はじめに
クロアチアにある「別れの博物館」は、愛する人との何らかの関係が終わりを迎えた時、その時間を思い出すようなアイテムとそれにまつわるお話を一般の方から募り展示する、博物館です。この博物館の創設者は4年間恋愛関係にあった元カップル。共に過ごした大事な時間を心の奥底に仕舞い込まず、「思い出の品物とお話」を展示してみてはどうだろう、と考え、2006年小さなコンテナからスタートしました。 “別れの経験を共有する”というコンセプトに、世界中から共感の輪が広がり、これまでに世界29ヶ国、45都市を巡回しています。
そんな展示が、ついに日本初上陸。展示は3月31日(土)からスタートする予定です。
世界29カ国、45都市を巡回中
コンテナからスタートした「別れの博物館」は11年間で世界中を巡る博物館へと成長し続けています。これまでに29カ国、45都市を巡回し、来場客数は30万人を越えています。
アジアでは2009年にフィリピン、シンガポール、2016年は韓国と台湾で開催。台湾は2015年、2016年と連続で開催されました。2018年は、日本(3月31日~4月14日)とノルウェー(3月1日~8月31日)での開催が決定しています。
当時フィルムプロデューサーだったオリンカと、アーティストのドラジェン。二人が4年間の恋愛関係に終止符を打ち、共に過ごした大事な時間を象徴する「思い出の品々」を小さなコンテナに展示したことからスタートしました。
「失恋博物館」から「別れの博物館」へ
2006年からスタートしたMuseum of Broken Relationshipsはこれまで、「失恋博物館」と訳されていました。創設者同士の“失恋”がきっかけだったのと、実際、恋愛にまつわる“恋の遺品”が多く集まっていたからです。
しかし、クロアチアは1991年から1995年、旧ユーゴスラビアからの独立に伴い内戦地となっていた背景から、年月を重ねていくうちに世界中から戦争で離れ離れになった人から品物が届くようになりました。恋愛以外の“別れ”の品物も多く寄贈されるようになり、文化や地域、そして社会と離れてしまった人たち、友人・家族と別れてしまった人たちなどからも品物が届くように。
こういった事柄から、「失恋博物館」ではなく、「別れの博物館」として展示会を開催する運びとなりました。
現在「Museum of Broken Relationships」はザグレブの旧市街にあり、観光名所としても名高い13世紀に建立されたカトリック教会「聖マルコ教会」のすぐ近くにあります。連日、世界中の観光客が訪れる人気スポットです。
台北では「華山1914文創園区」のアートスペースで、2013年9月に開催。さらに翌年は人気観光スポットである「中山記念堂」にて開催されました。
ロンドンでは劇場が会場に。オランダでは教会、マケドニア共和国は郵便局と、個性的な場所で開催しているのもこの博物館の特徴です。文化施設の背景と、個人が抱える別れの物語が繋がり、他にはない展示空間が広がります。
すべての展示品は一般の方からの寄付された「品物とお話」
ここに展示されているものは、有名なアート作品でもなければ、歴史的価値のある絵画でもありません。毎日の生活の中で何気なく使っていたもの、記念日に贈られたもの、愛する人が残していったものなど、人が生きてきた時間の痕跡そのもの。そしてその人生の中に確かに存在した「別れ」を展示します。
展示作品は一般の方々から募り、元カップルであった創設者2名が選定をし、展示する予定です。
展示の一例/二つの小さな置物(ダブリン、アイルランド)
この二つの小さな置物は私の二人の子供を象徴しています。今では二人とも30代なので、この置物にも住処を与えてあげたいと思いました。 1980年、私はイギリスで傷心の日々を送っていました。夫の激しい感情の起伏に耐えられなくなっていたのです。長女が巻き添えをくらうようになり、私はただ子供たちの安全を考えることに必死でした。私たちは冬の寒い夜、彼には何も知らせず家を飛び出し、アイルランドに向かう船に乗り込みました。着の身着のままで出てきました。皮肉なことに長女はひどく動揺していました。彼女にとって「パパを置いていく」ことは耐え難いことだったのです。何年かして、新しい生活にも慣れた頃、その時の可愛い娘たちの姿を記憶に留めておくためにこの小さな置物を買いました。長女は父親に手紙を書くのが好きで、次女は手編みのものを送りました。土台の裏を見てください。「冬をあたたかく過ごせますように」 「お父さんは私たちのことを忘れない」と書いてあります。彼の気性の荒さは変わっていませんが、娘たちは父親と連絡を取り合っています。 このような機会を与えてくださりありがとうございます。
日本開催の会場は廃校となった旧練成中学校「アーツ千代田 3331」
展示会場は千代田区の旧練成中学校の校舎を再利用したアートセンター「アーツ千代田 3331」のメインギャラリー。アートギャラリー、オフィス、カフェなどが入居し、文化的活動の新しい拠点として利用されています。大切な人との関係が終わりを迎えた際に、残された品物とその背景の物語を共に展示する「別れの博物館」にぴったりのギャラリーです。
◆「別れの博物館」あなたとわたしのお別れ展
会期:2018年3月31日(土)〜 4月14日(土)
会場:アーツ千代田3331 メインギャラリー(東京都千代田区外神田6丁目11-14)
入場料:一般1,300円/大学生1,000円/中高生500円/小学生以下無料
主催:株式会社 カネコ・アンド・アソシエイツ・ジャパン
協力:クロアチア共和国大使館
おわりに
館内には品物が展示されているだけでなく、関連するエピソードも添えられています。その品物にどんな別れがあったのか、さまざまな人の人生を垣間見ることで、あなたの心にもなにか響くものがあるかもしれません。