Go To トラベルキャンペーンが、年末年始にかけて全国一斉で停止されることが発表された。書き入れ時のキャンペーン停止で、観光業などへの大きな影響は避けられない見通しだ。
今更すぎる「Go To トラベル」停止
改めて整理するとGo To トラベルキャンペーンについては、主に直接恩恵をうける観光業からの視点で、継続を望む声が多かった。一方、歯止めがかからない感染状況に対して、医療状況などを踏まえて「Go To トラベル」停止を訴える声があったことも事実だ。
その上で、やはり積み上がった感染者数を眺めると、全国的には約2週間先から停止するという対策はどれだけの効果があるのだろうか。人の往来が多いことが懸念されていた年末年始だけGo To トラベルキャンペーンを停止することに対しても「今更感」を感じるのは筆者だけだろうか。
「Go To」停止は旅行の「敗北」ではないか
そもそも、「Go To トラベルキャンペーン」とはなんだったのかを振り返ってみると、ウィズコロナ時代の「新しい生活様式」に基づく旅のあり方を、普及、定着させるものであった。
だからこそ、「Go To トラベル」の停止は、新しい旅のあり方が、社会に普及・定着しなかったこと、そして、社会がこの旅のあり方を受け入れないか、受け入れる余裕が無くなったことを意味するのではないか。
今まで局所的なキャンペーン除外があったものの、全国的なキャンペーン停止は初めてだ。補償する方針こそ示されたが、運輸・観光業を中心とした、関連する広範囲の社会影響は免れない。移動自粛が呼びかけられる静かな年越しの中、旅行できないことによる「敗北」を噛みしめることになるのだろう。
補償されない「旅行機会の損失」
キャンセル料などは、国から補償される事になっている。しかし、停止期間の2週間での、本来あったはずの旅行に行くことができる日程的余裕などの機会の損失は補償されない。年末年始の旅行商戦は旺盛で、11月から12月にかけても、旅行代理店の店頭は賑わっていた。国が半額を補助すると謳って、代理店らもセールスしていた旅行が、一気に白紙に戻されることになった。天国から地獄に落とされて、旅行者に残るのは虚無感だろう。旅行に行きたかったという喪失感は、そう簡単には埋められない。
直接的に補償される旅行会社や宿泊施設などに対し、交通機関や宿泊関連業者、地域共通クーポンで賑わうお土産店やレストランなどへの補償は充分になされるのだろうか。補償されたとしても、やはり年末年始という一番の書き入れ時に再び訪れる「冬の時代」は、辛く厳しいものになるだろう。
旅行業界は年を越せるのか?
改めて、旅行業界は年を越せるのか、心配が募るばかりだ。筆者は、あまり年末年始やゴールデンウィーク、お盆などの多客期に、多くの人が集中して旅行や帰省することは望ましいとは思っていないが、それでもこれらの移動による経済効果は認めざるを得ない。
巨大な経済効果が消失した際にどのような結果を生むのか、想像できない。コロナ禍以前と同じ様に旅行ができるとは思えない状況だが、今は利用して支援することは難しく、少しでも踏ん張ってほしいと願うことしかできないのがもどかしい。