6月も下旬になると北海道ではあらゆるところで、赤紫色や薄紫色、白色に咲く花畑が多く見られます。とても広い敷地に整然と植えられているこの花は、さて何でしょうか。正解は、ジャガイモの花です。この時期の北海道ではラベンダーが花開き、富良野などでは一面、薄紫色に染まった花畑を見に、多くの観光客が訪れますが、同じ時期、広~い敷地に整然と植えられたジャガイモの花畑も見ものです。
ジャガイモの花はどれも同じではなく、品種によって色が違います。北海道旅行の途中で出会ったジャガイモの花を見て、これはどんな品種のジャガイモなのか推理するのも楽しいかもしれませんね。
男爵イモ/花は淡い赤紫色、花びらの先が白い。1本の茎に多数の花
ジャガイモといって、まず思い浮かぶのは、男爵イモではないでしょうか。茹でるとホクホクになる男爵イモは、定番のじゃがバターをはじめ、ポテトサラダ、コロッケなどに向いている品種です。
男爵イモの花は淡い赤紫色で、花びらの先が白くなっています。花の中心の黄色い部分は雄しべで、1本の茎に多数の花をつけます。
ジャガイモの花というのは、あまり注目されませんが、花が咲くということは収穫時期のサインになります。花が枯れて、周りの葉の7~8割が黄色くなって枯れてきたころが、収穫の目安になるのです。
台所で放っておいたジャガイモから芽が出てしまった、ということがよくあります。皮の表面から頭を出した小さな芽は、最初は紫色ですが、そこから葉が伸びていくと濃い緑色になり、やがて花が咲きます。芽が出てしまったジャガイモはそのまま庭やプランターに植えると、ぐんぐん育ち、わりと簡単に実をつけるので、お試しあれ。
メークイン/花は濃いめの紫色、花びらに絞り染めのような白い斑点
コロッケなどに向いているホクホクの男爵イモとは対照的に、煮くずれしにくいメークインは、皮がはがれやすく、カレーやシチュー、おでんなどの煮込み料理に向いています。特に関西では煮物として利用されることが多く、人気の品種です。
メークインの花は濃いめの紫色をしています。花びらをよく見ると、絞り染めのような白い斑点が散在し、先端がやや白くなっています。
実から出てくる芽は男爵イモと同じように紫色をしていますが、伸びると茎は緑色になり、赤紫色の斑点が現れます。茎の長さが男爵イモよりも長いので、畑で両者が並んでいたら、メークインのほうがちょっと目立つかもしれませんね。
キタアカリ/花は濃いめの赤紫色。男爵イモの系統でホクホクの食感
キタアカリは男爵イモの系統で、実が黄色くビタミンCが豊富、粉質でホクホクとした食感です。とても煮くずれしやすいので煮込み料理には向いていませんが、ポテトサラダやコロッケに利用され、口あたりがよく味もよいので、ビシソワーズなどのポタージュ系にも適しています。
花の色は、男爵イモよりも濃い赤紫色で、花びらの先が男爵イモのように白くなっています。芽には赤紫色をした斑点があり、大きくなる前の葉は紫色を帯びています。
家で保存しておいたジャガイモから芽が出てしまったとき、品種がよくわからないけど、とりあえず庭やプランターに植えてみて、伸びてきた芽や葉、花の色によってその品種がわかる、という楽しみ方もおもしろいかもしれませんね。
マチルダ/花はやや大きめの白。小粒で形がいい品種。ホールポテトに
花が白いジャガイモは、マチルダをはじめ、トヨシロ、とうや、きたかむいなど、多くの品種がありますが、中でもマチルダは花がやや大きめです。茎は緑色で、一部にやや紫色を帯びています。
マチルダは煮くずれしにくいので煮物にも適していますが、油で揚げると黒く色が変わってしまいがちなので、揚げ物には向いていません。形はキウイフルーツのような卵形で、芽のくぼみが浅く形が整っているので、冷凍のホールポテトなどの加工品などに適しています。
かつては、サラダやホールポテトには味が劣る小ぶりの規格外のジャガイモが使われていましたが、1985(昭和60)年にスウェーデンからマチルダが導入されると、小粒でもおいしいこの品種がサラダなどに使われるようになりました。元々小さめの品種なので、小粒は冷凍ホールポテト、中粒は冷凍ベークドポテトなどに加工されています。
6月も下旬になると北海道では、ジャガイモの花をはじめ、ラベンダー、ハマナスなど、北海道らしい花が咲き、北の大地の初夏を彩ります。この時期、観光で北海道を訪れる方は、広い大地に咲く花々を満喫してみてはいかがですか。
参考
北海道 農政部生産振興局:じゃがいもの主要品種紹介
丘のまちびえいDMO:Be my BIEI「ジャガイモの花畑」
日本いも類研究会「じゃがいも品種詳説」
北海道ファンマガジン:【保存版】北海道花暦(花カレンダー)-いつどんな花が咲くの?