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東海道新幹線に23年ぶり個室復活 「Supreme Class」、東京〜新大阪6万円超の価値は?




東海道・山陽新幹線のN700Sに10月1日、新たな最上位クラス「Supreme Class(スプリームクラス)」が導入された。グリーン車よりもさらに上位に位置付ける、扉付きの完全個室だ。



東海道新幹線では、かつて100系のグリーン車に個室が設けられていたが、同形式は2003年に引退。個室の復活は実に23年ぶりとなる。



まずは完全個室タイプの「Supreme Class Cabin(スプリームクラスキャビン)」からサービスを開始。7号車に2名まで利用できる個室、10号車に1名用個室を各1室設ける。当初は対応するN700Sが限られ、「のぞみ」「ひかり」「こだま」を合わせて1日上下計12本程度が運行される。今後は対応編成を順次増やし、2027年度中には半個室タイプの「Supreme Class Seat」も加わる予定だ。



今回はJR東海の協力で試乗列車に乗車し、東京〜名古屋駅間で7号車の2名用個室を体験した。



新幹線の中に自分だけの空間





東京駅で「のぞみ」に乗り込み、7号車のデッキを進むと、通路脇にSupreme Classの扉が現れた。





ICカードをかざして解錠し、中に入る。木目調の壁面に柔らかな間接照明、大きなリクライニングシート。見慣れたいつもの新幹線とはかなり印象が違い、まるで移動する小さな書斎といった雰囲気だ。







7号車の個室はA席側の海側にあり、幅約1メートル、奥行き約2.7メートル、広さ約2.7平方メートル。窓は2つあり、レッグレスト付きの大型リクライニングシートと、それに向かい合うようにソファが置かれている。座席の向きは固定され、7号車のシートは博多方面を向いているため、今回の下り列車では進行方向を向いて座ることになった。





一方、10号車の1名用個室はD・E席側の富士山側にあり、幅約1メートル、奥行き約1.9メートル、広さ約1.9平方メートル。こちらも窓は2つで、座席は東京方面を向いているため、下り列車では後ろ向きになる。途中で実際に腰掛けてみたところ、個人的には思ったほど違和感はなかったが、このあたりは好みや乗り物酔いのしやすさによって評価が分かれそうだ。



[caption id="attachment_383648" align="alignnone" width="900"] ▲7号車の2名用個室。幅約1メートル、奥行き約2.7メートル、広さ約2.7平方メートルで、窓を2つ備える[/caption]



個室内のさまざまな操作は、手元の専用タブレットに集約されている。リクライニングやレッグレスト、空調の風量、車内放送の音量、照明などを自分好みに設定でき、飲み物や軽食のモバイルオーダーもここから利用できる。



[caption id="attachment_383645" align="alignnone" width="900"] ▲飲み物や軽食もタブレットから注文でき、パーサーが個室まで届ける。Supreme Class限定商品も用意[/caption]



照明は明るさだけでなく白色と暖色を切り替えられ、「ノーマル」「ビジネス」「リラックス」「おやすみ」の4モードも用意されている。パソコンを広げるなら白色系の「ビジネス」、休憩するなら「おやすみ」と、過ごし方に合わせて雰囲気を変えられるのが個室ならではだ。





「おやすみ」にして2つの窓のシェードを閉めてみると、ヒーリング系のサウナのような落ち着いた空間になった。一部の間接照明は常時点灯しているので完全な暗闇にはならないが、ちょっと目を閉じて休むには十分。真っ暗でなければ眠れない人は、アイマスクがあるとよさそうだ。





もちろん、くつろぐだけでなく仕事場としても使いやすい。テーブルは窓側の壁面に収納されており、一見すると細長いが、引き出して展開するとかなり大きい。ノートパソコンを置いても十分余裕があり、資料や飲み物を横に並べても窮屈さがない。なにより、周囲から画面をのぞかれる心配がないのが大きい。



[caption id="attachment_383651" align="alignnone" width="900"] ▲窓をよく見ると透明ガラスアンテナが[/caption]



Supreme Class専用のWi-Fiも用意されている。個室の窓にはAGCが開発した「5G対応透明ガラスアンテナ」が組み込まれており、窓そのものにアンテナ機能を持たせることで通信品質の向上が図られている。5G対応の透明ガラスアンテナが鉄道車両に搭載されるのは世界初という。



走行中にGoogleの速度テストを試したところ、地上区間では下り71.7Mbps、上り18.6Mbpsを記録。ウェブ閲覧や通常のクラウド作業はもちろん、動画視聴も不満を感じることはなさそうだ。



一方、トンネル区間では下り5.95Mbps、上り0.02Mbpsまで低下してしまった。走行場所や回線状況による差が大きいため、常に高速通信を期待できるわけではないが、少なくとも地上区間では普段使いに十分な速度が得られた。



一番の価値は「誰にも邪魔されない」こと





設備をあれこれ試してみたが、結局、個人的に一番印象に残った価値はやはり「誰にも邪魔されない」ということだった。



扉を閉めれば、他の乗客の会話や物音、人の出入りといった車内の気配はほとんど気にならなくなる。グリーン車も比較的落ち着いていることが多いが、やはり「静かな客室」と「自分しかいない個室」では感覚がまったく違う。





移動中に集中して仕事をしたいときはもちろん、2人用なら親子や夫婦、友人同士でも周囲を気にせずに過ごせる。東京〜名古屋の約1時間40分、新大阪まで約2時間半、さらに博多まで乗り通すとなれば、このプライベート性はかなりありがたい。



あえて個人的な要望を挙げるなら、使い捨てのスリッパが欲しいところ。せっかく完全なプライベート空間が用意されているだけに、飛行機のビジネスクラスのように靴を脱いでくつろげれば、より一層リラックスして過ごせそうに感じた。



東京〜新大阪6万円超、2人なら1人約3.7万円





さて、気になるのは料金だ。東京〜新大阪駅間を「のぞみ」で利用する場合、スマートEXの通常期価格は、7号車の2名利用可能な個室が60,790円、10号車の1名用が42,390円となる。



7号車を2名で使う場合は、60,790円を2人分支払う必要はなく、Supreme Classを予約した1人に加え、同行者は同じ区間の乗車券と特急券(自由席でも可)を別途購入すればOK。東京〜新大阪間の普通車自由席は13,870円なので、通常期に2名利用した場合は合計74,660円。単純計算では1人あたり37,330円となる。



Supreme Classの比較対象として思い浮かぶのが、飛行機の上級クラスだ。



[caption id="attachment_115886" align="alignnone" width="600"]JAL A350 F ▲JALが国内線で運航するエアバスA350-900型機のファーストクラス[/caption]



航空券本体の価格は予約時期や運賃種別によって変わるため、総額を単純に比較することはできないが、日本航空(JAL)の東京/羽田〜大阪/伊丹線では、普通席からファーストクラスへの当日アップグレード料金は13,200円。全日本空輸(ANA)の「ファーストクラス(プレミアムクラス)」では、東京〜大阪線のアップグレード料金が11,000円となっている。



[caption id="attachment_383643" align="alignnone" width="900"] ▲「のぞみ」「ひかり」では飲み物と菓子のウェルカムサービスも。7号車個室を2人で利用する場合は2人分が提供される[/caption]



両社の国内線上級クラスはSupreme Classのような個室ではないが、機内食やアルコール飲料などが提供され、空港ではラウンジも利用できる。一方、Supreme Classは駅での専用ラウンジや食事がセットになっているわけではなく、価値の中心にあるのは列車に乗っている間の「完全な個室空間」だ。一度部屋に入ってしまえば、降りるまで周囲に気兼ねせずに過ごせる。



上級クラスに何を求めるかで選択は変わるが、東京〜大阪間の移動に新たなサービスの選択肢が加わったことは確かだ。料金は決して安くないが、ぜひ一度この「自分だけの個室空間」を体験してみてほしい。

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