ビ花壇 Research Memo(1):2020年6月期上期は厳しい環境が続くなかで低調に推移。新規出店等で巻き返しへ
1. 会社概要
ビューティ花壇<3041>は、葬儀の際に利用される生花祭壇等の企画・制作・設営を主力として、生花卸売やブライダル装花を含めた生花事業をコア事業としている。また、M&Aを軸とした周辺事業の取り込みによる規模拡大と提案力向上にも積極的に取り組んできた。同社の特長は、技術難易度の高いデザイン性による差別化と、独自の調達ルートや大量仕入れを生かした価格競争力にある。ただ、生花祭壇のパイオニアとして新たな技術を生み出し、広く一般に生花祭壇を普及させることで「業界のリーディングカンパニー」として成長してきた同社であるが、関東エリアを中心に急速なペースで単価下落が進んでおり、事業環境は厳しい状況が続いている。同社では、そのような環境変化に対応するため、コア事業である生花事業(生花祭壇事業、生花卸売事業、ブライダル装花事業)に最大限注力する事業方針のもと、生産規模や販売規模、原料調達など物量を拡大させるとともに、長年培ってきたノウハウや業務集約を通じた効率的な業務プロセスの確立により低コスト化を実現し、「業界のコストリーダー」として市場シェア拡大に取り組んでおり、徐々にその成果が現れ始めている。また、花卉の生産事業を行う(株)アグリフラワー(2019年6月期から連結化)も順調に立ち上がってきており、いよいよ事業の六次化(自社生産)による原価低減(及び安定化)に向けても本格的に動き出した。
2. 2020年6月期上期の業績
ただ、2020年6月期上期の業績は、売上高が前年同期比3.4%減の2,853百万円、営業損失が44百万円(前年同期は18百万円の損失)と減収減益となった。売上高は、「生花祭壇事業」「生花卸売事業」「ブライダル装花事業」の各事業がそれぞれ減少。特に、「生花祭壇事業」については、受注単価の下落傾向が続くなかで、環境変化(互助会による内製化等)に伴う施行件数の減少も重なって低調に推移した。利益面でも、コスト削減に取り組んだものの、減収に伴う収益の押し下げや人件費率の上昇、新規出店に係る費用などにより減益となり、損失幅が拡大した。一方、活動面では、新規出店効果の実現(取引先の拡大等)や自社生産比率の調整による原価低減などで一定の成果を残した。
3. 2020年6月期の業績予想
2020年6月期の業績予想について同社は、期初予想を据え置き、売上高を前期比2.1%増の6,000百万円、営業利益を同613.6%増の140百万円と増収及び大幅な損益改善を見込んでいる。売上高は、下期の巻き返しにより、すべてのセグメントが伸長する計画。特に、「生花祭壇事業」は新規出店に伴う顧客獲得等により拡大するとともに、「生花卸売事業」についても既存顧客対応の強化や関西エリアへの展開(物流網の構築)等が増収に寄与する見通し。「ブライダル装花事業」についても新規取引先を軸とした横展開(商圏拡大など)により成長を目指していく。利益面では、仕入原価の圧縮や物流費の削減などにより大幅な損益改善を実現する計画である。
4. 成長戦略
同社は、2020 年6 月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を推進してきた。1) コア事業での売上拡大、2) 物流のサービス強化と高度化、3) 管理部門の体制強化、4) 周辺事業の水平展開を重点目標に掲げるとともに、コア事業である「生花祭壇事業」の拡大を軸に据え、その副次的効果を物流の活性化(生花卸売事業の強化)へ結び付ける戦略をより強く打ち出している。数値目標については、当初計画に届かない見通しであるが、定性面では着実に前進してきたと評価しても良いであろう。また、2021年6月以降の方向性についても、戦略的な骨格に大きな変化はないとみられる。技術開発型企業への投資や積極的なアライアンス、M&Aの実行など外部リソースの活用にも意欲的に取り組む方針である。
弊社でも、「生花祭壇事業」における営業戦略や原価低減策を着々と進めていることや積極的な拠点展開にも取り組んでいることから、今後の事業拡大や損益改善の余地は十分にあると評価している。また、実験的に進めている花卉の自社生産(事業の六次化)についても、本格的に動き出しており、仕入原価の低減及び安定化に向けてどのような貢献をしてくるのかが大きなポイントとなるだろう。今後も、業界再編等に向けた同社ならではの取り組みに注目したい。また、業界環境が厳しさを増すなかで、M&A による事業拡大やフランチャイズ(FC)展開を含めた他社との提携のチャンスも広がっていくものとみている。
■Key Points
・2020年6月期上期業績は、受注単価の下落や施行件数の減少により低調に推移
・新規出店効果や仕入原価の低減などでは一定の成果
・2020年6月期の業績予想として増収及び大幅な損益改善を見込む(期初予想を据え置き)
・「生花祭壇事業」を軸とした中期経営計画を推進。物流効率化の実現に加え、ドミナント展開や低価格戦略によるシェア拡大を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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