吉田喜重さん死去＝「秋津温泉」監督、８９歳

　「秋津温泉」「エロス＋虐殺」などの作品で知られ、前衛的な作風が国内外で評価された映画監督の吉田喜重（よしだ・よししげ）さんが８日午前８時３３分、肺炎のため東京都内の病院で死去した。８９歳だった。福井市出身。葬儀は近親者で行う。喪主は妻で俳優の岡田茉莉子（おかだ・まりこ）さん。後日、お別れの会を開く予定。 　東京大卒業後、松竹に入社し、木下恵介監督作品の助監督を経て１９６０年に「ろくでなし」を初監督。戦中・戦後の男女の情愛を描いた「秋津温泉」などを手掛け、大島渚監督、篠田正浩監督らと共に「松竹ヌーベルバーグ（新しい波）」の旗手として注目された。 　６６年に独立。７０年の代表作「エロス＋虐殺」では社会運動家の大杉栄、７３年の「戒厳令」では二・二六事件と北一輝を題材に、社会や政治、性の問題に取り組んだ。英作家ブロンテの名作を翻案した「嵐が丘」（８８年）や広島の原爆問題を扱った「鏡の女たち」（２００２年）は仏カンヌ国際映画祭で上映された。テレビドキュメンタリーやオペラも演出するなど、幅広く活躍した。　（了） 【時事通信社】 〔写真説明〕映画監督の吉田喜重さん