAエンジンという感じだろうか? さきほど、最近のダウンサイジング過給エンジンの話に触れたが、スカイアクティブXエンジン搭載車に乗ると、「ああ、ダウンサイジング過給エンジンってやっぱりターボラグがあるんだよな」と気づかされる。機械式スーパーチャージャーは過給しているわけではないが、とにかくアクセルを踏んだら踏んだだけトルクがすぐに出てくる気持ちの良さがスカイアクティブXにはあった。


機械式スーパーチャージャーにつきもののヒューンという作動音は気にならなかった。


プロトタイプカーに乗って、細かいところを言っても意味がないが、「とりあえずエンジンを載せてみました。シャシー関連のセッティングはまだほとんどしてません」という、素の状態だとすると、エンジンもシャシーもポテンシャルは大変高そうだと感じだ。




本コースを一度外れてダブルレーンチェンジを試すシーンがあったが、ステアリングを切って戻したときのクルマの収まりは、明らかにプロトタイプカーの方が安定していた。その後120km/hまで加速する場面でも、加速がいいのはスカイアクティブX搭載のプロトタイプの方だ。




同じSKYACTIVドライブ6ATを使っているはずだが……?「ギヤ比は違います」とのこと。プロトタイプの方がローギヤードになっているという。これもスカイアクティブXエンジンの「燃費の目玉の大きさ」の賜だろう。MT車も2速と3速のギヤ比を現行型とは変えてあるという。




現行のMT車の後、プロトタイプのMT車に乗る。プロトタイプカーは助手席側にiPadミニくらいの液晶モニターがついていて、瞬間瞬間の燃焼の様子がわかるようになっていた。サイズの違う長方形が現在の燃焼方式を表していて小さい方から「SI燃焼」「SPCCI燃焼」「最適なSPCCI燃焼」となっていた。「いまどの燃焼ですか?」と訊くと「じゃあ、A/B/Cでお伝えしますね。いまA、B、Cになりました。Bです。C、Bです……」と刻々と教えてくれる。が、燃焼方式の切り替えにショックや音の変化はまったくない。違いに気づくことはなかった。




試乗中に同乗してくれた若いエンジニアは、「今日の状態をですね、登山に例えて、いま何合目にいるか、と訊かれたらですね……」と話してくれた。


「はい、何合目ですか?」と訊くと


「ええ、いまようやく登山口に着いた、というところです。まだ上ってません。登山に備えてリュックの中身を点検してみた、というところですね。で、点検したら足りてないものがあった(笑い)って感じです。すべてがこれからです」


という。


「それにしては、現状でもかなりいい感じですね?」と言うと


「そうです。だからこれからが大変ですよ」と笑顔で答えてくれた。




このスカイアクティブXエンジンとスカイアクティブ・ビークル・アーキテクチャーを採用した最初のモデルが登場するのは2019年だ。あと2年。わずか2年。マツダの開発陣にはこれから多くのハードルが待ち受けているだろう。しかし、素性の良さは、普通のドライバー(私)が乗ってもわかる。マツダの次世代技術が載るクルマ(次期アクセラ?)の登場が、心から待ち遠しくなった。

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