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技と縁結ぶ かやぶき屋根


 「ホーイ、ホイッ、ホーイ、ホイッ」。カケヤと呼ばれる木づちを振り下ろす掛け声が集落にこだまする――。

 岐阜県白川村荻町にある世界文化遺産の合掌造り集落で5月中旬、村に伝わる相互扶助の精神「結(ゆい)」によるかやぶき屋根のふき替え作業があった。同村で結が実施されたのは5年ぶりだ。

 同町には、母屋や小屋など114棟にかやぶき屋根があり、20~30年周期で、年間4~5棟をふき替える。今回ふき替えをしたのは明善寺庫裏。大泉信吾住職(61)は「みんなで楽しく共同作業がしたい」と結でのふき替えを数年前から模索。新型コロナウイルス感染症拡大やかや不足もあり、やっと実現できた。

 結は屋根のふき替えだけでなく、田植えや稲刈りなどの農作業で各世帯から人を出して助け合う。例えば屋根ふきを手伝ってもらえば同じ屋根ふきで対等の労力を返す。近年、農作業は機械化や職業の多様化が進んだため、屋根のふき替えの結だけが唯一、残っている。

 結は経験を通して技術の継承にも一役買っていた。しかし、参加者たちのまかないや「後(あと)ふき」「なおらい」と呼ばれる慰労会の準備など、気を使うことも多く、業者に委託する家が増えている。

 今回のふき替え作業には、村民や村立義務教育学校・白川郷学園の児童・生徒ら155人が集まった。参加者は、自分の背丈よりも高い重さ約5キロのかやの束を、手渡しで境内から庫裏の屋根へ運び上げた。

 初めて参加した同学園の原田顕誓(けんせい)さん(10)は「お父さんが屋根ふきの仕事をしていて、すごいと思ったので協力したかった。将来は屋根で作業したい」と話した。

 急斜面の屋根では、屋根ふきの職人と経験者らがかやの束を80センチの厚さで均等に並べ、その上に置いた縫(ぬ)い木(ぼく)を骨組みに縄で縛りつけ、カケヤでたたいて締め込んだ。

 久しぶりの作業に結び方などを忘れた人もいたが、作業を進めるうちに思い出していた。そこには、冗談を交えながら、教え、教わる、村民たちの絆が垣間見られた。

 20代で屋根ふきができる人がいないと聞き、「若い人たちが参加するきっかけになってくれれば」と藤坂周磨さん(26)は年配者に交じって屋根で作業した。「白川村らしい感じを久々に見られてよかった。これぞ白川村です」と有形無形の伝統が伝わる郷土への思いを話した。

 村民を結ぶ精神は次世代へと受け継がれていた。【写真・文 兵藤公治】

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