京都では新緑の季節を迎えると、鮮やかな青紫色のカキツバタが咲きはじめます。そのしっとりとした姿が群生する光景は、いかにも和のイメージ。寺社や庭園の池の水辺によく映えます。そこで今回は、新緑の季節に訪れたいおすすめの10カ所をご紹介します。あわせて、よく似た姿のアヤメや花菖蒲(はなしょうぶ)との簡単な見分け方も解説します。

Yoshihide KIMURA/shutterstock.com

「カキツバタ」とは?アヤメや花菖蒲との簡単な見分け方




カキツバタ F_studio/shutterstock.com

平安初期の歌人・在原業平が『伊勢物語』の中で、三河国八橋(現愛知県知立市)でカキツバタが美しく咲く姿を見て歌を詠みます。

「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」
(唐衣を着慣れるように、慣れ親しんだ妻が都にいるので、遥かここまでやって来た旅のわびしさを身に沁みて感じることだ)

また、江戸時代の画家・尾形光琳による屏風絵「燕子花図(かきつばたず)」でも知られていますね。

このようにカキツバタは歴史ある花で、江戸時代初期には既に多くの品種があり、観賞用として親しまれていました。花の汁は衣を染める染料として用いられていたそうです。


花菖蒲 yyama/shutterstock.com

よく似た植物に、花菖蒲とアヤメがあります。カキツバタと一緒に咲くスポットも多いのですが、違いがわからない人も多いかもしれませんよね。


アヤメ Snezana Vasiljevic/shutterstock.com

簡単に区別する方法は、花びらの根元にある模様の違いに注目することです。カキツバタは白、花菖蒲は黄色、アヤメは網目状。

また、カキツバタと花菖蒲は湿地や水辺、アヤメは乾燥した土を好み、開花時期はカキツバタは5月中~下旬で、花菖蒲は6月に入ってから、アヤメは5月上旬。高さはカキツバタ(50cm~70cm)、花菖蒲(80cm~100cm)、アヤメ(50cm~60cm)。まずは根元を見ると違いは一目瞭然ですよ。

カキツバタ・花菖蒲・アヤメの違い
【カキツバタ】花の根本:白/場所:湿地や水辺/開花:5月中~下旬/高さ:50cm~70cm
【花菖蒲】花の根本:黄色/場所:湿地や水辺/開花:6月/高さ:80cm~100cm
【アヤメ】花の根本:網目状/場所:乾燥した土/開花:5月上旬/高さ:50cm~60cm


【大田神社】天然記念物に指定された名所




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「大田(おおた)神社」は、上賀茂神社から東へ800mほどの場所に鎮座する摂社です。928年の延喜式にも名を遺す古い歴史があります。天鈿女命(あめのうずめのみこと)を祀り、芸能上達や長寿福徳のご利益があるとされています。

参道東側の大田ノ沢に2万5千株あるといわれるカキツバタの群生で知られ、国の天然記念物に指定されています。1万年以上前からの湿原地帯の名残で、5月上~中旬には濃紫色の花が一面に咲き誇ります。平安時代には藤原俊成が「神山や大田の沢のかきつばた ふかきたのみは色に見ゆらむ」と詠んだほどの歴史ある名所です。

【場所】参道東側・太田ノ沢
【見頃】5月上~中旬

大田神社
住所:京都市北区上賀茂本山340
アクセス:地下鉄「北山」駅下車、タクシーなどで約5分、市バス「上賀茂神社前」下車、徒歩約10分
営業時間:9:30~17:00頃
拝観料:境内自由(4月下~5月中旬 カキツバタ育成協力金300円)
定休日:無休
TEL:075-781-0907
URL:https://www.kamigamojinja.jp/shaden/oota/


【金閣寺(鹿苑寺)】金閣に青紫がよく映える




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臨済宗相国寺派の塔頭「金閣寺(正式名称は鹿苑寺・ろくおんじ)」は、1397年(応永4年)に室町幕府三代将軍の足利義満が建立。舎利殿「金閣」で知られていますよね。

宝形造りの三層殿閣で、1950年(昭和25年)に放火で焼け、1955年(昭和30年)に再建。1994年(平成6年)「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録されました。

境内にある特別名勝・特別史跡の池泉回遊式庭園「鏡湖池(きょうこち)」の池畔にカキツバタが青紫色の花を咲かせます。見頃は5月上~下旬頃。鏡湖池と池に浮かぶ葦原島(あしはらじま)、金閣、方丈との光景が美しく、散策しながら撮影を楽しめますよ。

【場所】池泉回遊式庭園・鏡湖池(きょうこち)
【見頃】5月上~下旬

金閣寺(鹿苑寺)
住所:京都市北区金閣寺町1
TEL:075-461-0013
参拝時間:9:00~17:00
年中無休 ※特別拝観時は時間が異なることがあります
参拝料金:大人(高校生以上)400円、小・中学生300円
アクセス:京都市バス「金閣寺道」下車
URL:https://www.shokoku-ji.jp/kinkakuji/


【平安神宮 神苑】蒼龍池と飛び石との光景が美しい



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※画像は花菖蒲です

平安遷都1100年を記念し、1895年(明治28年)に平安京の大内裏を模して造営された「平安神宮」。平安京に遷都して最初の桓武天皇と、平安京最後の孝明天皇を祀ります。7代目・小川治兵衛が20年以上かけて手がけた明治期の名園「神苑」は、国の名勝に指定されています。

約10,000坪と広大な池泉回遊式庭園の「神苑」では、5月上~下旬にカキツバタが見頃を迎えます。中神苑にある蒼龍池周辺には約1,000株のカキツバタが植えられ、青紫色の花を咲かせます。蒼龍池や珊瑚島へと続く飛び石の臥龍橋との光景が美しく、撮影スポットとして人気。6月上旬からは花菖蒲の季節です。

【場所】池泉回遊式庭園・神苑
【見頃】5月上~下旬

平安神宮 神苑
住所:京都市左京区岡崎西天王町97
TEL:075-761-0221
アクセス:市バス「岡崎公園 美術館・平安神宮前」「岡崎公園 ロームシアター京都・みやこめっせ前」下車北へ徒歩約5分、地下鉄東西線「東山駅」下車1番出口より徒歩約10分
定休日:10月22日午後
TEL:075-761-0221
拝観時間:3月15日~9月30日 8:30~18:00(入苑は17:30まで)
拝観料金:大人600円、小人300円
URL:http://www.heianjingu.or.jp/


【円山公園】孔雀のように華やかな色合い



円山公園のカキツバタ
(C)JTB Photo/Photolibrary

祇園にほど近い八坂神社の東、東山の麓にある、1886年(明治19)に開設された京都市最古の「円山(まるやま)公園」。約86,600平方メートルの広々とした園内には、回遊式日本庭園を中心に料亭や茶店が点在し、特にしだれ桜の名所として知られています。

桜の見頃が過ぎて間もなく5月上旬頃には、しだれ桜の東側にあるひょうたん池のカキツバタが見頃を迎えます。1912年(大正元年)に庭師・小川治兵衛により作庭された池泉回遊式の日本庭園に、青紫色の花が美しく映えます。鮮やかな紫に白い刷毛目が入った舞孔雀(まいくじゃく)、その名の通り孔雀の羽を思わせる孔雀の羽という種類が植えられています。

【場所】ひょうたん池
【見頃】5月上旬

円山公園
住所:京都市東山区円山町473他
TEL:075-643-5405
定休日:年中無休
営業時間:常時自由
料金:無料
アクセス:市バス「祇園」下車、京阪「祇園四条駅」下車徒歩約10分、地下鉄東西線「東山」駅下車徒歩約15分、阪急「河原町駅」から徒歩約14分
URL:https://kyoto-maruyama-park.jp/


【龍安寺】禅寺で愛でる優雅な光景



1450年(宝徳2年)、細川勝元が徳大寺家の山荘を譲り受け、妙心寺の義天和尚を開山とし創建された禅寺の名刹「龍安寺(りょうあんじ)」。白砂に15個の石を配した「虎の児渡しの庭」と呼ばれる枯山水の方丈庭園(史跡・特別名勝)で有名です。どの角度から見ても石が一つ隠れてしまい、14個しか見えないという禅寺らしい謎のある庭。1994年(平成6年)「古都京都の文化財」として世界文化遺産に登録されました。

境内にある「鏡容池(きょうようち)」には紫と白のカキツバタが花開きます。5月上旬が見頃で、赤、白、黄色とカラフルな睡蓮との華やかな競演を楽しめます。平安時代には公家たちがこの池に船を浮かべて、歌舞音曲を楽しんでいたというから優雅ですよね。参道の青紅葉も美しい季節です。

【場所】鏡容池(きょうようち)
【見頃】5月上旬

龍安寺
住所:京都市右京区龍安寺御陵下町13
TEL:075-463-2216
拝観時間:3月1日~11月30日 8:00~17:00
12月1日~2月末日 8:30~16:30
拝観料:大人・高校生500円、小・中学生300円
アクセス:市バス「龍安寺駅」下車すぐ、京福電鉄「龍安寺駅」下車徒歩約7分
URL:http://www.ryoanji.jp/


【勧修寺】花菖蒲や睡蓮との華やかな競演を楽しめる




Yoshihide KIMURA/shutterstock.com

真言宗山階派大本山の「勧修寺(かじゅうじ)」は、900年(昌泰3年)に醍醐天皇が生母・藤原胤子を供養するために創建しました。皇室や藤原家の信仰を集め、門跡寺院としての格式を誇ります。水戸光圀が寄進したとされる勧修寺灯籠や樹齢750年を超えるハイビャクシンでも知られています。

約20,000平方メートルもの池泉回遊式庭園(京都市指定の名勝庭園)にある「氷室(ひむろ)の池」では、5月上~下旬にカキツバタを愛でることができます。初夏に咲く花菖蒲、睡蓮とのしっとりと華やかな光景を楽しめるのもうれしいですね。

【場所】氷室(ひむろ)の池
【見頃】5月上~5月下旬

勧修寺
住所:京都市山科区勧修寺仁王堂町27-6
TEL:075-571-0048
拝観時間:9:00~16:30(受付終了16:00)
定休日:年中無休
拝観料:400円
アクセス:地下鉄東西線「小野駅」下車、徒歩西へ約6分


【梅宮大社】アヤメとともに愛でられる




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建立は奈良時代の750年頃と伝えられる古社「梅宮(うめのみや)大社」は、酒造りの神、子授けと安産の神を祀り、篤い信仰を集めています。本殿横の「またげ石」をまたぐと、子宝が授かると伝わります。また、その名の通り梅の名所です。

古来この地は湿地が多く、カキツバタが自生していたそうです。現在のものは東神苑の池の中に植えられ、古くから親しまれています。梅宮紅という品種など約10種が、4月上旬~5月中旬まで咲き誇ります。見頃の5月上旬には、同じ時期に咲くアヤメとともに楽しめますよ。

【場所】東神苑の池
【見頃】4月上~5月中旬

梅宮大社
住所:京都市右京区梅津フケノ川町30
TEL: 075-861-2730
【神苑】
拝観時間:9:00~17:00
料金:大人600円、小人400円
URL:http://www.umenomiya.or.jp/


【長岡天満宮】アヤメ、花菖蒲、睡蓮との競演



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※画像はアヤメです

平城京から都を移した長岡京が造営された地にあり、都の西南に位置する「長岡天満宮」。平安時代に学問の神様・菅原道真が、六歌仙の一人である在原業平とともにこの地で詩歌管弦を楽しんでいたと伝わります。道真公が九州の大宰府に左遷された時、名残を惜しんで木像を祀ったのが起源。創立年は不明ですが、応仁の乱で社殿が焼失し、1498年(明応7年)に再建したと記録に残ります。

1638年(寛永15年)に八条宮智忠親王により築造された「八条が池」西池北東側には、カキツバタ園があります。約100株が植えられ、見頃は5月中旬~6月上旬。時季によっては、アヤメ、花菖蒲、睡蓮と一緒に愛でることができます。

【場所】カキツバタ園
【見頃】5月中旬~6月上旬

長岡天満宮
住所: 長岡京市天神2-15-13
TEL:075-951-1025
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:境内自由
専用駐車場:第1駐車場 最初40分無料、以降30分毎に100円
第2駐車場:30分毎に100円(1日最大600円) ※ご祈祷を受ける場合は2時間まで無料 ※春の観光シーズンと正月期間は特別料金
アクセス:JR東海道線「長岡京駅」下車西口より徒歩約20分(タクシー、バスあり)、阪急京都線「長岡天神」駅下車西口より徒歩約10分(タクシー、バスあり)
URL:https://nagaokatenmangu.or.jp/


【浄瑠璃寺】極楽浄土を表した庭園に咲く



京都府の南部に位置する木津川(きづがわ)市、奈良県との県境にほど近い場所に「浄瑠璃寺(じょうるりじ)」はあります。創建は8世紀とも11世紀ともいわれますが、本堂の阿弥陀堂は1107年(嘉永2年)の建立。

本堂に9体の阿弥陀仏を安置した堂は、京都を中心に30以上あったといわれていますが、現存するのはこちらのみ。九体阿弥陀如来坐像、四天王立像、本堂、三重塔は国宝です。秘仏・吉祥天女像(重要文化財)は期間限定で開帳されます。

梵字の阿字を模ったといわれる池を中心に、東に薬師仏、西に阿弥陀仏を配した庭園は極楽世界をこの世に表わしたものです。この史跡・特別名勝の庭園では、5月上旬からカキツバタを愛でることができます。時季によってはアヤメや花菖蒲とともに楽しめますよ。

【場所】庭園
【見頃】5月上旬~

浄瑠璃寺
住所:木津川市加茂町西小札場40
TEL:0774-76-2390
開門時間:9:00~17:00 ※本堂拝観受付は16:30まで(12~2月は10:00~16:00、本堂拝観受付は15:30まで)
拝観料:400円(中学生以上)
URL:https://www.0774.or.jp/temple/jyoruriji.html


【深泥池】珍しい白いカキツバタが群生



京都市北部にある「深泥池(みどろがいけ・みぞろがいけ)」は、周囲1.5km、面積9ヘクタールの小さな池です。氷河期以来の動植物が今も生き続け、水生植物、昆虫、魚類、野鳥などがおり、それらを保護するために1927年(昭和2年)、国の天然記念物に指定されました。

池の中央に広がる浮島には池内の植物の大部分が生育し、多くの小動物もここで育ちます。珍しく白いカキツバタが咲き、ほど近い大田神社に咲く青紫色のカキツバタと見比べると、鮮やかな色のコントラストを楽しめます。

【場所】深泥池(みどろがいけ・みぞろがいけ)浮島

深泥池
住所:京都市北区上賀茂深泥池町67-1
アクセス:市バス・京都バス「深泥池」下車すぐ





今回は、京都でカキツバタを楽しめるスポットを厳選して10カ所紹介しました。歴史ある神社仏閣や史跡とのコントラストが美しいスポットもたくさん。あなたもお気に入りの場所を見つけてカキツバタを愛でてくださいね。