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「確信犯」の本来の意味、知っていますか?【正しい日本語解説Vol.41】

2023.03.23 07:40
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社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、実は本来と異なる意味で使っている人が多い「確信犯」ということばについて、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。

 

「確信犯」の本来の意味は?

確信犯」の本来の意味は、道徳的、宗教的または政治的な信念に基づいて、正しいことだと確信して行われる犯罪やその犯人のこと。例えば思想犯や政治犯、国事犯などが当てはまります。他の人から見たら暴力などの犯罪であっても、本人は悪いことではないと信じているのです。
【例】
彼は宗教的信念に基づく確信犯です。

7割近い人が本来とは違う意味で認識している

確信犯」の本来の意味は、上で説明した通りです。しかし、文化庁が平成27年度に行った「国語に関する世論調査」では、「確信犯」の意味を聞く質問に対して、本来の意味である「政治的・宗教的等の信念に基づいて正しいと信じてなされる行為・犯罪又はその行為を行う人」と答えた人は17.0%。本来の意味とは異なる「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 」と答えた人は69.4%で、後者を選ぶ人が圧倒的に多いという結果になりました。
では、7割近い人が選んだ「悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人 」という意味が間違っているのかというと、そうとも言い切れません。近年では複数の辞書で、俗に用いられる用法として紹介されています。
本来の意味の「確信犯」は、もともと法律に関係する学術用語として使われ始めました。しかし近年は「確信犯」の代わりに「テロリズム」、「テロ」、「テロリスト」などの言葉を使用するケースも多くなっています。本来の意味で「確信犯」という言葉を使うことが少なくなったことも、俗に用いられる用法で認識する人が増えた要因の一つかもしれません。

「確信犯」の使い方と類義語は?

確信犯」には本来の意味と、俗に用いられる用法の意味の2通りがあります。間違った意味で使っていると誤解を受けたくない場合は、必要に応じてここで紹介する類義語を使うとよいでしょう。
本来の意味で使いたい場合
道徳的、宗教的または政治的な信念に基づいて、正しいと確信して行われる犯罪やその犯人という意味で「確信犯」を使いたい場合は、どのような思想に基づいた行為なのかによって以下の言葉を使い分けましょう。
思想犯:現在の国家体制に相反する思想に基づく犯罪やその犯人。特に、特に、第二次大戦以前の治安維持法に触れた犯罪やその犯人。
政治犯:国の政治的な秩序を侵害する犯罪やその犯人。内乱罪や政治的騒乱罪などがこれに該当する。広くは、政治的な動機による犯罪やその犯人。
国事犯:政治犯と同じ。
 
俗に用いられる用法で使いたい場合
悪いことであると分かっていながらなされる行為・犯罪又はその行為を行う人という意味で「確信犯」を使いたい場合は、本来の意味との混同を避けるために「意図的」や「故意」、「作為的」、「わざと」などを使って表現するのがよいでしょう。
意図的:ある目的をもって、わざとそうするさま。
故意:わざとすること。また、その気持ち。自分の行為から何らかの結果が生じることをわかっていながら、行為に出る心情。刑法上は、罪となることを認識し、かつ結果の発生を意図または認容している場合のこと。
作為的:故意に行うさま。また、わざとらしさが目立つさま。
わざと:意図的に何かをするさま。故意に。ことさら。
 
監修:吉田裕子先生
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。
  • 吉田裕子先生の(株)裕泉堂 公式サイトはこちら
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