はじめに
桃園国際空港から車で約45分。茶畑の丘を抜け、緑色濃い山奥に、中華圏最大の山中庭園があります。知る人ぞ知るこの場所は、イギリスのサッチャー元首相やロシアのゴルバチョフ元大統領も訪れたことがある名園。もともとは企業家の別荘でしたが、現在はリゾート施設として人数限定で開放されています。27ヘクタールもの敷地で感じる自然と静寂。ゆったりした台湾滞在を求める人は要チェックです。江南、福建、バロックのスタイルを融合させた“地上の天国”。
「The One南園人文客棧」を設計したのは、台湾建築の父と呼ばれる漢寶德氏。“地上の天国”をイメージした当代最大のヒノキ園建築群は、何百本もの貴重な台湾ヒノキを用い、百人に及ぶ技術者を動員して建造されたもの。中国の宋の時代、趙伯駒が描いた宮殿『宋趙伯駒阿閣圖』に着想を得て、江南式の庭園、福建様式の建築、バロック様式のアーケードという3つの建築スタイルが完全に融合した空間を造り上げました。この独創的な芸術の結晶は、2012年に日本のグッドデザイン賞を台湾で初めて受賞するなど、海外からも高い評価を得ています。まるで“壁のない美術館”。コンセプチュアルな芸術作品がそこここに。
彫刻や塗装が施された建物からランドアート、絵画、彫刻、フードアートまで…。「The One南園人文客棧」は“壁のない美術館”。この世界に誇るリゾート施設を訪れたなら、国内外のアーティストの作品と出合い、果てしない美学の追究を目の当たりにすることでしょう。紳士淑女のための休息の地がここにあります。 風と影が織りなす視覚的な美、豪奢でありながら堅苦しさのない気ままな雰囲気、そして竹林は古くから庭園に欠かせない要素です。竹園は「The One南園人文客棧」の人文芸術展示空間であり、常設展示されている現代芸術家の王大志氏による『愛花図』シリーズは、窓の外の庭園風景を引き立てています。園内の同心樓の前に鎮座する石像『水牛望月』は、国宝の彫刻家・王秀杞氏による作品。“牛”は、華人の社会的価値観を体現するだけでなく、台湾の初期の農耕社会においても重要な役割を果たしてきました。その温和で、恐れを知らず、忍耐強い特性は、どの国においても肯定的に捉えられているもの。石像の隣に静かに寄り添い、月が昇り日が沈む様子を共に眺めていると、日々抱く雑多な感情が洗い流されていくようです。
午後の散歩タイムは「蘭苑」で休憩を。ゆったり流れる時間のなか、芳しい香りがコーヒーの旅へと導きます。コーヒ粉に垂直にお湯を注ぎ、浸透させて蒸らすと、花、酒、大地を感じる特別な香りが。3種のコーヒーを軽食と共に楽しめます。コーヒーを飲みながらほっとひと息つき、自分だけの静かな時間を過ごしてください。
茶の湯の精神を体感する茶席で、人生の美学に思いを馳せる。
“茶席”は、東洋の人情を感じる空間。おいしいお茶を味わうというのは、単に味覚レベルの話ではありません。「The One南園人文客棧」での茶席は、独立した水上の庭である「水風軒」で開かれ、山水風景と選び抜かれた茶器のある空間に人々が溶け込むことで完成します。また、静寂を味わうことも茶席の醍醐味。いまどきの飲食文化ではなく、純粋な茶の湯の精神に則り、安らぎの追求を目的とし、人生の美学に思いを巡らす…そんな体験が可能です。一皿供されるごとに一曲。典雅な音楽と共にいただく食事は格別。
軽食処の「桂苑」は、“蔵熟、自家醸造”をテーマに、台湾で最も魅惑的な飲食文化、そして深く刻まれる家族の記憶を体現。温かい日差しと恵みの雨によって結実した大地の作物、季節風の影響を受けて得る豊作の喜び、物を丁寧に扱い、情を大切にする心を持ち続ける暮らし…。生産や飲食から生活文化まで、地元の風土と生活の痕跡を感じる食事を提供しています。シェフは、季節ごとに旬の野菜や果物を選び、地元である新豐溪周辺の豊かな物産を使うことで、地域と共にイノベーションを推進。「The One南園人文客棧」は、“公益”の精神をもって、台湾の風土、手工業者の精神と価値を大切に、日常の美の中の循環と熟成を伝えています。食事中は、香港の箏楽家の陳志成氏とYoung Talent計画の音楽家が私たちをクラッシックの世界へと連れ出します。一皿ごとに一曲というスタイルで、優雅な音楽と大地の恵みが織りなすハーモニーを堪能してください。
訪問方法は、一日周遊と滞在型の2コース。予約はお早めに。
27ヘクタールという果てなく広がる緑地を歩き、希少な台湾ヒノキで造られた美しい山の庭園で過ごすには、一日60名限定の日帰りコース、または一日20室限定の宿泊コースへの申し込みが必要。選ばれしゲストが体験できるのは、完全な静寂と安寧。大人の台湾旅を計画中の人は、早めのチェックと予約をおすすめします。◆The One南園人文客棧
住所:新竹縣新埔鎮九芎湖32號
電話:+886 2 2562 1777