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サマーウォーズの「あらわし」衝突エネルギーを計算してみたら……陣内家はどうやっても全滅不可避?



夏の風物詩となった感もある細田守監督作品『サマーウォーズ』のテレビ放送。今年も8月18日(本日!)に日テレ系列で放送されて盛り上がりましたね。


ところでこの作品、ラストで小惑星探査機「あらわし」が陣内家めがけて落下してくるというサスペンスがあります。健二のおかげでなんとか直撃を免れましたが、実際のところ、その威力はどれくらいだったのでしょうか?


そこで、『アリエナイ理科』プロジェクトを推進する「薬理凶室」メンバーの月詠氏に考察を依頼。現実の物理法則に従うとどうなるか、算出してもらいました!



あらわしの“再突入体”のサイズを考察する


映画『サマーウォーズ』のラストでは、小惑星探査機あらわしの一部である“再突入体”が落下してきます(本体は再突入の際に燃え尽きた模様)が、これはどれくらいのエネルギーがあるのでしょうか。


そこで、まずはそのサイズについて考えてみます。そもそもの話として、あらわしのモデルはたぶん小惑星探査機「はやぶさ」でしょう。はやぶさの地球帰還カプセルは直径約40cmの中華鍋型で、重量は17kg。減速しやすく安定させやすい構造で、最後はパラシュートを開いて地上に緩降下しました。


▲はやぶさの地球帰還カプセルはこんなかたち。JAXA小惑星探査機「はやぶさ」物語より引用


いっぽう、あらわしの再突入体は流線型で、ミサイルというか航空機搭載爆弾のような形状。GPSデータとリンクしつつ、後部に見える操舵翼で落下地点を調整していると思われます。なんか、特定の場所めがけて落下する気満々というか、むしろそういうデータを取るための実験兵器なのでは……!?(恐怖)


この再突入体、理一おじさんは直径1mと言っていますが、それだととんでもないサイズになってしまいます。なのでさすがに脚本上のミスでしょう。おそらく全長1mと言いたかったハズです(せっかくなので、直径1mの場合はどうなるかも記事の最後に載せておきました!)。


次に、再突入体の重量について。映画のビジュアルだけだと手がかりがなさすぎますので、似た形状のものを参考に仮定します。似た形状のもの……そう、「Mk.82無誘導爆弾」です!



Mk.82無誘導爆弾のスペックは全長2.22m、直径27.3cmで、重量は227kg。そこで、再突入体はその1/2サイズ程度とみなし、重量はキリよく100kgと仮定しましょう。


全長1mとした場合の計算結果


というわけで陣内家めがけて降ってくるあらわしの再突入体は、全長1m、重量100kgと仮定しました。そして作中の説明によると、再突入体の落下速度は秒速7kmとのこと。つまり時速25200kmであり、マッハだと約20.6です。


ここまで数字が揃えば、運動エネルギーとして簡単に計算できます。



に代入すると、


2450000000[J](24.5億ジュール)


と出ました。TNT換算で約585.6kg。当然、直撃していれば陣内家は全滅です。作中ではなんとか逸らすことができましたが、あれくらいの衝撃波が発生するのは仕方のないところでしょう。また、温泉が噴き出しているので、相当な深さまで弾殻が到達していると思われます。


ということは……、この再突入体がもし兵器だったとしたら(あくまで筆者の妄想ですよ)、爆発物というよりは「神の杖」に近いものかもしれません。「神の杖=Rods from God」とは、アメリカ空軍が構想しているとされる質量兵器。全長6m、重量100kgのタングステン製ロッドを衛星軌道上から発射し、マッハ10で目標に着弾させて、地下深くまで完膚なきまでに叩き壊すというものです。正直、狙われたら避けようがない恐るべき兵器なんですが、いまのところ実現性はかなり怪しい感じ。ちなみに、類似の兵器に「ファルコンHTV2」というものもあって、こちらはけっこう研究が進んでいるようです。


直径1mだった場合の威力を概算


最後に、作中のセリフどおり直径1m程度の物質が落ちてきた場合は、どんな感じになるのかを確かめてみましょう。そこで利用してみたいのが「Earth Impact Effects Program」(インペリアル・カレッジ・ロンドン)という隕石落下の影響を計算できるサイト。ここに数字を代入していけば、クレーターの大きさとかまで算出してくれます。あらわしの再突入体を「鉄を主成分とする隕石」とみなせば、おおよその状況は把握できるはず! というわけで、以下のように数字を入力していきます。



  • 【Distance from Impact】地表までの距離…1000km(低高度宇宙と仮定)

  • 【Projectile Diameter】飛翔体の直径…1m

  • 【Projectile Density (in kg/m3) 】飛翔体の密度…「8000kg/m3  for iron」(鉄)を選択

  • 【Impact Velocity】衝突速度…25200km

  • 【Impact Angle (in degrees)】入射角…70度(映画の映像で確認)

  • 【Target Type】地表の性質…「Sedimentary Rock」(堆積岩)を選択


その結果はというと……



直径30.9m、深さ6.58mのクレーターができます。


エネルギーは約1026億ジュール、TNT換算で24.5tとなります。先ほどの全長1mで手動計算したものと単純な比較はできませんが、圧倒的な差(41.8倍)になっちゃいましたね……。


これだと、ちょっと軌道をズラしたくらいでは陣内家の全滅は避けられないかもしれません。衝撃波が40倍ともなると家屋は完全に吹き飛ばされるでしょうし、飛来してきた無数の瓦礫が人間に当たったら……。うーん、やっぱり「直径1m」というのはナシってことで、よろしくお願いしまーす!


※本論考はあくまでも思考実験です。そのため、設定を単純化したり、細かいパラメータの省略を行ったりしております。作中の状況を忠実に数字にのせた場合、さらにとんでもない結果になる可能性があります。あと、こういうネタをきっかけに数学とか物理とかに興味を持ってもらえたらうれしいです。


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