「噛み合わせ」を調整すると脳や体の調子がよくなる? 医学的根拠から真相に迫る!

「顎がゆるめば、不調は改善される」(著:滝澤聡明)より


歯磨き粉はいる・いらないetc…相反する医療情報


 



 


テレビや新聞、雑誌にWEBサイト、私たちの周りには常に多くの情報が溢れかえっています。政治、経済、スポーツ、芸能……そして医療。


これだけ情報が氾濫していると、視聴者、そして患者さんたちは、非常に困惑するだろうなぁという場面にたびたび遭遇します。


たとえば、歯科医2人の歯磨きに関するこんな主張。


 


歯科医A「歯ブラシはこう持って、歯磨き粉はこれぐらい使って、すすぎは1回だけ!」


歯科医B「歯磨き粉はいらない、水だけで磨けばいい、口をすすぐときはしっかりと!」


 


同じ歯科医という職業でも、歯科医Aと歯科医Bの主張は相反していますね。


この2人はあくまで架空の存在ですが、実際にこれだけ意見が食い違うことも、まったくあり得ない話ではありません。


私も仕事柄たくさんの歯医者さんを見てきましたが、みなさんそれぞれ異なる信念のもと、歯科医の仕事に日々従事していらっしゃいます。


正直、納得できる意見もあれば、それはどうなの? と首をかしげたくなるような考え方もあり、全面的に肯定も否定もできない場面は多々あります。


 


9割の現代人はまともに噛めていない


 


ところで、当院に通っている患者さんを診ていると、ある問題に気づきます。

それは、きちんとものを噛めていない人が非常に多いことです。


 


口を閉じたときに左右がアンバランスだったり、


口の中を見ると歯の高さがバラバラだったり、


噛んだときに上下の歯と歯がほとんどふれていなかったり……


おそらく、9割以上の人が正しくものを噛めていないのではないでしょうか。


 


そのせいか、顔が歪んでいる方や姿勢が悪い方も多く、どこか表情も暗い印象を受けます。

そしてものをうまく噛めていない方の多くは、肩こりや頭痛、顎関節症など、身体の他の部分の不調も訴えています。


 


〝噛めない日本人〟が多い理由として、


「頬杖をつく癖によって正しい位置にあった歯が動いてしまった」


「治療の際に歯並びに段差ができてしまった」


「噛みしめすぎて歯が削られてしまった」


など、さまざまな要因が考えられます。


 


やわらかいものを好む現代の食生活や、寝不足によるストレスなども影響しているのでしょう。


現代の日本人は、直接的にも間接的にも、噛み合わせが悪くなるような生活に慣れてしまっているのです。


 


日本人の噛み合わせの悪さが解消されない理由


 


これだけ多くの〝噛めない日本人〟が蔓延しているにも関わらず、なぜ一向に解消されないのでしょうか?


それは私たち歯科医による噛み合わせの啓蒙が、まだまだ不十分であることに他なりません。


さらに冒頭の歯科医Aや歯科医Bのように、異なる主張がいくつもあることで、患者さんはますます混乱していきます。


噛み合わせに関しては、まだ科学的なエビデンスが得られていないことも多く、世間になかなか浸透していかないこの状態を前に、歯がゆさを感じずにはいられません。


 



 


噛み合わせによる身体への影響は?


 


それでも、私が信じているのは「歯や顎が整えば、身体は変わる」ということです。


それは患者さんの症例であったり、私自身が変化したことで実感したことでもあります。


 


「歯の噛み合わせがいいと脳が活性化される」ということは、近年さまざまな歯科医の先生が提唱しています。


テレビや雑誌でもたびたび取り上げられますし、プロのアスリートが試合中にガムを噛んでいるのはよく見る光景。


私も歯科医師の国家試験を受けるとき、集中力を高めるためにガムを噛みながら臨みました。


確かに咀嚼によって気持ちが安定し、長丁場の試験も無事に乗り越えることができました。頭の回転が良くなったかまではわかりませんが……。


 


噛み合わせさえ良くなれば、身体の不調は良くなるのか?


 


咀嚼が脳にどれくらい影響するのかというのは諸説あるので、一概に言うことはできませんが、みなさんに注意していただきたいのは


「噛み合わせさえ良くなれば、身体の不調は良くなる」


とあまり過信しないでほしい、ということです。


 


現在、日本は1年中ダイエットブームが起きているような状態ですが、これはやはりメディアの力が大きいですよね。


テレビ番組の企画でタレントが特定の食材を毎日食べ続け、1カ月で5キロ痩せた! となると、次の日その食材がスーパーの売り場から消えてしまう、なんてことも珍しくありません。


トマト、納豆、 きのこ、ショウガ……次々と新しい食材がダイエットにいい! と取り上げられ、 1カ月も経てば忘れ去られていく様子は少々異様に思えるほどです。


 


噛み合わせも同じで、


「噛み合わせを調整したら脳の働きが良くなった。見た目も若返り、肩こりや腰痛も改善された!」


とメディアがおもしろおかしく取り上げることがありますが、あまりそういう情報に囚われないでいただきたいです。


 


というのも、


こうした噛み合わせによる身体の改善例は、医学的に正しいデータが出ていないものがほとんど。


歯科学会ではあまり積極的に説いてはいないんです。


 


それなのに、メディアの情報を鵜吞みにして「歯を治せば身体の不調は全部治るんだ!」と考えてしまう人はとても多い。


歯科医の中でも「噛み合わせで内臓の疾患まで治った」という研究結果まで出すグループもあるのですが、正直な話、同業者としては眉唾ものだと思っています。


 



 


噛み合わせがすべてではない!


 


もちろん、噛み合わせが悪くなると身体全体のバランスが崩れるので、改善すれば良い影響が出るというのは決して間違った情報ではありません。


私も患者さんには噛み合わせの改善を積極的に勧めていますし、それによって実際に身体の不調が改善したという方もたくさん見てきました。


かといって、噛み合わせだけですべての疾患が治るわけではありません。

噛み合わせを含めてバランスのとれた生活をすることで健康的な身体は作られていきます。


だから「噛み合わせを治したのに、肩こりも腰痛も治らないぞ!」と歯医者さんにクレームをつけるのはお門違い。


みなさんにはその点を十分理解してほしいと思います。


 









『顎がゆるめば、不調は改善される』

(クロスメディア・マーケティング)






情報提供元: BUSINESS LIFE
記事名:「 「噛み合わせ」を調整すると脳や体の調子がよくなる? 医学的根拠から真相に迫る!
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