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「葉」の持つポテンシャルがすごい!最新研究から判明した葉がもたらす多大な恩恵とは?


世界の各地で異常な高温や大量の降雨など、過激な気象現象が頻発しており、その原因は、人類の経済活動がもたらす排出ガスによるものとされています。しかし、排出ガスの抑制よりも、植物を増やすことが重要ではなかろうかという見解は、筆者コラム内でも何度か述べてきました。
このほど、その考えを裏付ける新たな植物のスーパーパワーが証明されました。それは、末端器官と思われがちな「葉」が持つ知られざるポテンシャルについてです。

植物には必ず備わる葉。光合成以外の未だ知られざる役割が判ってきました

植物には必ず備わる葉。光合成以外の未だ知られざる役割が判ってきました


葉は「ジレンマ器官」ではなかった?その理由とは…

私たちは理科/生物で、「葉とは陸生植物の地上部茎端に発生し、光合成と呼吸を行うために発達した扁平な器官」と説明されます。

筆者自身も以前当コラムで、「葉は光合成という植物の生命維持と成長に欠かせない反応を効率的に行うために発達したが、光合成のために大量の水を必要とするので、植物の血ともいえる水分を蒸散させてしまうジレンマのある器官で、このため太陽光が弱まって光合成の効率が落ちる冬期には、葉を落として休眠する植物も多い」と書きました(紅葉は美しい、でも落ち葉は嫌?ではもし落ち葉がなくなってしまったら?(tenki.jpサプリ 2021年10月31日) 。その際、針葉樹が冬でも葉をつけたままなのは、針葉樹の葉には広葉樹よりも水分の蒸散を防ぐ仕組みがあるので、冬も光合成を行う方が生存に有利になるため、と叙述しました。

ところが、新たにわかった研究結果では、実は葉には、それだけにとどまらない機能があることが判明し、それに基づけば葉を落とさない寒帯地域の樹木の生態も、より説得力を持って説明できるものとなったのです。

園芸が趣味の方にはよく知られたことですが、ランの鉢植えには定期的に葉に霧吹きで湿らせる葉水が推奨されています。着生植物のランは葉からの水分摂取も盛んに行い、生命維持に利用しています。植物の葉が大気中の水を吸収する機能があることは以前から知られていましたが、それはあくまで降雨時や結露などで葉表面に着いた水分を吸い込んで乾燥を防ぐなど、根から供給される水分の補助的役割しかないと考えられてきました。

しかし実際には、葉からの水分供給ははるかに大きいものだったのです。

光合成の模式図。新事実により見慣れた模式図が書き換えられるかも?

光合成の模式図。新事実により見慣れた模式図が書き換えられるかも?


光合成の模式図が変わるかも!? 葉は万能選手だった!

まず光合成とは何か、おさらいしましょう。一般的に言われる光合成とは、葉緑体を持つ生物(藻類・プランクトンを含む広義の植物、シアノバクテリア)が行う、酸素発生型の光合成を指します。
二酸化炭素の酸素・炭素、水の水素・酸素を組み替え、酸素の一部を分離して排出、残った成分の炭素・水素・酸素でブドウ糖(グルコースとも)を生み出す生産活動です。

化学反応式では、
6 CO2+6 H2O=6 O2+C6H12O6

で、 C6H12O6がグルコースですが、グルコースを構成している6個の酸素原子は、葉から取り入れた二酸化炭素由来の酸素ではなく、根から吸い上げた水分子の酸素によってつくられている、というのが定説でした。簡単に言うと、葉に満たされた水に、葉から吸収した二酸化炭素の炭素のみを結合させて有機物(炭水化物)を生み出し、残った酸素を排出しているということになります。

かつて地上に進出した陸生植物は、太陽光が水の分子に吸収され、また懸濁物質の浮遊でより光が届きにくい水圏よりも多くの太陽エネルギーを得ることができます。しかしその分、大気中の重力や乾燥などに耐えなければなりません。そこで地上の植物たちは、グルコースを強分子構造に作り変えた堅牢なセルロースを、細胞壁に使用する以外にも、茎を肥大化させることに使用しはじめました。「樹木」へと進化して、より高く、より太く、そしてより長く生きることを可能としたのです。

さて、セルロースがグルコースの生成物質である以上、従来の定説では葉由来の成分は炭素のみとなるはずです。ところが、国⽴研究開発法⼈森林研究・整備機構森林総合研究所による実験検証によって、このほど、意外な事実が明らかになりました。
葉から取り込まれる水分は想定よりもかなり多く、しかも葉から取り込んだ水の水素原子や酸素原子が、植物体の構造物(細胞壁や木質支持体)として使用されていたのです。

検証では、実験体として選定された杉の苗木に、供給する水を重水(自然状態で存在している水分子よりも質量数の大きい水分子を多く含む、人工的な特殊な水)に換え、葉から取り込む重水は酸素原子の同位体質量の大きい重水、細根から吸い上げさせる重水は水素原子の同位体質量の大きい重水と、タイプの違うふたつの重水を用い、植物体内での化学反応後の原子の行方をトレースできるように工夫しました。重酸素と重水素では分子のふるまいや吸収率に差異が出る可能性も考慮して、重水を入れ替えての検証も併せて行われました。
すると、細根を構成するセルロースの約80%は細根から吸い上げた水分由来の酸素と水素によるものでしたが、残りの20%は、葉から吸収された水由来のものだったのです。
幹を構成するセルロースの場合は、その割合が細根からのものと葉からのものがほぼ半々、さらには葉の細胞のセルロースでは、葉から吸収された水由来の元素が80%と大部分を占めていました。
つまり、植物の構造体のすべての部分に、葉から吸収された水が使われていたのです。圧倒されるほど太く高くそびえたつ大木でさえも、そのほぼ半分が、葉から吸収された水によって作り出されていたかもしれないのです。

もちろん、実際にはそこまで単純ではなく、同じスギでも苗木の時期と若木、壮年木、老木によってその割合が同一なのか変わるのか、変わるとしたらどのような変移が起きるのか、乾燥した草原に適応したイネ科の珪素の多い葉や、水圏の植物ではどうか、クチクラ層が薄く水を蒸散しやすいが吸収もしやすい落葉広葉樹との比較ではどうか、などの検証や比較が今後必要となるでしょう。しかし、植物の場合、年を経た大木の場合でも常に成長は末端付近の新しい若い枝葉で活発です。基本的には苗木での割合が踏襲されると考えていいかもしれません。

着生ランの葉が水を吸収する機能が高いことはわかっていました

着生ランの葉が水を吸収する機能が高いことはわかっていました


やはり葉とはアーキタイププラントだった?蘇るゲーテの形態論

現在の植物学では、維管束植物の元型的形態とは、デボン紀(4億1,600万年前~3億5,920万年前)に発生したその祖先的形態を持つリニア属(Ryinia)の形態から想起された、テロームと呼ばれるシンプルな二叉分枝の茎状形態で、これを原型にさまざまな形態がデザインされて分化・進化したものと考えられています。これをテローム説と言いますが、この元型的形態論の基礎となったのはゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe 1749~1832年)の形態学に基づく植物変態論でした。

ゲーテは、植物は全て葉から変態(メタモルフォーゼ)したものであると考え、この原型的な葉のイメージを原植物(Die Urpflanze archetypal plant) としました。葉は植物の分化した諸器官、根、茎、花弁、花蕊、果実、種子全ての元型であるというのです。それはつまり、葉には、分化した諸器官が発現させ、担っている機能(生殖や養分の摂取、油分や糖分など物質生成)のすべてを潜在的に含んでいる、ということです。葉と言えば、光合成と呼吸を主要に担うが、植物体全体にとって水分の蒸散を防ぎたい、凍結を防ぎたいなどの事情があるときに真っ先に切り離される末端器官である、という私たちが普通に抱いているイメージとはかけ離れていますね。

1800年に発表されたゲーテの植物論は、後の植物学への寄与はあったものの、その理論自体は知見の乏しいクラシカルな時代の産物とみなされがちでした。しかし、想像以上の植物の成長への葉の寄与・関与がわかってくると、俄然ゲーテの言う「葉が全ての植物の始まり」という説も説得力を復活させてきます。現代では、ともすれば葉は末端で再生の効く器官で、たとえば街路樹などを幹を残して葉を安易に切り落としてしまいがちです。しかし、日本、そしてアジアのような高温多湿な環境が多い地域での、大気中からの葉による水の取り込み量は特に大きいものとなり、環境への影響は無視できないものとなるはずです。ご存じのように、葉は種により形態は多様です。また植物の上部と下部でも大きく形が変わります。これまでは、光合成の効率のためと考えられることが多かったのですが、より空気中の水を吸収しやすくするための工夫という観点から葉のデザインも見ていくべきかもしれません。

そして、植物が種に関わらず葉から吸収した大気中の水を体内に大量に取り込み、炭素固定に膨大に利用としているということは、植物の炭素固定能力が根から吸い上げた土中の水分のみを使うとした場合よりもはるかに高機能に温室効果ガスを吸収固定しているということも意味するのではないでしょうか。

巨木の幹を支えるセルロースの生成にも、葉は大きく関与していました

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現在地球上の植物が生み出すセルロースの総量は、年間1兆tと見積もられています。何という膨大な量でしょうか。私たちがどれほど経済活動をしても、植物たちはそれを上回る生産活動で、炭素を固定化し浄化してくれているのです。

地球温暖化だけではなく、世界はこれから水資源不足になるとも懸念されています。
降雨による貴重な真水も、植物たちは葉を生い茂らせることで、せっせと取り込んで炭素固定に使い、酸素を供給してくれています。何と優れた自然界からのギフトでしょうか。


(参考・参照)
プレスリリース 植物細胞壁は葉から吸収された⽔でもできている -⼆種類の重⽔を⽤いた新⼿法により発⾒- 森林総合研究所
木材は葉面から吸収した水でできている?-木材バイオマスを構成する酸素・水素の起源としての葉面吸収水-
植物の世界 朝日新聞社
植物の起源と進化 E.J.H.コーナー 八坂書房

マツバラン。テローム説での原型的植物によく似た形態とされています

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