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目指すは「デロリアン」 部品は日用品、地方発の空飛ぶクルマとは


 最近耳にすることが多くなった「空飛ぶクルマ」。地方発で、いっぷう変わった開発が進んでいる。材料は主に身の回りの日用品で、開発のコスト削減と時間短縮を図っているという。目指すのは1985年公開の米SF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にタイムマシンとして登場した「デロリアン」。いったいどんなクルマなのか。

 開発の舞台は緑の多い徳島県阿南市の県立阿南光高校新野キャンパス。手掛けるのは徳島大高等教育研究センター(徳島市)の山中建二助教(48)だ。モーターなどの電力の供給や制御をする「パワーエレクトロニクス」が専門。災害時に孤立した避難所からの救出などに役立てたいと2021年3月に開発を始めた。

 見た目がヘリコプターに似ている一般的な空飛ぶクルマに比べると、四輪のタイヤが付き、乗用車に近いデザインだ。前方についたファンは独フォルクスワーゲン傘下の高級ブランド「アウディ」をイメージしたという。車体下についた二つのメインプロペラとタイヤに付属した四つの小型プロペラで浮揚力を生み出す仕組みだ。動力が電気という点は共通しており、自動車の発電機を改造した。

 タイヤはマウンテンバイクを流用した電気自動車。電気モーターを冷却するためのラジエーターやファンはデスクトップパソコンの部品だ。メインのプロペラはパラグライダー用を、小型はラジオコントロール用を転用した。

 タイヤは軽量化のために自転車用とすることを思いつき、中でもクッション性が高く、カーブでも滑らかに動くマウンテンバイク用とするなど工夫した。ホイールのすき間が大きい分、浮揚力も生まれるという。冷却装置は電気モーター近くに配置するのではなく、メンテナンスのしやすさも考慮して車の前にファン六つ、その後ろにラジエーター二つを並べて前方からの空気でより冷却されるようにした。

 山中氏は苦労した点として、「計六つのプロペラを電気モーターで回転させるための電気回路が市販されてないので、1年間ぐらい時間を費やしてプログラミングして大きな動力を生むように電気回路を自作したこと」と振り返る。

 22年8月には飛行時間4分の設計で「完成」したが、無人で飛行実験したところ、数センチしか浮き上がらなかった。原因は総重量が195キロあった車体の重さだった。車体のフレームをアルミ製にするなど軽量化を図ってきたが、部材の強度を上げるために補強材を入れた分重くなったという。

 大学から提供された研究資金は2年分で、「ある企業の空飛ぶクルマの開発費を聞いたが、その百数十分の一」(山中氏)。資金はあとわずかで、まずは一定時間の飛行を成功させ、さらなる軽量化のために必要で、数千万円に上るとみられるカーボン製フレーム購入のための資金援助につなげたい考えだ。

 地上での走行のためにつけていた車輪を水平から垂直に変形する機器類を外すことも決断。40キロ減り、ほかに車体フレームの一部を外したり、電気回路を見直し軽量化をしたことなどで全体で50キロの軽量化に成功した。六つあるプロペラは2枚刃を3枚刃に変えることで20~25%、さらに部品を外したことで風の流れが良くなって、5~10%それぞれ浮揚力が増した。体重44キロの山中氏が乗っても、4分間の有人飛行ができる計算になったという。23年4月12日には30キロの重りを積んだ総重量175キロで数秒間の安定した浮揚に成功した。

 山中氏は「近々、自分自身が操縦席に座って、車体を浮き上がらせて実績を示すことで、国や民間企業の助成金を獲得したり、クラウドファンディングでカーボン化する資金を集めたい」と話している。【山本芳博】

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