経済産業省は、国土交通省と共同で実施する「Go To トラベルキャンペーン」を含む、各種需要喚起キャンペーン(Go To キャンペーン)の委託先の公募資料を公開した。
この記事では、「Go To トラベルキャンペーン」がどのようなキャンペーンになるのか、資料を読み解いていく。
1人・1泊あたり2万円を上限に助成
当初発表していた資料によると、「旅行業者等経由でキャンペーン期間中の旅行商品を購入する消費者に、クーポン等(宿泊割引・クーポン等に加え、地域産品・飲食・施設などの利用クーポン等を含む)を付与すること等で、観光需要喚起及び地域の再活性化の動機付けになる経済的インセンティブを付与すること。」とあり、「ふっこう割」のような宿泊商品などの割引に加え、地域の飲食などの利用を促進する狙いが伺える。
6月2日に経済産業省が公開した説明会資料によると、「旅行業者」にあたるものは幅広く、中間事業者は旅行会社、オンライン旅行代理店のみならず、宿泊施設の直販予約システムも含まれている。ほとんどの宿泊施設は予約システムを自社開発せず、システム開発会社から予約システムを借りているため、広く対象になるものとみられる。
「クーポン等の上限は、代金の1/2相当分とし、最大1人あたり2万円分/泊を目途とすること」としていて、過去の旅行を促進するキャンペーンのなかでも最大規模だ。
2016年4月の熊本地震を受けて実施された「九州ふっこう割」の規模が180億円、2018年の北海道胆振東部地震「北海道ふっこう割」の規模が81億円であったことを受けると、観光・飲食・イベント・商店街の4つのキャンペーンをあわせたものとはいえ、1兆6,794億円となる今回の事業の大きさは類を見ず、旅行業界でも期待が高まっている。
すでにこの「Go To トラベルキャンペーン」の特設ページを開設する旅行会社も出ている。
旅行大手のビッグホリデーは、特設ページ内で、1名1泊あたり2万円の助成について、7割を旅行代金から値引き、3割を旅行先で利用可能なクーポンとする予定であることを明らかにしている。
画像内でも言及があるが、1泊あたりの助成上限があるため、複数泊の旅行のほうがお得になりうるのが独特だ。
沖縄旅行を中心に扱う沖縄ツーリストも特設ページを公開。すでに各目的地別のバナーやQ&Aを掲載するなど、キャンペーンへの高い期待が伺える。
開催時期は7月からか 感染症の状況を踏まえ判断へ
TRAICYでもお伝えした通り、赤羽一嘉国土交通大臣は現時点では7月の早い時期から実施できるという見方を示している。
現在は事業委託先を公募している段階で、6月8日午後6時まで応募を受け付けている。観光・飲食・イベント・商店街の4つのキャンペーンの事務局を一体運用することが条件となっており、中間事業者にあたる旅行業者やオンライン飲食予約事業者などは広く募集・登録を促す。
委託先は、「適切な会計管理及び再委託事業者等への指導ができる専門知識を有する人材が内部に確保できる、又はそのための体制が組めることを提案書等において示すこと」や、「消費者と中間事業者等との受領委任契約や事務局と中間事業者との再委任契約など、適切な契約体系を整備すること」、「適切に給付金を給付するため、国に対して必要な給付金額の報告を遅滞なく行えるシステムを構築すること」などが条件にあり、委託先は大手企業やコンソーシアムに限られるとみられる。
キャンペーン原資となる給付金の総額は1.5兆円程度で、委託先へ支払う事務委託費の上限は3,095億2,651万3,000円。最終的な実施内容や金額は、農林水産省、経済産業省、国土交通省と調整して決定するという。
ちなみに、一部報道で問題視されている持続化給付金の委託先、一般社団法人サービスデザイン推進協議会への事務費は約769億円だった。予算額は2兆3,176億円で、Go Toキャンペーン事業より大きい。
一方で、「新型コロナウイルス感染症にかかる政府の基本的対処方針や業界別ガイドラインなど業界毎の感染症対策の実施状況、地域毎の感染症流行状況等を勘案しつつ、段階的に実施するもの」としていて、「新型コロナウイルス感染症の再流行などによる緊急事態宣言の再度の発出など新たな事態が生じた場合、事業の実施中においても見直しを図る」としている。
感染症による流動的な状況を踏まえなければいけないため、さまざまな事項が未確定ではあるが、夏休みにキャンペーンを利用できると期待してもよいだろう。
なお、この「Go To トラベルキャンペーン」を含む各種事業は来年3月中旬までを実施期間としていて、秋から冬の旅行に活用できそうだ。
そもそも旅行商品の価格が高騰しがちな夏休みを避けて、秋や冬の時期に、魅力的な旅行商品から旅行の行き先を決めるというのが、良いキャンペーンの活用法だろう。
「Go To トラベルキャンペーン」は、まだ準備段階が始まったばかり。実際にキャンペーンが消費者向けに実施されるまで、首を長くしながら、しっかりと感染症対策をして待つことにしたい。