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低価格の王様? 1泊1,000円の西成のホテルに泊まってみた「ホテル ダイヤモンド」【はんつ遠藤の大阪・西成C級ホテル探検(4)】




先月、僕はGo To トラベルキャンペーンを使用して大阪・西成のホテルに泊まり、1泊実質120円だった報告をさせて頂いた。だが、西成には安宿が殆どで、1泊1,000~3,000円程度。そもそもキャンペーンが適用不可なホテルも存在する。そこで、第4回は、特に安価な1軒をご紹介しよう。





何度も書いて恐縮だが、西成には3畳一間、バストイレ共同というホテルがとても多い。中でも群を抜いて安価なのが「ホテル ダイヤモンド」だ。



僕が伺った12月中旬はGoToトラベルキャンペーン期間中であったが、こちらは使用不可で、通常通りの1泊素泊まり1,000円(税別)。





大阪メトロ動物園前駅の8番出口から南へすぐ、南北に走る大通りの堺筋に面した便利な立地だ。





建物は8階建てで、正面玄関は自動ドア。中に入るとすぐ右側にフロントがあり、左側には水槽があって珍しき金魚が泳いでいたり、各地のお土産が飾られていたりと、昭和的というか民宿のような雰囲気が伝わってくる。





こちらでは、フロントで予約名を伝え、記帳したあとに、1,000円のデポジットを支払い、部屋のキーを受け取るスタイル。この手のスタイルは、低価格帯の西成のホテルでは、時々見受けられる(チェックアウト時にキーと交換で返却される)。



一見、靴を脱いでスリッパで移動する感じの作りだったが、現在はそのまま部屋まで自らの靴で移動できる。



宿泊料金はあらかじめ楽天トラベルのクレジットカード決済にしたので、スムーズ。



一応ロビーがあり、無料の飲料水も飲める。



フロントの奥(というか管理人室)では犬がワンワン鳴いていた。6~7歳の犬が3匹ほどいるようだ。なんともアットホームな空気が流れていた。





エレベーターで部屋へと向かおうと思い、行き先階を押すボタンを見て驚いた。8階建てなのに1、3、5、7と奇数階しかない。どうやら偶数階に行く場合は、エレベーターを降りてから階段を使用するようだ。



今回のホテルは5階だったのでエレベーターが停止する階。





「停止する階でラッキー」という、ホテルではなかなか感じない喜びを抱きつつ降りれば、また昭和的というか薄暗い廊下が続いていた。一フロアに約30部屋ある模様。その8階建てなので、200部屋以上ある。



それと不思議なのは、部屋の”外側”に電気のスイッチがある点。これは入室して分かったが、中に照明等のスイッチがなく、部屋の外で点灯、消灯を行うスタイルだった。ということは夜、誰かに消されてしまうのでは?という不安がよぎったが、今回はそのような事には遭遇しなかった。



僕はキーで鍵を開け、扉を開いた。



そこには、西成で十数軒宿泊している僕でも見た事のない光景が広がっていた。





通常の西成のホテルは3畳一間。しかし、こちらは1.5畳一間だ!





しかも部屋にはエアコンも無ければ、扇風機も暖房器具もない。しかし、なぜかテレビはあった。さらに、網戸もない窓が、換気のためか少し開いていた。



靴は部屋に置けないので、外に置くかビニール袋を持参して持ち込むか、だ。





Free WiFiはロビーくらいしか飛んでいないが、1日300円でWiFiルーターをレンタルできる。もっとも、僕はスマートフォンでテザリングするので構わないが。



部屋は古さはあるものの板の間で、普通に清潔感もあった。





試しに僕はすぐ、布団を敷いてみることにした。板の間の床にマットレスを置き、その上に敷布団と掛布団で完成。簡単にいえば、まさに「ぴったりの幅」(笑)。



この光景を見て、多くの方々は「狭すぎる」と思うかもしれない。しかしながら、人は通常、一畳分あれば足を伸ばして寝れる。布団の左右はぴったりと壁なので、布団から落ちる心配もない。そもそもカプセルホテルよりも天井が高く、圧迫感がない。





ハンガーも3本あり、これで1,000円なら、冷暖房が必要な時期以外であれば、とてもお得だ。ちなみに、冷房付き税別1,300円という個室もある。



とはいえ、この手のホテルはバストイレが心配である。そこで僕は早々に館内探検に出かけた。





トイレは同フロアにあった。男女も分かれていて、男性用には、なんとウォシュレット付きのタイプが3つも設置されていた。





また同フロアには、ミニキッチンも。ガススタイルの“ごとく”が2つあり、醤油や塩なども置いてあるところをみると、長期で宿泊している方もいるようだ。





さらに1階へ向かえば、コミュニティルーム的な部屋も。そこには冷蔵庫、電気ケトル、電子レンジ、オーブントースターなどもあり、至れり尽くせり。100円から購入できる自動販売機まで設置されていた。





次はバスルームだ。男性用は浴室、女性用はシャワールーム(2部屋)という構成。両方とも午前6時~午後11時まで(男性用は午後1時~2時までは清掃)。男性用は火曜と土曜は浴槽にお湯が張られるが(午後4時~11時)、その他の曜日はシャワーのみ。今回は金曜に宿泊ゆえにシャワーのみだった。





フロントで部屋のキーと交換で、バスルームの“ロッカー”のキーを受け取る。現在はコロナ禍ということもあるのだろう、ロッカーは5か所のみ使用可だったので、最大で5名のみということ。とはいえ、シャワーなどが使用できる場所が3か所しかないのが、少し気になった。前述のとおり、ホテルは約200室あるので、満室時は大変そう。





ここで、僕はひとつだけ失敗をしたことに気づいた。あらかじめ、ホテルには歯ブラシやシェーバーはおろか、タオルすら無いという事を学んでいたので持参していたが、浴室にはシャンプー、リンスだけでなく、石鹸すら無かった(全てフロントで購入可能)。



仕方なくシャワーのみ浴び、退出。ドライヤーは着替え室に無く、フロントで借りて、ロビーかコミュニティルームで使用できるそうだ。





ちょうど大阪は府全域に不要不急の外出自粛を呼びかける「医療非常事態宣言」を発出中だった。僕は雑誌の連載もあり、必要火急ゆえに訪問しているわけだが、西成の夜はどうなっているか気になったので、外出することにした。



午後8時半。驚いた事に、飲食店の多いアーケード街は、なかなかの活況を呈していた。





最近は日雇い労働者が集まるような立ち呑み店よりも、一般人や若者向けの立ち呑み店が続々とオープンしている。それととても増加したのがカラオケ居酒屋。アーケードを歩くと、あちらこちらから歌声が聞こえてきた。





その中で、とても気になった1軒が「酒房 豊後(ぶんぷく)」。創業以来約半世紀。日雇い労働者や若者相手ではなく、むしろ地域に根づき、上質な飲み客のファンが多い大御所クラスの人気店だ。





コの字型カウンターのみの店内には、3人連れと一人客。通常どおりの落ち着いた雰囲気だが、以前に比べれば、とても空いている。





通常メニューのほかに、ホワイトボードには本日のお造里(おつくり)、小鍋、野菜料理、肉料理、魚料理の数々。





余談だが居酒屋で紙ではなく、布製のおしぼりが出てくるところにハズレは少ない。とりあえず生ビールをオーダーし、次にネタケースにあった鯨のベーコンも。大阪では鯨料理がメジャーだ。“おばけ”(さらし鯨)なども気軽に立ち呑み店にあったりする。





それをアテ(つまみ)に飲みつつ、僕はご主人に聞いてみた。



コロナで、お客さんは少ないですか?



「若い人は出歩いているけど、うちに来るのは年配の方が多くて夜は出歩かなくなったから、少なくなったねぇ」



なるほど、やはり年代でとらえ方が違う。だが、お店は通常どおり10時ごろまで営業しているそうだ。



「中央区とか北区とかなら営業補償が貰えるけど、うちら西成区は貰えないんですよ」とご主人。



それにしても、西成で半世紀は凄い。



怖くないのですか?と、僕。



「この界隈は暴れるような人は殆どいないんですよ。むしろ、昔は暴力団が3つくらいあって、逆に街を守ってくれてたしね」



なるほど、僕は週刊大衆で連載もしているので、そちら系の方々の話はよく耳にする。むしろ彼らは一般人には手を出さず、街を守るということも確かに聞いた。





すると、一人客の方が言った。



「今は暴力団も弱くなった。そのせいで、外国系の人が経営するカラオケ居酒屋がどんどん増えてて、逆に困るよ」



僕は酎ハイレモンも追加して、少し語らい、1,400円を払って9時半ごろ店を後にした。



まだ飲み足りなかったので、コンビニでお酒とおつまみを買い、ホテルへと戻った。





この手のホテルでは夜11時には入口のシャッターが閉まるところすらあるが、「ホテル ダイヤモンド」は、実は門限が無いのも魅力だ。とはいえ、まだ10時前。





1.5畳の部屋は、最初こそ狭く感じたが、スマホでイヤフォンを用いてYouTubeの音楽を聴きながら飲んでいたら、すぐに通常の部屋と同じ快適さになった。とはいえ、さすがに12月で暖房設備がない部屋は少々、寒い。僕は外の恰好そのままで布団に入り、眠った。



そして翌朝。チェックアウトは朝9時まで。僕は部屋のキーと引き換えにデポジットの1,000円を受け取り、8時すぎにホテルを出た。



1泊素泊まり1.5畳一間、冷暖房なし、バストイレ共同で、1,000円(税別)。夏場で無ければ、僕は十分に「あり」だと思った。



■プロフィール


はんつ遠藤


1966年東京生まれ。早稲田大学卒。不動産会社勤務を退職後、海外旅行雑誌のライターを経て、フードジャーナリスト&C級ホテル評論家に。飲食店取材軒数は1万軒を超える。主な連載は「週刊大衆」「Ontrip JAL」「東洋経済オンライン」など。著書は「取材拒否の激うまラーメン店」(廣済堂出版)など27冊

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