はじめに
全国には一説によると30万もの奇祭があるといわれています。今回は、その中でも日本に古くから伝わるお祭り3つをご紹介。「捕まったら災いがもたらされる」岡山の護法祭や、迫力満点の長野の「巨木の木落し」など、祭りの一端を聞くだけで背筋がゾクゾクしてしまいます。この夏行われるものもあるので、気になる方はぜひ足を運んで、その全貌を確認してみては。
捕まる恐怖! ゴーサマに追われる「護法祭」(岡山)
まずはじめに紹介するのは、岡山県美咲町にある両山寺で毎年8月14日の深夜に行われる「護法祭」。地元では「ゴーサマ」と呼ばれているお祭りで、真言密教と修験道が融合した全国でも珍しい奇祭です。祭りのクライマックスでは、護法実(ごぼうざね、通称ゴーサマ)と呼ばれる二上山の鎮守神である護法善神が自分の治める土地を自由に遊びまわり、天下泰平・五穀豊穣・伽藍安穏などを願う儀式が行われます。
半紙で作られた紙手(しで)と呼ばれる帽子状の幣をかぶったゴーサマが、境内を走りまわるのですが、そのお遊びを邪魔したり、不敬を働くと捕まえられるのだそう! 「ゴーサマに捕まった人には災いがもたらされる」と考えられているため、ゴーサマがこちらに向かって走って来ると、悲鳴を上げて走り回る人もいるなど、それだけで恐怖と迫力に包まれます。
毎年400人以上が集まるという「護法祭」は、鎌倉時代から続く祭りで、県の重要無形民俗文化財に指定されています。興味のある方は足を運んでみては。
■護法祭
場所:両山寺(岡山県久米郡美咲町両山寺454)
開催日時:毎年8月14日深夜
電話:0868-68-0011(両山寺)
カオスすぎて驚愕! 己を祭る「セルフ祭」(大阪)
続いて紹介するのは、大阪市浪速区、通天閣近くの商店街「新世界市場」で行われている奇祭「セルフ祭」。キャッチフレーズが「己を祭る」とだけあって、誰でも参加可能。思い思いに自分を表現している参加者の姿の様子はまさに「何でもあり!」のカオスな世界です。
祭は参加者が“己“を表現した奇抜な仮装を身につけて並ぶ「人並べの儀式」と「ふんどしテープカット」からスタート。仮装散歩やショーのほか、終盤ではインド相撲にUFOや宇宙人を呼ぶ儀式など、摩訶不思議なイベントが執り行われて幕を閉じます。
そのほか会場には各々が自己表現する出店が並び、「セルフ仮装屋さん」「おじいちゃんとお風呂に入る無料アトラクション」「路上針治療」など、参加者の“表現したい”という思いが前面にあふれた会場になっています。
初めて参加する人でも自我を脱ぎ捨てやすいように、衣装やドーランも常備されています。会場の雰囲気も相まって、普段は人目を気にして生きているあなたも自己を解放することができるかも!? ぜひ、会場で己を爆発させてみてはいかがでしょう。
■セルフ祭
場所:新世界市場(大阪市浪速区恵美須東1-22-8)
開催日時:2019年9月14(土)、15(日)
問合せ先:self.yes.self@gmail.com
7年に1度開催される天下の大祭! 「御柱祭」(長野)
7年目毎の寅と申の年にだけ長野県・諏訪大社の「御柱(おんばしら)祭」。この祭りでは、山から切り出した巨木を1本につき1000~3000人氏子が人力で里まで曳き出します。諏訪大社の御宝殿の造り替えとともに、御柱を建て替えるという一連の行事が「御柱祭」と呼ばれ、織田信長によって上社が焼き打ちされた時も、太平洋戦争の最中にも途絶えたことがない、まさに執念のお祭りです。
御柱は、長さが約17m、直径約1m、重さ約10トンもある巨木。柱を山から里へ引き出す「山出し」が4月に、神社までの道中を曳いて各社殿の四隅に建てる「里曳き」が5月中旬から、諏訪大社の上社(諏訪市・茅野市)と下社(下諏訪町)それぞれの場所で行われます。
上社の「山出し」では、雪解け水に清められながら宮川を渡る「川越し」が行われます。
下社の「山出し」では斜度27度もある坂を、大勢の若者を乗せたまま滑り降りる「木落し」が行われます。土煙を挙げながら猛然と巨木が滑り落ちる様子は迫力満点です。「御柱祭」の中でも特に難所としてしられている「木落し」は、数か月にわたって行われる祭りの中でもハイライトと呼べる行事です。その一瞬に命がけで滑り降りる様子は、男たちの勇敢さが際立つ瞬間。毎回テレビ中継も出るほどの人気の祭りとなっています。
こちらは5月中旬に行われる下社の「里曳き」の様子です。「里曳き」は騎馬行列や花花笠踊りなどもありとても華やかな雰囲気に包まれます。
■御柱祭
場所:諏訪大社 上社本宮(長野県諏訪市中洲宮山1)、諏訪大社 上社前宮(長野県茅野市宮川2030)、諏訪大社 下社秋宮(長野県諏訪郡下諏訪町5828)、諏訪大社 下社春宮(長野県諏訪郡下諏訪町193)
次回開催日時:2022年4月、5月
問合せ先:諏訪地方観光連盟 御柱祭観光情報センター(諏訪市役所経済部観光課内)
TEL:0266-58-1123
おわりに
迫りくる恐怖や迫力に包まれるほか、参加者が愕然としてしまうような奇をてらった祭りの数々。生で見るとそのインパクトは絶大です。ぜひ次の旅の目的のひとつに加えてみては。