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首都圏の鉄道各社、きょうから終電繰り上げ 感染拡大防止の効果は疑問【コラム】




JR東日本や地下鉄・私鉄各社は、国土交通省などの要請を受ける形で、20日から終電時刻を繰り上げる。


各社ともに繰り上げ時間は10〜30分程度


山手線

各事業者によって変更の時刻幅は異なるものの、概ね10分から30分程度。例えばJR東日本では、山手線や京浜東北線など11の路線で終電を繰り上げるものの、宇都宮線や高崎線、常磐線各駅停車など変更しない路線も多い。



半蔵門線

地下鉄では東京メトロや都営地下鉄はすべての路線で終電の繰り上げは実施するが、各路線の一部区間では終電の時刻変更がない区間もある。その他の私鉄でも、変更の規模は各社まちまちだ。


あくまで要請に基づく終電繰り上げ ”不自然”なものも


終電を繰り上げる路線の1つである、東京メトロ千代田線では、"不自然"な終電繰り上げが行われる。





平日ダイヤで代々木上原駅を午前0時ちょうどに発車する綾瀬方面の最終電車は、今回の終電繰り上げによって代々木上原〜北千住駅間が運転取りやめになった。一方で、常磐線各駅停車の最終電車は繰り上げの対象になっていない。



このため、変更後のダイヤでは、常磐線各駅停車の我孫子行き最終電車を確保する形で、北千住始発の列車が新たに1本設定される。終電繰り上げを実施しない路線とのミスマッチが生じているのだろうか。



他にも単純に終電を繰り上げても、同じ時間帯に回送で車庫に戻す必要があるダイヤは多く見受けられる。その際の乗務員は必要だ。終電繰り上げで鉄道会社にメリットは少なそうで、緊急事態宣言を受けた急遽の対応という感は否めない。



そもそも、各社は今回の終電繰り上げについて、緊急事態宣言や国土交通省からの要請に基づくものであることを強調している。2021年3月に多くの鉄道会社で行われる終電繰り上げは、深夜の保線作業員の作業時間確保などの意味合いもあるが、今回は夜間の外出自粛を呼びかけていることを踏まえた終電の繰り上げということになっている。


「終電繰り上げ」に感染防止の効果はないのでは?


ここまで確認してきて、疑問がある。10〜30分程度の終電繰り上げに、感染防止の効果はあるのだろうか。



筆者は、「単なるパフォーマンス」にすぎないのではと考えている。もはや深夜に鉄道を利用する用事もコロナ禍前に比べほとんどなくなってしまったため、個人的には終電繰り上げは、賛成でも反対でもなく「どうでもいい」というのが率直な意見ではある。とはいえ、各社足並みを揃えて終電繰り上げを行うことについては、真剣に考えても、単純に「終電が繰り上がる」ことを見せつけるパフォーマンス以上の意味が見いだせない。





都内の夜間の町並みでは、羽目を外して酔っ払った人は若干見かける。午後8時以降は飲食店から追い出された人たちが、駅前広場や公園で集まって酒を飲んでいる姿も見かける。しかし、このような人はごく僅か。深夜の鉄道を覗くと、仕事を終えたサラリーマンらしき人が、幾分空いた車内にぽつりぽつりと乗っていることがほとんどだ。



「終電繰り上げ」でどれほどの影響が出るかは蓋をあけてみないとわからないが、午後8時以降の外出自粛が呼びかけているなか、終電が10〜30分程度早くなることにより外出するかどうかが決まることはないだろう。一方で、出勤して、夜遅くに帰る必要がある「エッセンシャルワーカー」など労働者に影響が出ることはないのだろうか?



「終電繰り上げ」が感染拡大防止の「単なるパフォーマンス」であるとしか捉えてないが、効果よりも「副作用」が上回ることがないかは懸念点だ。


愛知では午後9時30分以降「全便運休」するバス会社も




名古屋市など愛知県を中心に運行する名鉄バスは、18日から一般路線バスのほぼ全線で、午後9時30分以降始発停留所を発車する全便を運休している。SNSなどではこの発表が拡散されて話題になった。同社は国土交通省や各自治体からの要請は受けていないが、緊急事態宣言に基づく対応としている。



鉄道に比べて、バスのほうがダイヤを変更しやすいため、一概に比較することは難しいが、感染拡大を防止するための外出の抑止策として、思い切った公共交通機関の運行停止は効果的だと考えさせられる。



首都圏の鉄道会社が同じ施策を行った場合、大きな混乱が起こるはずなので、実現可能性は低い。しかし、この名鉄バスの施策と比較すると、首都圏の今回の終電繰り上げは、外出を自粛させたいという国土交通省や各自治体の意思をほとんど感じさせられないことを改めて感じる。


効果がない対策をやる意味はない




きょうから行われる終電繰り上げ。新型コロナウイルスの感染拡大は早く抑えるべきであるから、様々な対策は講じられるべきではある、効果があるならば。



今回の「終電繰り上げ」には、すでに大幅に減ってしまっている深夜の利用に、わずかに影響を及ぼすに過ぎない。この少しばかりの「終電繰り上げ」で外出をやめるような動きにはつながらないだろう。一方で、終電時間帯に鉄道を利用しなければいけない、夜遅くまで働く労働者などに影響がでるおそれはある。



この「終電繰り上げ」について、感染拡大防止の効果をアピールしたり、検証する動きはほとんどみられなかった。これは効果がないからだと考えているが、そんな対策にやる意味はあるのだろうか、いやないだろう。



効果がない対策をやる意味はないとあえて言い切ろう。期待を裏切る形で「終電繰り上げ」で効果があるとして行われてもいいが、結果として感染拡大防止の効果がないなら失敗策だ。ムダな対策にリソースが割かれ、効果的な対策ができないなら失敗そのものだ。



新型コロナウイルスが感染拡大してから早1年。総合的にみて、効果の見込めないことをする余裕は、社会に残されていないと思うのだが…。

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