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“動くDNA”が哺乳類の脳の進化過程で機能や形態の獲得に貢献するメカニズムを解明


従来、有害とされていたDNA配列が、哺乳類のゲノム進化に有益な側面を持つことが明らかに

2023年6月22日
早稲田大学

“動くDNA”が哺乳類の脳の進化過程で機能や形態の獲得に貢献する

メカニズムを解明

 

詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。

 

【表:https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M102172/202306226519/_prw_PT1fl_QJ94QWhZ.png

早稲田大学理工学術院 嘱託の関根 光太郎(せきね こうたろう)と同理工学術院総合研究所 次席研究員の小野口 真広(おのぐち まさひろ)、および同理工学術院 教授の浜田 道昭(はまだ みちあき)らの研究グループは、哺乳類の脳における特定の種類の細胞の遺伝子制御に関わるゲノム配列の一部が、「動くDNA」とも呼ばれる転移因子(Transposable element: TE) ※1によって生命進化史の中で段階的に獲得されたことを明らかにしました。

 

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202306226519-O2-7s4AIi6B

図 TE挿入による遺伝子制御ネットワークの変化と脳の形態・機能変化

 

本研究成果は、Springer Nature社発行のオンラインジャーナル『Communications Biology』(論文名:Transposons contribute to the acquisition of cell type-specific cis-elements in the brain)にて、2023年6月10日(現地時間)にオンラインで掲載されました。

 

■ 研究の波及効果や社会的影響

本研究では、グルタミン酸作動性神経前駆細胞※2に関わる遺伝子制御配列の獲得にはTEが多大な影響を及ぼしていることがわかりました。このことは、従来考えられているような塩基置換の蓄積だけでは大規模な遺伝子制御機構の獲得が十分に説明できないことを意味しており、TEによる配列の大規模な改変が生物の進化の重要なトリガーになりうることを示しています。

TEは元来ウイルスのような外来の因子が宿主の細胞内で定着化したものであると考えられており、宿主にとって有害な側面を持つことが知られていました。本研究ではTEのゲノム進化への貢献という宿主にとって有益な側面を明らかにしました。このようなTEの複雑な機能の理解を通じて、哺乳類におけるゲノムの分子進化メカニズムと脳の進化の関係の解明につながることが期待されます。

 

■今後の課題

本研究ではマウスの成体脳を使用し、TEが成体神経再生の遺伝子制御に関わることを明らかにしました。TEは成体のみならず、成体になる前の胎児期における発生中にも遺伝子制御領域として機能することが考えられ、発生中の脳と成体脳におけるTEの機能の違いを調べることは今後の課題と考えています。また、進化の側面からTEの役割を理解するためには、マウスやヒトを含む複数の生物種の脳を比較することが不可欠と考えています。

 

■用語解説

※1 転移因子(Transposable element: TE)

ゲノム上で自身の配列もしくはそのコピー配列を移動させることのできるDNA配列で、“動くDNA”とも呼ばれます。ヒトのゲノム配列は約半分が転移因子で占められています。TEには転移メカニズムの異なるレトロトランスポゾン(コピー&ペースト型)とDNAトランスポゾン(カット&ペースト型)の2種類があり、その中でさらに塩基配列の特徴の異なる多数のファミリー・サブファミリーに分類されます。

 

※2 グルタミン酸作動性神経前駆細胞

神経前駆細胞とは、幹細胞から神経系の体細胞に分化する途中の段階にある状態の細胞を意味します。その中でグルタミン酸作動性神経前駆細胞は、興奮性ニューロンとして機能する細胞の中では最も数が多いグルタミン酸作動性神経細胞に分化する途中段階の状態の細胞を示します。

 

■論文情報

雑誌名:Communications Biology

論文名:Transposons contribute to the acquisition of cell type-specific cis-elements in the brain

執筆者名(所属機関名): 関根光太郎(早稲田大学、産業技術総合研究所)、小野口真広(早稲田大学、産業技術総合研究所)、浜田道昭(早稲田大学、産業技術総合研究所、日本医科大学)

掲載日(現地時間):2023年6月10日(土)

掲載URL:https://doi.org/10.1038/s42003-023-04989-7

DOI:10.1038/s42003-023-04989-7

※記事にされる場合には https://doi.org/10.1038/s42003-023-04989-7 の掲載をお願いいたします。

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