はじめに
イルカやアシカなど海獣たちのショー(パフォーマンス)は、水族館ならではの楽しみの1つです。かつてはサーカスの動物による曲芸のように思われていましたが、近年そのイメージは大きく変わりました。現代の海獣パフォーマンスを観れば、野生生物と人との間に交わされるコミュニケーションの深さに驚き、海獣たちの優しさに心を動かされることでしょう。
Text&Photo:中村元(水族館プロデューサー)
ショーの見どころは海獣たちのコミュニケーション
海獣たちの多くは、自然の海や海岸で出会っても、人を攻撃することも逃げることもありません。種類の違う海獣同士でも争わず、一緒に狩りをすることもあります。そんな海獣たちのコミュニケーション能力の高さに感動するショーを7つ、ご紹介します。
①感動で涙する女性続出のイルカショー「アドベンチャーワールド」(和歌山県)
『全国水族館ガイド125』(講談社)の海獣パフォーマンスのランキングでも「飛び抜けて日本一!」 と断言したほどのイルカショー。広いプールに10頭以上のイルカたちとトレーナーが舞い泳ぎます。そのプログラムは、規模、スピード感、ストーリー性など全て完璧で、フィナーレには感動で涙する女性が続出するほど。
イルカたちのパフォーマンスだけでなく、イルカと意思を確認し合い演技するトレーナーたちのキビキビとした動作、そしてなによりもこぼれるほどの笑顔から、イルカたちへの愛を感じずにはいられません。
◆アドベンチャーワールド
和歌山県西牟婁郡白浜町堅田2399
②シャチの巨体がトレーナーと戯れるレジェンドショー「鴨川シーワールド」(千葉県)
女性イルカトレーナーの多くが、ここのシャチパフォーマンスを観てトレーナーへの道を歩み始めたというほどのレジェンドショー。英語で「キラー・ホエール」とも呼ばれる巨体シャチが、トレーナーと心を通わせて、空高く放り投げるパフォーマンスには誰もが感動します。
シロイルカの水中パフォーマンスも「鴨川シーワールド」で生まれた新しいショーの形です。目隠しをしたまま障害物を避けてみせるなど、鯨類のエコーロケーション(※)というソナー能力を活かしたショーは、巨体のシロイルカとダイバーのトレーナーによって静かに進んでいきます。シロイルカならではの豊かなコミュニケーション能力を実感することができます。
※エコーロケーション:音の反響によってエサやモノなど周囲を"見る"ことができたり、仲間とのコミュニケーションをとる能力
◆鴨川シーワールド
千葉県鴨川市東町1464-18
③泣く子続出の柵無し海獣ショー「伊勢シーパラダイス」(三重県)
世界で初めて柵無しふれあいショーを始めた水族館です。巨体のセイウチやトドが観覧広場に出てきて吠えれば、小さな子どもは大泣きするほどの迫力ですが、絶対に人を傷つけたりしませんのでご安心を。セイウチがお客さんのお尻を叩く「闘魂注入厄落とし」が超人気。選ばれるためには、元気に手を挙げて大声でアピールしてみて!
かわいらしいカワウソとの握手もこの「伊勢シーパラダイス」が発祥の地。コツメカワウソよりも大型で存在感のあるツメナシカワウソは、その握手と愛らしい表情で、全国の動物園水族館で競った「カワウソゥ選挙」を2連覇したほどです。
◆伊勢シーパラダイス
三重県伊勢市二見町江580
④イルカショーを水塊で観る水中観覧室「名古屋港水族館」(愛知県)
「名古屋港水族館」のイルカショープールは世界最大級! パフォーマンスの花形といえるイルカやシャチのジャンプの距離はもちろん見物なのですが、私のお気に入りは水中観覧室。イルカが水中にトレーナーを連れて潜る姿に感動します。酷暑でも涼しさを感じさせてくれる水塊の観覧は、真夏にこそおすすめしたいパフォーマンスです。
◆名古屋港水族館
愛知県名古屋市港区港町1-3
⑤遊び好きシロイルカの得意技・幸せのリング「しまね海洋館アクアス」(島根県)
「しまね海洋館アクアス」のシロイルカはバブルリング遊びをショーに取り入れたことで大人気になりました。その後、バブルリングの技はどんどん進化して、今ではこんなに大きな輪っかを作ってくぐるという遊びまで見せてくれます。名付けて「幸せの縁ミラクルリング」だそう。
◆しまね海洋館アクアス
島根県浜田市久代町1117-2
⑥シロイルカの表情豊かな顔に癒やされる「八景島シーパラダイス」(神奈川県)
派手なジャンプこそしませんが、大きく真っ白な身体に現れる表情がとっても豊かで優しさにあふれているのがシロイルカの魅力。「八景島シーパラダイス」は、2千人を収容可能な巨大なアクアスタジアムを持っていますが、他のイルカと同じように、その巨大プールでパフォーマンスを見せてくれます。トレーナーとの絆が遠目にも伝わってきて、癒されること間違いありません。
◆八景島シーパラダイス
神奈川県横浜市金沢区八景島
⑦夏限定のアシカのびちょびちょ大作戦で童心に!「サンシャイン水族館」(東京都)
アシカのびちょびちょ大作戦! 「サンシャイン水族館」のアシカショーはお客さんとの間に柵がないのが魅力なのですが、夏の間はアシカが水鉄砲で観客を撃つ、愛らしくも楽しいプログラムになっています。これからの季節、天空のオアシスで海獣と水遊びして暑さを吹き飛ばしましょう。
◆サンシャイン水族館
東京都豊島区東池袋3丁目1 ワールドインポートマートビル 屋上
おわりに
いかがでしたか。本格的に暑くなる夏に向けて、涼しく癒される水族館はお出かけ先にぴったり。表情豊かな海獣たちと、人とのコミュニケーションをその目で見れば、大人も子どもも新たな発見があるはずです。
最新刊『中村元の全国水族館ガイド125』(講談社)
◆中村元(なかむら・はじめ)
サンシャイン水族館の「天空のペンギン」水槽をはじめ、新江の島水族館やマリホ水族館などさまざまな水族館をプロデュースし、大胆で個性的な展示で人気水族館を誕生させてきた水族館のプロ。現在国内の複数の水族館でアドバイザーを務める。2019年6月4日に発売された『中村元の全国水族館ガイド125』(講談社)では全館を自らの足で訪問取材し、各水族館の見どころや楽しみ方を紹介。「水塊」という独自の表現で癒しと好奇心をもたらす展示の秘密を解き明かす。