「おざなり」の意味
「おざなり」は、いい加減な言動という意味。いい加減な言動で対応するときに用います。
漢字では「御座形」と書きますが、これは「御座敷の形(なり)」を縮めたもの。19世紀初めに使われ始めたことばで、御座敷(宴会の席)などで形だけを取り繕った言動を指していたと考えられています。
【例】
先日入った蕎麦屋のおざなりな対応には、腹が立った。
「なおざり」の意味
「なおざり」も、いい加減な言動という意味。いい加減な言動で、何も対応しないときに用います。
10世紀には既に使用例のある古い言葉ですが、語源をたどると「なほ(直・猶)+去り」という説があります。「なほ」は何もせずそのままという意味、「去り」は遠ざけるという意味なので、「そのまま何もせず、遠ざけておく(放っておく)」という意味で使われていたと考えられます。
【例】
住民の意見はなおざりにされていて、いまだに何も改善が見られない。
「おざなり」と「なおざり」の使い分け方
「おざなり」と「なおざり」の違いは、何らかの対応をするかどうか。「おざなり」はいい加減ではありながら何らかの対応をするのに対し、「なおざり」は何の対応もしません。
従って、次の文章はそれぞれ別の意味になります。
従業員の意見はおざなりにされている。
意味:従業員の意見はいい加減に対応されている
従業員の意見はなおざりにされている。
意味:従業員の意見は何も対応がされていない
言葉が似ていて覚えづらい、という場合はなおざりの「ざり」に注目するとよいでしょう。これは漢字では「去り」にあたる意味を持ち、「置き去り」の「去り」と同じニュアンスの言葉です。「去り」の何もしない、放っておくという意味を覚えていれば、「なおざり=何の対応もしない」と覚えやすくなります。
【クイズ】より適切なのはどっち?
【答え】
1→おざなり
2→なおざり
1の正解はおざなり。「説明をされた」とあり、対応されていることがわかるので、「おざなり」が適切です。
2の正解はなおざり。「何も対応してもらえなかった」とあるので、「なおざり」が適切です。
監修:吉田裕子先生
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。
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