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爆売れダイハツ新型ロッキーのルーツを四駆専門誌編集長が試乗!!


中古車屋の店主であり、重ステ車の運転が億劫になってきた団塊ジュニア末期世代、WEB上では“ポンコツ屋”の名で通る『四駆道楽専門誌 CURIOUS(キュリアス)』(カマド出版・刊)の編集兼・倉庫係…と言うか編集長が、ダイハツの現行ロッキー(A200S/210S型)の販売好調をうけて、ここぞとばかりに(?)初代ロッキーを真正面から語ります。後編はいよいよ初代ロッキーの試乗レポートと参りましょう!!

 前編ではダイハツの初代ロッキー登場の背景や車両構造、位置付けの変化をご紹介しました。今回は後編として、縁あって仕入れた平成7年車を検証するとともに、新たなオーナーと一緒にツーリングへ出掛けた際の感触をお伝えしましょう。


 今回掲載の画像は、四駆専門誌『キュリアス Vol.11』(カマド出版・刊 http://www.w-m-g.jp/curious/)の誌面用として、2015年8月に撮影したもの。解説も当時の試走記事の再構築にするつもりでしたが、勢い余って(?)書き下ろし同然に…。


 よってマニアック(?)な皆様におかれましても、幸か不幸か記事内容は「どこかで読んだぞ!?」とはならないものかと思います。それでははじめましょう。
四駆道楽専門誌『CURIOUS(キュリアス)』についてはココをクリック!!(注:株式会社 三栄の刊行物ではありません)

▲平成5年のマイナーチェンジで登場した「カンタベリー」仕様は、F300Sの最終期になると少しシンプルな「カンタベリー・X」と、上級の「カンタベリー・Z」に分かれた。そこに廉価版の「マリンランナー」を加えた三本立ての展開として、従来の「SE」や「SXとい」ったグレードを置き換えた。現車は「カンタベリー・X」で、初期の中間グレード「SE」に相当するが、オーバーフェンダーが省かれたことで以前よりスッキリしている。舵角を犠牲にするワイドタイヤではないから、スズキ・ジムニーに近い4.9mの小回り性能だ。しかし大げさなグリルガードはうっとおしく、人混みをかき分ける駅前や商店街を走る時は怖くもある。走行性能の面からも、フロントオーバーハングにこんな重石をつけるのは褒められたことではない。

「カンタベリー」のロゴが入ったグリルガード。フェンダーやボンネット構造に対歩行者の安全性を考慮することが当たり前のいまでは、平成四駆風俗の負の遺産に見える。多くのRV四駆がこういった装飾品を標準装備していた。

【内外装はラガーの弟分】

 ロッキーのウリだった脱着式トップが印象的ながら、根底にあるのは兄貴分のラガーを小さくしたようなデザイン。カドを丸っこくしたり空力云々の考えもなさそう。前端からクォーターパネルへ至る外板プレスや、四角く切り取ったフェンダーもラガーのDNA、テールランプに至っては流用だ。


 バンパーとして機能する前後バンパーにきちんとした牽引フックが備わり、どこから見てもジープタイプ。もっと昔から存在したかのような佇まいである。なのに「アタラシズムなフォルム」なんてカタログ文言が見られたのは前編で述べた通り。営業側(または広告代理店)と設計側の認識のズレは、現車を前にすると殊更強く感じる。


 内装もミニ・ラガーの趣き。ドア内側はセミトリムで鉄板むき出し部が残る。ミラー固定部から室内に貫通したレバーをコチョコチョやると鏡面が動くのも懐かしい。電動調整が当たり前の時期でも、故障の心配も少なく嬉しい装備だ。


 5ナンバー登録車のみで展開された点は業務用でない証。それでも女性客を多く取り込んだスズキ・エスクードのお洒落さを考えると、乗用車ユーザー視点からは太刀打ちできないことが明らかで、カテゴリー違いにすら映る。

エスクードのような曲線基調にしなかったことは、四駆趣味人からすれば嬉しい。ラガー同様に一段低く落としたダッシュボードは開放感があり、アシストグリップも備わる。長い変速レバーはマニア的に「萌え」要素。操作感は節度があって入りも良い。

立派な形状に見える前席。ホールド感なんていらないけれど、どうもグニャグニャして疲れる。後席は足元の広さがきちんと確保されている。

2シーターと割り切ればキャンプ道具満載の用途にも使える。4人乗車では旅行カバン程度で満杯だ。 スペアタイヤとテールゲートの重量を受ける右クォーターパネルは、筋交い状のパイプで補強されている。

レジントップを外すのは大変なので、後部ガラスだけ外してみた。積んで行ければ良いのだが、ガレージでお留守番のサイズ。

 シャシーにも奇をてらった部分は少なく、前後サスペンションの形式もすでに普及していたRV四駆の定石どおり。つまり車格からすればゴツい。


 エスクードは前足を乗用車流のストラットに、後足をランドローバーに似たセンターAアーム式コイルリジッドとした。さらにフレーム前後を大きくキックアップしてフロアを下げたことに対し、ロッキーの構造は「保守的に過ぎる」し、四駆ユーザー視点からは「頼もしい」。


 現在はサイズ、重量、用途から、ロッキーをライトクロカンとかコンパクトSUVと呼ぶことが多い。それならば、『キュリアス』誌流に「ライトウェイト骨太クロカン」と呼びたい。シャシーの造りとしてライトデューティと評することはできないから、「軽量な本格派」ということだ。

前後サスの組み合わせは、ジープタイプから脱したRV四駆の定番形式。フレームに沿って後方に延びる棒はトーションバー。前端で車幅いっぱいに延びる棒はスタビライザー。

ダブルウィッシュボーンの前足。リジッドアクスルに比べれば、まだ「ライトデューティ」かもしれないが、エスクードのストラット式より頑丈かつ高コスト。

後足の板バネ。ほぼフルスパンで常に作用するメイン2枚と、高荷重時・ストローク時に作用するヘルパーの3枚構成。車体を持ち上げて伸びきった状態で撮影。

ラガーでは直角に出っ張って障害物に引っ掛けそうだったピボット部は、ロッキーではナナメ形状に仕上げている。スキッド性を持たせた丁寧な造作だ。

腹の下はフラットに処理されている。壊したらまずい部品が垂れ下がっていることもない。排気管の処理も良い。

断面高10cmの角パイプを曲げて作った素朴なラダーフレーム。部材も工法もタフト以来の伝統である。 三分割の部材を組み合わせ、フロアの低さとサスストロークを両立させたエスクードに比べると安直だが、悪いことでもない。

アイドラアームの付け根を観察すると、格上のパジェロやサーフよりしっかり丁寧に組んであると分かる。酷使ではこういった部分が光る。

【粘りはイマイチ、しかしガッチリ】

 お待たせしました。乗ってみます。自動車税区分から損した気分になる1.6ℓエンジンは、牽引や運搬作業といった農耕馬的役割に使うのでなければ燃費とパワーのバランスが良いはずだ。


 ジムニーシエラの1.3ℓや1.5ℓも乗り味に優れるが、軽快さの裏返しでボディは狭く、造りも華奢と感じる向きも多かろう。そもそも軽の骨組みなんだから仕方ない。


 翻って最初から登録車として生まれたロッキーは相応の体躯を持ち、重量増と引き換えにタフさを得ている。普及して欲しいクラスだったが、現在はカテゴリー消滅ときたもんだ。




 乗用車のアプローズから流用のHD-E型エンジンは、吸気系を改良して中速域を扱い良くしている。実際に走らせると、高回転型だったり俊敏に吹けあがるのではなく、感触は重たげ。良くいえば安定型の実用重視だ。


 それでも低速トルクは不足気味で、坂道発進では並みの乗用車よりも半クラッチを使ってやらないとエンストしてしまう。わかっていながらギリギリまで粘らせ、ストール寸前にポンと踏んでもアクセルのツキが今ひとつで、立ち上がりが間に合わない。


 四駆としては小さな排気量で重たいタイヤを回すとはいえ、もう少し粘っても良かろう。エスクードが初代型のうちに2ℓ、2.5ℓ、ディーゼルターボと展開したのだから、ロッキーも1.8ℓくらい欲しかった。タフトグランの12R-J型のように、トヨタから供給を受けるのも手だったかもしれない。

エンジン本体はコンパクトでも、エアクリーナーケースやダクト類のため窮屈な印象。大きなインダクションボックスはロッキー用に追加された中速トルク対策。

横置きの補機類のため、ディストリビューターはファイヤウォールとの隙間に。ジムニーでも見られた配置だ。ブロック横に移設すれば10cmは後方にエンジンを搭載できるのになぁ。

16バルブの動弁系やタイミングベルトの様子が当時流の近代化で乗用車的。

 つぎはぎ舗装の田舎道から林道程度での乗り心地は、意外なことによろしくない。特に後方からの突き上げが大きく、新ジャンルのクルマだと飛びついたユーザーは落胆したはずだ。


 さほど硬そうに見えない板バネも、車重からすれば頑強きわまりない。乗り心地を狙ったフロントのトーションバーも、それに合わせた硬さに思える。


 おかげで…というべきか、峠道ではホイールベースの短さとフレームのガッチリ感も手伝って小気味良く走る。速度を上げ過ぎると途中からグっと切れ込んだりして、ダブルウィッシュボーンなのに前後リーフリジッド車に通じるクセがあるのも、また四駆らしい。

舗装が途切れて路面が荒れてきた。このエンジンなら、さっさとローレンジに入れてしまおう。コンパクトさと骨太さのバランスが安心感をもたらすのがロッキーの林道探索。

オーナーに徒歩で下見を任せ、店主兼編集者は安全な位置から写真を撮るの図。

【骨太四駆の本領】

 スタイルからして期待できそうな障害地形に乗り入れる。外から眺めると、後足はそこそこ動いているように見えても、すぐに浮いて前進不能となる。前足の動かなさは覚悟していた。


 トレッドの狭さを考慮しても、同じ形式のサスペンションを持つ古い三菱パジェロやいすゞビッグホーンより前後ストロークの総量は小さい。ボディ形状や重量など他の要素を抜きに考えるならロッキーの走破性は劣ることになるが、クロカン走行はそんな単純なものではない。ドライバーの心理面を含めての総合性能だ。




 トルクとレスポンスが物足りないHD-E型の弱みは地形が荒れてくると顕著。高低差の少ない地形でもローレンジ1速固定の走りとなってしまう。それでも粘りが足りず、先を読んで右足を予測的に踏み込んで行かないと、直前の操作では手遅れになる。エンジンそのものが悪いのではなく味付けの問題だ。


 もっとも、多くの自動車が排ガスや燃費対策で線が細い感触となった現在では、気にならないどころか我慢強い部類だろう。




 そんなことだから、ジワジワ這ったり、障害地形をポンと乗り越えることは苦手だ。多少足が浮こうとも、早足でダダーッと駆け抜ける、ジムニー的な走りになってしまう。これはリスクのある操法で、骨太シャシーのタフさで帳消しと考えたい。

フルストローク状態。クロカン四駆として及第点ではあるが、乗っていると「もう一歩欲しい!」と思ってしまう。ダンパーはへたっていたので、オーナーによって純正同等の長さを持つ社外品に交換されている。

 ロッキーらしからぬ(?)新しい試みとして、フルタイム4WD仕様が選べたことは前編で述べた通り。ローレンジなしの単速トランスファとされ、低速で這うことが困難な性格にトドメを刺すかのようだった。


 これにはエピソードがあり、メーカーによるイベントで何台ものロッキーをオフロードコースに持ち込んだ時、公道から管理棟までの取り付け道路すら登れなかったという。コース管理人の奥方が運転を代わってコースまで移動されたそうだ。


 担当ドライバーが不慣れだったことに加え、立ち往生したのは全てフルタイム仕様だったというから状況が見えてくる。


 当時、ロッキー・ユーザーでクロカン派はごく少数だったと記憶している。フルタイム仕様の目的はアンチ・スピン・ブレーキのために前後軸間の直結駆動を解くことだったから、険しい地形に持ち込むモデルではなかった。 


 これらは煮詰められることなく廃止され、保守的な副変速機つきパートタイム式に一本化された。オフロードでは駆動力確保以上に、クラッチに負担をかけずゆっくり走れる“低速性能”が重要だから仕方ない。

フルタイム式に副変速機が備わらないのはなぜか?そんな疑問への回答は図のとおり。トランスファーケース内に、ローレンジ用のカウンターギヤを組み込むか、それともベベルギヤ式のセンターデフを組み込むか、二者択一しかできなかったのだ。

ダイハツ初代ロッキー(F300S型)の走り。

比較に用いたスズキの初代エスクード(TA/TD系)。

 エスクードとの走り比べはあまり意味をなさない。両車とも走破性が販売上の第一義ではないからだ。敢えてそれぞれの特徴を大雑把に記すなら、敏速に足が動いて地形の凹凸を舐めるように進み、意外なほど前進が止まらないエスクード。そしてある段階で必ず腹が着いて亀の子スタックに陥る。


 ドタバタとしなやかさに欠ける足さばきながら、四駆らしい強行突破ができるロッキー。地形の「読み」もジープやジムニーに近い感覚で通用するが、彼らほど限界が高いわけではない。限界近くでギヤ比とかサスペンションストロークの問題が出てしまう。


 同じ排気量でも、エスクードはブリブリ粘って抵抗に打ち勝てるように感じる。こちらもローレンジが低くはないが、早足走りに向いたサスペンションとマッチングが良く、そう感じる部分もある。


 それでも総合的にロッキーの方がクロカン向けと思えてしまう。四角いボディは多少ぶつけても平気そうだとか、目線が高くて運転席からの眺めも四駆らしく、安心感を得られるからかもしれない。


 どうもジムニーの優秀ぶりからエスクードを過大評価してしまうきらいがあって、コンパクトカーのようなスタイルでモーグルを走破すれば「さすがスズキ」と感心してしまう。同じ地形をロッキーが走るのは当たり前に見えてしまって、足が浮いたら「だらしない」とこき下ろしたくなる。デビュー当初の軽いキャッチコピーやCMの印象からすれば見事な健闘ぶりなのに。

あまり車には良くないが、たまには…。これ、池や川ではなく、道にできた巨大な水たまりなんです。(Photo R.Fukuju)

【いまなら本格派】

 ロッキーがより保守的で、もし開発費も掛けず前足までリジッド式の「ミニ・ラガー」であったなら、タフトグランの再来だった。現状では独立懸架の美点を発揮できていないようだから、頑固者に徹しても悪くなかったろう。乗用車としても悪路の道具としても中途半端感が拭えない点は、ダイハツ四駆のDNAのようだ。


 ロッキーは全然ふざけてなんかいない。ラガー譲りの堅牢さや不器用さを残した部分こそが、エスクードのスマートさや、乗用車コンポーネンツのクロスオーバーたちに対して大きな魅力に映る。


 前足がダブルウィッシュボーンというだけで軟弱呼ばわりされたのが平成初頭の四駆事情。打って変わってトヨタ・ランドクルーザーやメルセデスGクラスが同じ構造にして本格派なのだとアピールしている当世、ヘビーデューティの基準も変わったようだ。


 現車を買い求めたオーナーは、何台もの本格四駆を乗り継いでいる。ロッキーを指名買いされたのは相応の理由はあるはずだ。


 そのあたりを尋ねると、首都圏の排ガスに関わる法と条例(自動車NOx・PM法および自治体の乗り入れ規制)のクリアに加え、シャシーの真面目な成り立ちと信頼に足る要素を持っていることに尽きるという。


 試走から5年が経った現在も、ロッキーはオーナー宅のガレージに、もう一台の愛用の日産Y61サファリとともに並んでいる。期待に応えられている証拠だ。初期高齢車の域に入り、部品調達も怪しくなりつつあるF300Sが、全国のユーザーに愛用されることを祈っています。

現在は外装のヒカリモノ(重石)を取り払い、ずいぶん凛とした出で立ち。四駆らしい姿に蘇った幸せな個体と思える。(Photo R.Fukuju)

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