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「きぼう」日本実験棟とは 国際宇宙ステーション(ISS)を地上から見よう!


「きぼう」日本実験棟のある国際宇宙ステーション(ISS)は、地上から見られるチャンスがあることをご存知でしょうか。宇宙空間を飛行する様子を目にできれば、壮大な宇宙を少し身近に感じられそうですね。

国際宇宙ステーション(ISS)は、今この瞬間も地球の周りを飛行しています。いくつかの条件をクリアすれば、地上からその姿を見ることが可能です。

この記事では、「きぼう」日本実験棟や国際宇宙ステーション(ISS)とはなにか、どのような条件を満たせば地上から観測できるのか、について解説します。


「きぼう」日本実験棟がある国際宇宙ステーション(ISS)とは

「きぼう」を知るためには、まず国際宇宙ステーション(ISS)について理解しておく必要があります。

国際宇宙ステーション(以下、ISS)とは、上空およそ400kmに浮かぶ巨大な宇宙実験施設のことです。アメリカ・日本・カナダ・欧州各国・ロシアの15ヶ国が協力して計画を進め、利用しています。

大きさは約108.5m×約72.8mでサッカーのフィールドと同程度、質量は約420トンです。2011年7⽉に完成し、2030年までの運用継続が決定しています。

ISSは、実験や研究を行う仕事場「実験モジュール」と、それらをつなぐ「結合モジュール(ノード)」、電力を作り出す「太陽電池パドル」、船外作業時に活躍する「ロボットアーム」などで成り立っています。この実験モジュールのひとつに「きぼう」があります。

現代においてISSは、宇宙空間で人類が活動する唯一の場所です。宇宙空間と人類をつなぐISSに、ロマンを感じる方も多いのではないでしょうか。

宇宙服を着なくても生活できるよう、モジュールの中は地球の大気とほぼ同じ状態に保たれています。地上に比べて重力の影響を受けにくい、宇宙ならではの特殊な環境(微小重力)を活かした科学実験・研究に取り組んだり、宇宙から地球の自然環境を見守ったりするなど、地球での暮らしや人類の発展に貢献するさまざまな活動が行われています。

宇宙ステーションと地球(3DCG)

宇宙ステーションと地球(3DCG)


日本で初めての有人施設「きぼう」日本実験棟について知ろう

ISSには、アメリカ・日本・欧州がそれぞれ開発した3つの実験モジュールと、2021年7月に結合したロシアの多目的実験モジュールがあります。「きぼう」とは、日本が開発を担当した実験モジュールのことです。3名の日本人宇宙飛行士が参加した3回のスペースシャトル・ミッションによって、ISSに取り付けられました。

宇宙飛行士が長期にわたって活動できる「きぼう」は、日本では初めての有人施設です。「船内実験室」、2つの実験スペース「船外実験プラットフォーム」、保管スペース「船内保管室」、実験や作業に使用する「ロボットアーム」という4つの主要装備で成り立っており、ISSでも最大の大きさを誇ります。

さまざまなミッションを実現するため、「きぼう」は地上にある筑波宇宙センターによって24時間365日体制で運用されています。

2023年12月20日時点で「きぼう」から放出された衛生数は、335機です。遠い宇宙空間で、精力的な活動が続けられてきたのですね。「きぼう」が担う具体的な役割については、後ほど詳しく紹介します。

筑波宇宙センター展示館にある「きぼう」日本実験棟(模型)

筑波宇宙センター展示館にある「きぼう」日本実験棟(模型)


「きぼう」のあるISSは地上から観測可能!見るための条件は?

「上空約400km」と聞くと、途方もなく遠いイメージがありますよね。しかし実は「きぼう」のあるISSは、いくつかの条件がそろえば地上から肉眼で確認することが可能です。

ISSが日本上空を通過する際は、西から東に移動します。主に南西から北東、または北西から南東へ、飛行機よりも少し早いスピードで空を流れていくように見えます。

ISSを地上から見るための条件は、主に次の3つです。
①空が晴れているとき
②ISSが観測地点の上空付近を通過するとき
③地上は夜・ISSは昼のとき

それぞれの条件について、詳しく見ていきましょう。

①空が晴れているとき
ISSは、雲よりも高い宇宙空間を飛行しています。そのため、曇っていると地上から見ることはできません。ISSを観測するときは、天気予報や雲の様子(気象衛星)をチェックしましょう。

②ISSが観測地点の上空付近を通過するとき
ISSは秒速7.7km、1周約90分というスピードで地球を周回しています。地球は自転によって回転しているため、同じ軌道で飛行を続けるISSの通過コースは変化していきます。そのため、観測地の上空付近をISSが通過するタイミングにあわせて空を観察する必要があります。

KIBO宇宙放送局が運営するISS可視情報サービス「#きぼうを見よう」では、NASAが定期的に更新し公開しているISS軌道情報をもとに、ISSの目視予想情報を公開しています。観測に適したタイミングを確認してみましょう。

③地上は夜・ISSは昼のとき
ISSを見るためには、「観測地の地上が暗く、ISSに太陽の光が当たっている」という条件も満たす必要があります。

地上から見たISSは、光り輝いています。しかし、ISSが自ら発光しているわけではありません。月や金星などと同様、太陽の光を反射することによって明るく輝いて見えるのです。

そのため、ISSに太陽の光が当たっている時間でなければ、地上からは観測できません。一方、明るい昼間に星が見えないことと同じように、地上からISSの輝きを確認できるのは辺りが暗い時間帯のみです。

条件としては相反しているように見えますが、日の出前や日の入り後の約2時間(季節による)のあいだに観測地の上空をISSが通過した場合、その輝きを目にできます。400km上空を飛行するISSは、地上の日が落ちてからしばらくの間は太陽に照らされているためです。

天気・通過コース・通過時間の条件をクリアしなければ見られないとなると、ISSの観測を難しく感じてしまうかもしれません。ただし、ISSは1周約90分のスピードで常に地球を周回しているので、観測チャンスは何度も訪れます。「夜空に輝くISSを見てみたい」という方は、ぜひチャレンジしてみてください。


暮らしや社会に貢献!「きぼう」に期待される5つの役割を紹介

JAXAが掲げる「きぼう」の主な役割は、次の5つです。

①健康長寿社会を支える
②豊かで安心・安全な暮らしを実現する
③ものづくりで企業の競争力を高める
④未踏の宇宙を目指す
⑤新たな知的領域を切り拓く

それぞれの役割を紹介します。

①健康長寿社会を支える
重さの負荷がかからない宇宙では、骨や筋肉が弱くなります。健康な宇宙飛行士でも、骨は骨粗しょう症の患者の約10倍、筋肉は寝たきりの人の約2倍のスピードで急速に弱ってしまうそうです。

こうした現象に着目した研究は、骨や筋肉など運動器が衰えるロコモティブ症候群の予防や改善への貢献が期待されています。

対流や沈降が発生しない微小重力環境を活かし高品質なタンパク質結晶をつくれることも、医薬品の開発に役立っています。

②豊かで安心・安全な暮らしを実現する
まず、宇宙から地球を観測することは、環境変動の予測や広域災害の監視に役立ちます。

また重力の影響を受けにくい宇宙で植物を育てる実験からは、台風でも倒れにくいイネの誕生などが期待されています。

さらに、「きぼう」のロボットアームにも用いられている「遠隔操作で細かい作業ができる技術」は、地上での医療や介護にも応用可能です。

③ものづくりで企業の競争力を高める
「きぼう」での実験データは、日本のものづくりにおける競争力の向上にも役立ちます。

宇宙では、水と油のように比重の違う物でも均一に分散します。また、比重差による対流も発生しません。「きぼう」はこの環境を利用し、次世代の高速・低消費電力デバイス用として期待される半導体材料をつくることに、世界で初めて成功しています。

④未踏の宇宙を目指す
消費電力が少なくフィルター交換も不要な小型の水再生システム、宇宙飛行士の遠隔医療システム、重力がある天体でも動きやすい軽量な次世代宇宙服など、「きぼう」では宇宙でのさらなる長期滞在に向けた技術開発が進められています。

⑤新たな知的領域を切り拓く
科学の真理を探究し、宇宙でしかできない新たな領域を切り拓くことも「きぼう」の役割のひとつといえます。

たとえば、X線による全天の監視や氷の結晶が成長するメカニズムの解明などは、宇宙でしか研究できません。地表から超高層までの広範囲な大気の観測は、新たな学問分野の構築にもつながります。


観測条件をチェックして「きぼう」のあるISSを地上から見てみよう

「きぼう」は、ISSの一部として日本が開発した実験施設です。人々の暮らしや社会を支える、さまざまな役割を担っています。

「きぼう」のあるISSは上空約400kmを飛行しており、いくつかの条件がそろえば地上から見ることが可能です。ISSの目視予想情報をチェックして、「きぼう」のあるISSを観察してみてはいかがでしょうか。

観測にあたっては、天気も影響します。天気予報や雲の様子(気象衛星)も忘れずに確認しておきましょう。

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