日経平均は反発、「市場が弱気に傾いた」は本当?
週明け29日の米株式市場でNYダウは大幅反発し、580ドル高となった。航空機のボーイングが大きく上昇し相場をけん引。5月中古住宅販売成約指数が過去最大の伸びを記録し、6月ダラス連銀製造業活動指数が市場予想を大幅に上回ったことも好感された。
日経平均もこうした流れを引き継ぎ、反発期待の買いが先行して340円高からスタート。寄り付き後は堅調もみ合いといった様相だったが、前場中ごろには22448.30円(453.26円高)まで上昇する場面があった。
個別では、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、東エレク<8035>、ソニー<6758>、トヨタ自<7203>などが堅調。半導体関連株は米マイクロン・テクノロジーの好決算が買い材料視された。シリコンウエハーのSUMCO<3436>と信越化<4063>
は揃って3%超の上昇。上期業績を上方修正したアース製薬<4985>が急伸し、やはり今期の利益上振れが好感されたシーアールイー<3458>は東証1部上昇率トップとなった。
一方、一部証券会社の投資判断引き下げが観測されたレーザーテック<6920>は急反落。第1四半期が営業赤字となったしまむら<8227>を中心に、同じく減益だったあさひ
<3333>、6月の既存店増収率が鈍化したクスリのアオキ<3549>など小売株の下げも目立った。また、GMOクラ<3788>は過熱感から利益確定売りがかさみ、東証1部下落率トップとなった。
セクターでは、海運業、鉄鋼、非鉄金属などが上昇率上位で、その他も全般堅調。
医薬品のみ小幅に下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の66%、対して値下がり銘柄は31%となっている。
前日のNYダウがボーイング株の急伸と経済指標の予想上振れで大幅反発した流れを引き継ぎ、本日の東京市場も買いが先行する展開となった。日経平均の日足チャートを見ると、22400円近辺に位置する25日移動平均線水準まで値を戻している。売買代金上位では日経平均への寄与が大きい値がさ株、米マイクロンの決算を好感した半導体関連株などの堅調ぶりが目立ち、業種別騰落率では典型的なシクリカルバリュー(景気敏感系の割安株)セクターが値上がり率上位に並ぶ。ここまでの東証1部売買代金は
9000億円程度にとどまり、引き続き売買はやや低調だ。
新興市場ではマザーズ指数が4日続落。1040pt手前に位置する5日移動平均線に上値を抑えられ、1010pt台に位置する25日移動平均線を割り込んできた。主力大型株に関心が向いたとの説明もできるが、先週末の当欄で示唆したとおり個人投資家の買い余力が徐々に低下している可能性はある。前日にジャスダック市場へ上場したエブレン<
6599>が公開価格の約3.7倍となる初値を付け、本日マザーズ市場へ新規上場したグッドパッチ<7351>はまだ買い気配が続き、やはり初値高騰しそうだ。ただ、初値が高くなりすぎて株価上昇が続かなければ、資金回転が利きづらくなるとの懸念もある。
アジア市場に目を向けると、中国の6月製造業購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を上回り、上海総合指数は反発。中国が香港への統制を強める「香港国家安全維持法」を成立させたと伝わっているものの、想定内との受け止めから香港ハンセン指数は上昇している。国内外でくすぶる新型コロナ再拡大の懸念が上値を抑えるだろうが、後場の日経平均もプラス圏でまずまず堅調に推移しそうだ。
さて、先週末に新型コロナ感染者の増加と一部州での営業規制強化を受けてNYダウが急落し、週明け29日の日経平均も500円を超える下落となったため、市場では「弱気相場入り」を示唆するコメントが増えてきた。確かにコロナ禍が波及して米シェール企業が破綻したり、新興国の外貨準備が減少したりと、金融市場のあちこちにショックの火種がくすぶっている感はある。前日は久しぶりに外資系証券による株価指数先物の売り越しが顕著となり、海外勢は調整局面入りも見据え慎重姿勢を強めつつあると考えられる。しかし、個別株の物色動向を見ると、投資家が弱気に傾いたとは必ずしも言えないことが窺える。
景気敏感色が強い海運、また鉄鋼や化学といった素材系セクターの個別株動向を見ると、信用需給が売り長の銘柄ほど上昇が大きいというわけでもない。ボーイング株高を受けて大きく値上がりしているIHI<7013>も直近の信用倍率は7倍超だ。つまり、買い戻し主導で値上がりしているというより、買い持ち高をじわり積み上げようとする動きがあるように思われる。
足元の新型コロナ感染動向に警戒しつつも、経済活動再開に伴う主要国・地域での経済指標の改善が株価を下支えする構図はひとまず崩れていない。米国ではCB消費者信頼感指数(30日)、ADP雇用統計、サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況指数(7月1日)、雇用統計(2日)といった6月経済指標の発表が数多く予定されており、これらの動向にも注目したい。日本固有の要因としては、日銀の上場投資信託(ETF)買いによる需給面の下支えに加え、国際通貨基金(IMF)が24日改訂した世界経済見通しで「日本はまだまし」と受け止められていることも他の主要国株式との比較でプラスに働く可能性がある。
ただ、月末月初はここまでの株高による年金基金等のリバランス(資産の再配分)
目的の売りや、ETFの分配金捻出に絡んだ売りなどが想定されている。米株の変動性指数(VIX)がまだ30を超えている状況ということもあり、短期的には前日のような波乱が起こる可能性がある点には注意したい。
(小林大純)
<AK>
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