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【レビュー】誇り高い女たちの連帯と共闘の中に炸裂する見事な“アクション映画愛”!―『ガンパウダー・ミルクシェイク』


監督のアクション映画への熱い想いがこれほど濃密に詰まっていて見事に爆発した映画も珍しい。

しかも自身の強い信念に従って敵をなぎ倒し暴れまくるのは全員女性。

まさに絶対的な暴力性と潔いほどの甘さを表す映画のタイトルにふさわしい、ポップにぶっ飛んだ女性讃歌の新しいアクション作品だ。

監督は、前作『オオカミは嘘をつく』がその年の最高傑作とクエンティン・タランティーノに絶賛されたイスラエル出身のナヴォット・パプシャド

とにかく錚々たる傑作アクション映画へのオマージュ、そこからのインスパイアないしアレンジが続く様は圧倒的だ。

セルジオ・レオーネのマカロニ・ウエスタンから黒澤映画、マーティン・スコセッシ、ジョン・ウー、ジャッキー・チェン、タランティーノにエドガー・ライト。

監督曰く、キートンやチャップリン作品にもインスパイアされたとのことで、アクションシーンを含んだ過去の傑作映画に向けた愛情が文字どおりミルクシェイクのように濃厚に混ざり合っているのがこの映画だ。

主人公の若き女性アサシン、サムを演じるのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズでの青い肌のサイボーグ戦闘員ネビュラ役で知られるカレン・ギラン

本作では虎のスカジャンを着こなし、180cmの長身を使った説得力十分の圧巻のアクションをこなし、観る者を魅了する。

サムは、あるミッションでターゲットの娘である少女エミリーを匿ったことをきっかけに自身が属する組織から逆に命を狙われてしまう。

組織から送り込まれる刺客たちとの壮絶なバトルは『ジョン・ウィック』シリーズにも引けをとらないが、同作で殺し屋たちの唯一の安全地帯として登場するホテルが印象的だったように、本作でもストーリー上重要な建物が出てくる。

それは図書館だ。

本作での図書館は、書物に紛れてあらゆる強力な銃器が保管されており、この図書館を仕切るのがかつて殺し屋だった3人の女たちだ。

カーラ・グギーノ、アンジェラ・バセット、ミシェル・ヨーが演じるこの3人の風格とキャラクターがまた最高で、図書館での戦いはそれぞれの見せ場も含めてアクション映画の真骨頂のような盛り上がりを見せる。

もう1人、忘れてはならないキャスティングとして、殺し屋であり幼きサムを捨てた母スカーレット役をドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズのレナ・ヘディが演じていることにも注目したい。

娘への愛情と敵に向ける容赦ない殺意を併せ持つ最愛最強の母親像は本作のストーリーに強みと統一感を与えている。

併せてゲースロのオマージュ?と思われるようなアクションシーンもあるので、ファンにはたまらないだろう。

最近では女性キャストだけで007シリーズのような凄みのあるスパイアクションを描いた『355』も公開され話題を集めたが、本作は同じバイオレンスでもポップな雰囲気と多くのユーモアに彩られてる点が特徴的だ。

かっこいい女たちが互いを信頼しながら、許せない男たち相手にはちゃめちゃに暴れまくる。

彼女たちが頼れるのは自分自身と仲間だけ。

ただ、映画を観る者はそのうち気付き始める。

彼女たちを支えその背中を押す目に見えない存在は、古今東西これまで公開されて世界を魅了してきた数々のアクション映画たちだ。

図書館が戦場になり、そして映画館が戦場になる。

アクション映画愛が結実したこの贅沢な1本は、春を飛び越えて即座に真夏を手繰り寄せるような、即効性のある興奮と爽快感を与えてくれるはずだ。

 

『ガンパウダー・ミルクシェイク』

■監督・脚本:ナヴォット・パプシャド
■出演:カレン・ギラン、レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ、ミシェル・ヨー、アンジェラ・バセット、ポール・ジアマッティ

©2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.

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