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お地蔵様とサンタと閻魔大王の意外な関係とは?12月24日「納めの地蔵」


12月24日といえば、日本国内はクリスマス・イブ一色。さらに今年は中央競馬最大のレース・有馬記念も重なって、浮かれた年末の空気をもりたてます。そんな浮かれた日に地味にやってくるのが「納めの地蔵」。縁日とは当該神仏にゆかりが深いとされる日のこと。道端や墓地、寺院でおなじみの地蔵菩薩=お地蔵様の縁日は毎月24日。12月の最後の縁日は「納めの地蔵」と言い、年始の「初地蔵」と並んで、通常の縁日以上ににぎわいます。


ザコっぽいけどホントは偉い!お地蔵様の正体とは

立派なお堂に収まって見上げられ拝観される仏像がある中、私たちが知る「お地蔵様」のほとんどは、道端や墓苑の隅に野ざらしで立ち尽くしている素朴で小さな石像として知られています。その姿も、小坊主のような剃髪と簡素で粗末な袈裟姿で刻まれていて、仏様の中でも階級の低い下っ端なのかな?と思われがちです。

仏の階級では悟りを開き涅槃に到達した如来が筆頭で、菩薩は如来に次ぐ地位にあたり、きわめて霊位の高い存在です。菩薩とは菩提薩埵(ボーディ・サットヴァ bodhisattva)の略で、端的に言えば悟りに到達如来へと解脱する直前まで修行を積んだ者、次世代の如来候補グループ、といった位置づけになります。菩薩より下には明王、天、羅漢僧形、垂迹神などが連なり、仏界曼荼羅を構成しています。

「如来」・・・・・釈迦如来・阿弥陀如来・大日如来・薬師如来など

「菩薩」・・・・・観音菩薩、弥勒菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩、虚空蔵菩薩、地蔵菩薩、妙見菩薩など

「明王」・・・・・不動明王、愛染明王、孔雀明王、軍茶利明王など

「天」・・・・毘沙門天、吉祥天、帝釈天、大黒天、荼枳尼天、金剛力士、鬼子母神、阿修羅など

「羅漢僧形」・・・・達磨太子、十六羅漢、十大弟子、聖徳太子、鑑真、行基、日蓮など

「垂迹神」・・・・蔵王権現、閻魔大王、清瀧権現、東照大権現、愛宕権現など

これらは仏教が異郷へと伝播拡大していく過程で、それ以前に地域で信仰されていた神や聖者が、仏教の中に取り込まれて仏の一柱へと書き換えられていくことで出来上がった階層です。基本的には如来以外はすべて修行中の身であり同列ともいえますが、菩薩は悟り寸前の最高クラスまで功徳を積み、如来と髪一重まで行き着いた特別な存在、といえます。

ただしこの位階も、たとえば不動明王(位階的には三位)は大日如来(位階では一位)の化身であるとされたり、、仏たちのパーソナリティは個別のものであると同時に、それぞれの仏は人間にとってどのような相で現れるか、という顕現の仕方、同じ仏性の多面的性質のどこかを強調した一要素である、ともいえます。

いずれにしても、地蔵菩薩(クシティガルバ Kṣitigarbha)であるお地蔵様は下っ端どころではなくきわめて高い位置にある「菩薩」の一人です。仏像や仏画においてこの世のしがらみのすべてから解脱した如来像が装身具を排したシンプルな姿なのに対して、菩薩は多くの場合インドの上流階級のようなきらびやかな服装で表現されます。その中で、地蔵菩薩は粗末な姿・比丘形(びくぎょう)であらわされ、個性がきわだちます。これは、地蔵菩薩が釈迦の入滅(死)後、次に涅槃に至ると予言された弥勒菩薩が現れるまでの56億7千万年後までの間、この世が無仏となるため、釈迦に代わって六道の一切衆生を救う誓いを立てたことに由来します。地蔵菩薩は現世を苦しむ命のすべてを救い、その苦しみをわが身に引き受けるために歩き回るため、旅の僧侶のような簡素な姿をしているわけです。


お地蔵様ってホントは怖い?習合されたおそろしいメンツ

日本人、特に庶民にとって身近な信仰と親愛の対象であった地蔵菩薩。路傍の石仏として、柿の実や赤とんぼ、菜の花やモンシロチョウとともに里山のしみじみとした風景の点描として親しまれていますが、そのような風景が見られるのは実は仏教国の中でも日本だけです。

優しい印象のお地蔵様ですが、実はおっかない側面も。

中国の道教における十王思想(死者が赴く冥界で、生前の人の行いを吟味する十人の裁判官)が日本に伝わり、十人の裁判官がそれぞれ本地仏(仏教以外の信仰の中に登場する神に、仏の名称・性質を割り当てる)をあてはめられ、十王の一人である閻魔王は本地仏が地蔵菩薩とされました。お地蔵様イコールあの地獄のお裁きをする閻魔大王、というわけです。

地蔵、すなわち地・大地・地下・地獄を支配する仏であるという連想から、日本の民間信仰である道祖神とも習合されました。道祖神とは、賽の神、つまりこの世とあの世との境に立ち、あの世(冥界)から災いや亡者悪霊が進入してこないように見守る神様で、いわば地獄の番人です。賽の神の起源はあのイザナキ・イザナミ神話の、イザナキがカグツチ(火の神)を生んでやけどをして神去った(冥界に旅立った)イザナミを訪ね、変わり果てた妻の姿に恐れおののいて逃げ帰る際に、黄泉比良坂(よもつひらさか)に投げ捨てた杖から生れた神で、冥界の住人がこの世に出てこないように見張る番をする神様です。路傍の地蔵は、道祖神と同様、生と死、あの世とこの世の境に立ち、その両者を隔てると同時にどちらをも見守り、その交流のための通信基地という意味があったのです。賽の神の賽とは、あの賽の川原の賽です。逆縁の不幸から地獄に落とされた子供の亡者たちが、石を積んでは鬼たちに崩される、あの地獄のこと。お地蔵様は賽の神でもあるので、鬼たちにそのように苦しめられる子供の亡者たちを見守り、鬼の責め苦から子供たちを守ってくれる仏として信仰されました。このため、子供をなくした親たちは路傍の地蔵に赤いよだれかけをかけ、子供の喜ぶカザグルマの玩具や菓子などを供えて、冥界の子供の霊よ安かれとつけとどけたわけです。

けれどもお地蔵様は、イザナキに対して「愛しき我が那勢の命、如此為ば、汝の国の人草、一日に千頭絞り殺さむ。」つまり「お前の子供を日々1000人殺してやる」と呪いをかけたイザナミとも習合されています。「地蔵」とは「地」の「蔵」つまり大地の子宮(母)を意味し、つまり冥界に去った大地母神としてのイザナミに重なるためです。このため、宕、つまり洞穴を意味する愛宕権現は地蔵菩薩を本地仏とし、同時にイザナミを習合しています。愛宕神社は火伏せ(火事除け)の神として知られていますが、これはイザナミが火の神を生んで神去ったために、火に対して用心せよと戒めの意味になると同時に、愛宕=あたごが「あだこ」=仇子=仇なす子と連想され、これが早世して親を悲しませる子供と結びつき、賽の川原の子供の亡者の守護をお地蔵様にお願いするという習俗として定着したわけです。

閻魔大王やイザナミノミコト。誰もが震え上がる怖い神様と、優しくてちょっと雑魚っぽいなりのお地蔵様が実は同じだなんて意外な感じですが、民間信仰・民俗文化の多様性と重層性を示す面白い事例ではないでしょうか。

閻魔様

閻魔様


全国に点在するさまざまな地蔵尊

全国には、子育て地蔵、子安地蔵、安産地蔵、身代わり地蔵、延命地蔵、水子地蔵などなど、その名にこめられた願いを汲み取るだけで切なくなるような庶民の思いのこもった地蔵尊が数多くあります。

東京都葛飾区水元にある業平山南蔵寺は、「しばられ地蔵」が有名。参拝者は願いことをこめて、境内の地蔵像に縄を巻きつけます。一年の間に縄はまきつけにまきつけられ、異様な姿に。名奉行・大岡忠相越前守が泥棒を見過ごしてとがめられた手代のお裁きで、「地蔵の分際で泥棒を見過ごしたとはけしからん。地蔵を縛り戒めよ」と命じ、その後盗賊も見つかり落着したため話題となり、以来厄除けや盗難除け、縁結びなどの霊験あらたかと信仰されるようになったいわれがあります。

ぐるぐるにしばられたお地蔵様は、毎年12月31日(大晦日)の夜、縄解き供養が行われます。

また、巣鴨の有名な「とげぬき地蔵」のある高岩寺は、お地蔵様には珍しく秘仏ですが、熟年層が群がって「洗い観音」をこすっている様子は、テレビなどで見たことのある方も多いでしょう。病気平癒、厄除け、商売繁盛などの霊験があるといわれます。

栃木県の岩船山高勝寺は、日本三大子授け地蔵として知られ、また寺のある岩船山は日本三大霊山・関東の恐山と称されることもあり、関東一円の亡者はこの山に集まりあの世に向かう、ともいわれるスポットです。生と死の境に立つゲートキーパー地蔵菩薩の神格を体験するのに恰好のお寺です。

立派な身なりの偉い人には気後れしても、自分たちと変わりない質素な身なりをしたお地蔵様に親しみを覚え、まるで親しい頼れる友のようにいつくしみ、図々しくお願い事をできる気の置けない仏様。納めの地蔵とサンタクロースが訪れるクリスマス・イブが同じ日なのは、そしてお地蔵様が真っ赤なよだれかけをし、サンタクロースが真っ赤な衣装を身に着けて、どちらも子供たちによりそう精霊であることは、単なる偶然なのでしょうか。人類共通のイメージ力が、長く信仰されるものに存在している不思議な一致を感じさせます。この世に生きている子供たちへのプレゼントはサンタさん、でもあの世に行ってしまった子供たちのために、納めの地蔵に身近なお地蔵様にお供えする、というのもいいかもしれません。

しばられ地蔵

岩船山高勝寺

葛飾区のしばられ地蔵。縄でぐるぐる巻き…。

葛飾区のしばられ地蔵。縄でぐるぐる巻き…。

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