はじめに
お店に置いてあるのは、2種類の中華菓子のみ。その商品展開に作り手の矜恃を感じる「皇上不上朝」。台南で展開しているブランドで、香港式のミニ月餅「流心餅」とメロンパン皮のパイ「菠蘿蛋黃酥」を提供しています。ブランド名の「皇上不上朝」とは、直訳すると“皇帝は朝廷に行かない”。つまり“皇帝は休暇中”とでもいった意味。命名したのは、親会社の「艾塔菲食品」の創業者・黃智龍氏。突然のひらめきで決めたといいますが、その名のユニークさと、一度食べたらとりこになる味わいが評判です。シンプルなルックスはヘルシーさの証。甘さと油分を控えた中華スイーツ。
実はこのブランド、同じく台南で人気の焼き菓子店「狸小路手作烘焙」とはきょうだい関係。ともに「艾塔菲食品」がプロデュースしていて、糖分と油分を抑え、色素による不必要なデコレーションはせず、風味アップのための香料を加えない…というこだわりをこの「皇上不上朝」でも貫いています。賞味期限は短くなりますが、体への負担が少ない。ヘルシーな中華スイーツを提供しています。とろりと溢れ出すクリーム、甘いじょっぱい味わいが癖になる香港風の月餅。
ころんとした小さな月餅「流心餅」。表面の「皇上不上朝」の文字が目を引く外皮は、香港式でしっとり柔らか。香よい皮を一口噛めば、中から滑らかな舌ざわりの濃厚なバタークリームがとろりと溢れ出します。そして、金色のクリームと共に塩漬け卵黄がお目見え。口の中で甘みと塩気が混じり合う、クラシカルな香港式月餅の多層的な味わいが楽しめます。かすかな塩漬け卵黄の後味が次の一口を誘い、また一口と止められなくなる美味しさ。アヒルの卵黄の塩漬けを3種のペーストで包んだ中華パイ。
艶やかな黄金色のクッキー皮にメロンを模した格子模様…もうひとつの商品「菠蘿蛋黃酥」は、塩漬けのアヒルの卵黄入りのあんを味わう中華風のパイ。こちらは三種のフレーバーがラインナップ。「御賜奶皇」は、バターを効かせた濃厚で滑らかな甘じょっぱいあん。正統派の「御賜芋魁」の中には、香り高いタロイモペーストがたっぷり。「御賜相思子」は、わずかな粒感を残した、程よい甘さの豆ペースト入り。いずれも素材の味わいの余韻が食欲をそそり、後を引く中華スイーツです。台南らしさ満点。路面店は、古い建築の良さを活かしたレトロな雰囲気。
ブランドのシンボルとなる路面店は、中西区の路地に作られています。歴史ある古い建物に少しだけ手を加え、元の姿を残した状態で活用。原木の梁、素朴な質感の土壁が目を引く空間に、特大のドライフラワーを飾ることでよりレトロな雰囲気に。他にも多くの古物や骨董を配して、時代感を演出しています。“皇上”が鎮座する玄関は、撮影スポットとして大人気。
玄関先には、ブランドキャラクターの“皇上”人形が鎮座。皇帝がリラックスした佇まいなのは、休暇中だから!? 雰囲気ある外観とのコントラストもユニークで、ホットな撮影スポットとなっています。また、店内では“奉茶”といわれる、台湾ならではのお茶の無料サービスも。クリームがとろけ出す「流心餅」や焼き立ての「菠蘿蛋黃酥」を頬張りながら、歴史あるディスプレイを眺め、悠久の時の流れを感じるひとときを楽しんでください。「狸小路手作烘焙」でも購入可能。話が弾むギフトボックスも高得点!
この中西区の路面店「台南中山門市」に立ち寄るのが難しいときは、「狸小路手作烘焙」へ。すべての支店で「皇上不上朝」の商品を購入することができます。品質の保持には細心の注意を払っていて、「菠蘿蛋黃酥」は個包装で、中には脱酸素剤を封入しているので、薬剤の窓が紫色に変わっていなければ密封されている証。もしも開封前の商品の脱酸素剤が紫色に変わっていたなら、お店に連絡すれば新品と交換してもらえるなど、安心して食べられる配慮がそこここに。中秋節シーズンには、お月様のイラスト入りの特別パッケージで発売するなど、ギフトボックスのデザインも好評。コミカルな“皇上”のイラストが描かれたパッケージは、贈り先での会話が弾むこと請け合い。台南みやげの入手先として、リストに加えておきたいショップといえそうです。
◆皇上不上朝 台南中山門市
住所:台南市中西區中山路82巷8號
電話:+886-6-223-1808、+886-0933-983-950