starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

驚異の発見!別のウイルスに寄生するウイルスの姿を撮影!


米メリーランド大学ボルティモア・カウンティ校(UMBC)の最新研究で、ウイルスが別のウイルスに合体している様子が世界で初めて確認されました。

ウイルスは一般に、ヒトを含む動植物やバクテリア(細菌)の細胞に感染することで知られます。

その一方で、ウイルスが別のウイルスに物理的にくっつくことは知られていませんでした。

では今回見つかったのはどんな種類のウイルスで、なぜ合体しなければならなかったのでしょうか?

研究の詳細は、2023年10月31日付で科学雑誌『Journal of the International Society of Microbial Ecology』に掲載されています。

目次

  • 他のウイルスの助けがいる「サテライトウイルス」とは?
  • 史上初!ウイルス同士の合体の観察に成功

他のウイルスの助けがいる「サテライトウイルス」とは?

他のウイルスの助けがいる「サテライトウイルス」とは?
Credit: canva

先ほど言ったように、ウイルス同士が物理的に合体するケースはこれまで一度も確認されていません。

しかし一方で、他のウイルスの助けを必要とするウイルスの存在は知られていました。

それが「サテライトウイルス」です。

サテライトウイルスとは、感染性の核酸(DNAまたはRNA)であり、通常にウイルスのように単独でタンパク質を作ったり、宿主となる細菌の中で増殖することができません。

そこでサテライトウイルスは、宿主細胞の中で自己複製したり、自分の遺伝物質を保護するタンパク質の殻であるカプシド(capsid)を作るために「ヘルパーウイルス」の力を借りるのです。

ヘルパーウイルスは、サテライトウイルスのように単独では増殖できないウイルスを助ける働きをします。

といっても、ヘルパーウイルス側に何かサポートするメリットがあるわけではなく、単にその増殖能力をサテライトウイルスに利用されているだけです。

なんにせよ、ウイルスは微粒子であるため、同じ細胞に取りついてその機能を借りるためには、サテライトウイルスはヘルパーウイルスにくっついて行動する必要があると考えられますが、実際に両者が物理的に合体した姿は見つかっていませんでした。

しかし研究チームは、ほんの偶然から史上初となる発見に成功するのです。

史上初!ウイルス同士の合体の観察に成功

今回の発見は、UMBCの生物学部で行われている一般的なプロジェクトの中で起こりました。

このプロジェクトは、学生たちが環境サンプルからバクテリオファージ(※)を単離し、DNA配列決定をするために研究室に送るというものです。

(※ ウイルスは生物の細胞に感染するものの総称ですが、その中でも特にバクテリア(細菌)に感染するものを「バクテリオファージ」あるいは単に「ファージ」と呼ぶ)

その中で研究チームは、ストレプトマイセス属の細菌に感染するバクテリオファージの配列決定をしている際に、ある異変に気づきました。

予想されるバクテリオファージのDNA配列と一致しないだけでなく、他に認識できない小さなDNA配列が含まれていたのです。

チームは当初「単にファージが汚染されているだけだろう」と考えましたが、その真相を探るべく、透過型電子顕微鏡(TEM)を使って視覚的に調べてみました。

すると驚くべきことに、サテライトウイルスとヘルパーウイルスが合体している様子が見つかったのです。

こちらがその画像で、サテライトウイルスは紫色で、ヘルパーウイルスは青色で示されています。

サテライトウイルス(紫)、ヘルパーウイルス(青)
Credit: UMBC team makes first-ever observation of a virus attaching to another virus(2023)

小さな方のサテライトウイルス(紫)は、大きなヘルパーウイルス(青)の尾部と外殻の付け根(首の部分と表現されている)にしっかりと接合していました。

これは両ウイルスが互いに合体している姿を捉えた世界初の成果です。

そこでチームは、同様の配列異常が見られたヘルパーウイルスを調べたところ、なんと80%(50件中40件)でサテライトウイルスによる合体が見つかったといいます。

合体が見られなかったものでも、ヘルパーウイルスの付け根部分に凹みのような痕跡が見られました。

研究主任のイヴァン・エリル(Ivan Erill)氏いわく「これはサテライトウイルスが接合していた痕跡」の可能性が高いという。

TEMで見たヘルパーウイルス(サテライトウイルスによる合体やその痕跡が見られる)
Credit: Tagide deCarvalho et al., Journal of the International Society of Microbial Ecology(2023)

チームはまた、ヘルパーウイルスに合体しているサテライトウイルスを調べ、宿主の細胞内で自己複製するために必要な遺伝子を持っていないことを確認しました。

以上を踏まえると、サテライトウイルスはヘルパーウイルスから自己複製の助けを借りるために、同じ宿主細胞の中に侵入する必要があるため物理的にくっついていると結論できます。

同チームのタギデ・デカルヴァーリョ(Tagide deCarvalho)氏は「これを見たとき、とても信じられない思いでした。ウイルス同士が付着するのを見たことがある人はいませんでしたから」と話しています。

加えて、今回の発見は透過型電子顕微鏡がなければ見逃されていただろうとも話しました。

「もしかしたら汚染されていると誤認されたバクテリオファージの多くが、実はサテライトウイルスとヘルパーウイルス同士の合体の可能性がある」と氏は指摘します。

本研究の知見により、より多くのウイルス同士の合体が世界中で発見されるようになるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

UMBC team makes first-ever observation of a virus attaching to another virus https://umbc.edu/stories/first-observed-virus-attaching-to-another/ In world 1st, virus spotted attached to 2nd virus https://www.livescience.com/health/viruses-infections-disease/in-world-1st-virus-spotted-attached-to-2nd-virus

元論文

Simultaneous entry as an adaptation to virulence in a novel satellite-helper system infecting Streptomyces species https://www.nature.com/articles/s41396-023-01548-0
    Loading...
    アクセスランキング
    starthome_osusumegame_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.