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トヨタ・カローラツーリングとスバル・レヴォーグ、VWゴルフ ヴァリアント、ホンダ・シャトルを徹底比較!「ライバル車比較インプレッション」


日常生活の中で、通勤や買い物、レジャーなどさまざまな用途に使われるコンパクトワゴン。世界各国で愛されるこのカテゴリーのクルマは、それぞれに個性を持つ実力派揃い。国内における人気のライバル車を集め、比較することで新型カローラの実力を明らかにする!




REPORT●佐野 弘宗(SANO Hiromune)


PHOTO●神村 聖(KAMIMURA SATOSHI)




※本稿は2019年10月発売の「新型カローラのすべて」に掲載されたものを転載したものです。

ライバル関係にあるようで微妙に異なる立ち位置

 先行発売したカローラスポーツ(=ハッチバック)も含めた新型カローラの開発コンセプトは「世界でひとつ」である。これまで3種類に分散していたプラットフォームを統一して、デザインも統一。一部で使われた「オーリス」名も廃止して、世界中のカローラを再統一した。しかし、カローラはやはり特別な存在であり、「世界で売れれば、日本は二の次」という態度は許されない。その結果、この十二代目カローラの日本仕様は、ハッチバックがグローバルサイズ、そしてセダンとステーションワゴン(以下、ワゴン)が日本専用サイズで登場することになった。




 今回は新型カローラのワゴンである「ツーリング」を、国内でライバルとなりそうな3台と連れ出したが、いずれも新型カローラツーリングの位置付けとは微妙にズレている。その事実によって、国内ワゴン市場の現状を改めて思い知るとともに、新型カローラの独自性が際立つ。




 国産メーカーがそれぞれ何種類ものワゴンを用意していた全盛期を知る人間にとって、現在のワゴン市場は寂しい限りだ。今回のホンダ・シャトルやスバル・レヴォーグを新型カローラと比較する以前に、国内販売される国産ワゴンは事実上、各社1車種ずつしかない(ジェイドやプリウスαの5人乗りはワゴンかどうか……の議論はあるにしても)。しかも、日産や三菱に至っては、もはや国内向けワゴンを持っていない。




 世界でも欧州だけが一定以上のワゴン市場を堅持する事実は、今回のVWゴルフヴァリアントを筆頭に、ドイツやフランスのワゴンが未だ健在であることからも実感できる。別項の開発ストーリーに登場いただいた寛永敏生主査(新型カローラで欧州向けモデルを担当)も「欧州でも従来のハッチバック需要がSUVに流れているのが明確ですが、走行性能と実用性が高度にバランスしているワゴンは未だに根強い。新型カローラも欧州の販売はハッチバックとワゴンで半々くらいの予定です」と語る。




 国内ワゴン市場が急速に縮小したことは事実だが、北米のように(ほぼ)消滅したわけでもない。限界まで縮小しきったからか、現在生き残っている国産ワゴンには、それぞれ根強い支持があるのも事実である。だからこそ、新型カローラも、日本と欧州にのみワゴンを残したのだ。

 先代ではプラットフォームまで日本専用の5ナンバーワゴンとしてシャトルと双璧だったカローラのワゴンも、世界共通のCセグメントプラットフォーム(=GA-C)を土台とする新型ではさすがに3ナンバーとなったが、相変わらずの日本専用サイズである。そして新型カローラのワゴンは日本と欧州のみの販売なので、欧州向けワゴンも必然的に欧州専用モデルということになる。




 先代プリウスのサイズを参考に日本に最適化したという新型カローラツーリングは、欧州仕様よりも全幅が45㎜狭く、全長はなんと155㎜も短縮されている。だからこそ、新型ツーリングは全幅こそ3ナンバーでも、全長はシャトルと55㎜差……と意外なほど小さいのだ。




 国内向けツーリングより155㎜長い欧州向けワゴンの全長は4650㎜で、本来ならガチンコ競合であるはずのゴルフヴァリアントより75㎜も長い。その理由は前出の寛永主査が開発ストーリーで語っているように、欧州での新型カローラはかつてのアベンシスワゴンの需要もカバーする役割も担うからだ。そのために、CセグメントとDセグメント(VWで言うとゴルフとパサート)の中間的なサイズにあえて落とし込まれている。このように「Cセグの骨格設計を使いつつ、Dセグ需要もうかがう」という位置付けの欧州向けカローラワゴンの商品企画は、ある意味で(先代)インプレッサの骨格設計を使いつつ上級移行したレヴォーグによく似ている。




 ……といったことを考えると、今回の4台がライバル関係にあるようでいて、それぞれ意図するボディサイズが微妙に異なり、新型カローラツーリングを中心として見た時の立ち位置が微妙にズレている理由が理解できるように思う。

試乗車は新型カローラの中でも人気のモデルとなるであろう「ツーリング」の最上級グレードの「W×B」。パワートレーンは燃費と走りの良さを両立したハイブリッド車だ。その静かで力強い加速と滑らかなフットワークでライバルと対峙する。



直列4気筒DOHC/1797㏄


エンジン最高出力:98㎰/5200rpm


エンジン最大トルク:14.5㎏m/3600rpm


モーター最高出力:72㎰


モーター最大トルク:16.6㎏m


車両本体価格:279万9500円


WLTCモード燃費:25.6㎞/ℓ

日本の交通環境に合わせ吟味されたサイズが絶妙

 それにしても、新型カローラツーリングに乗っていると、日本の交通環境を知り尽くしたトヨタが、吟味に吟味を重ねたそのサイズがなんとも絶妙であることに気付く。全長も全幅もさらにひとまわり小さいシャトルの方がより細かく取り回せるのは当然だが、今回の試乗車で言えば、最小回転半径も0.1mしか違わない(カローラの「ハイブリッドW×B」が5.3m、シャトル「ハイブリッドZ」が5.2m)。実際、新型カローラツーリングを首都圏で丸3日間乗り回しても「思った以上に小回りが利くなあ」と感じることは多々あれど、サイズを持て余すことは、当然ながら皆無だった。




 新型カローラツーリングを運転してとにかく印象的なのは、路面にベッタリと低く張りつく低重心な身のこなしだ。GA-Cは低重心であることをなにより重視した設計だが、それは各部品を低く搭載するだけでなく、人間自体もハッキリ低く座らせることも同じくらい重要なキモである。そのドラポジがハイトワゴン的パッケージ思想のシャトルより低いのは言及するまでもなく、ゴルフと比較しても明確に低い。これら2台と比較すると、新型カローラ(とレヴォーグ)は一瞬スポーツカーと錯覚しそうなほど目線が低いのが印象的である。そのぶん高齢者などの乗降性に不安がなくもないが「乗降性や見晴らしにこだわる向きはC-HRをどうぞ」という割り切りもあるのだろう。




 プリウスやC-HR、カローラスポーツに寄せられた市場の声も反映して、この最新カローラでは「目線の動かされにくさ」、「旋回姿勢の決まりやすさ」「ステアリングとタイヤの直結感、接地感」といったポイントで、シャシー開発をさらに進めたという。その効果は今回の試乗でも実感をともなう明確な味として表現できていることは間違いない。

 前後左右の動きが最小限に抑制されたフラットライド感はプリウス以来のGA-Cに共通する美点だが、新型カローラではさらに微妙な荷重移動を、ステアリングやシートから鮮明に感じ取れるようになった。そして、ステアリングは穏やかだがこれまで以上に正確になり、旋回途中に切り増すようなシーンでも強力かつ正確に反応するようになった。それでいて、サスペンションが突っ張るクセは微塵も感じさせず、あくまでしやなかで快適なフットワークに終始する調律は素直に感心する。




 最新Cセグメントど真ん中の骨格設計となった新型カローラと比較すると、Bセグメント由来のシャトルが剛性感や乗り心地で、良くも悪くもひとクラス下であることを実感するのは事実である。




 すでに7年選手のゴルフには、どこかサスペンションチューンで挙動を強引に抑え込んでいるような硬さを感じてしまう。ただ、ゴルフのボディにみなぎる剛性感や操作系に漂うカチッとした堅牢感など、未だカローラにない「イイモノ感」の演出には、VWのノウハウと執念がうかがえもする。




 カローラより半クラス(?)上級に位置付けられるレヴォーグは、その乗り心地や静粛性にもさすがの高級感がある。旧世代の骨格設計だが、それをベースに素直に質量を掛けて強化しているだけに、車重は重めだが、それを「重厚」と換言することも可能。潤いある高級感が醸し出されている各部の肌ざわりもレヴォーグならではだが、走行中の上屋の動きはカローラより明確に大きいのだ。

水平対向エンジンとシンメトリカルAWDで独自の世界を切り拓き、コアなファン層を持つスバルの人気車種。他社に先駆けて搭載した先進安全装備のアイサイトもブランドの信頼度を高めた。今回は1.6ℓターボを連れ出した。



水平対向4気筒DOHCターボ/1599㏄


最高出力:170㎰/4800-5600rpm


最大トルク:25.5㎏m/1800-4800rpm


車両本体価格:291万5000円


JC08モード燃費:16.0 ㎞/ℓ

数値で表現できる部分だけでなく、感受性領域に踏み込んだ

 今回はパワートレーンの魅力も四車四様だった。ツインクラッチ変速機を使うシャトルとゴルフの加減速マナーはなるほどキレがあり、VWの1.4ℓターボはトヨタのハイブリッドよりパンチにあふれる。また、ほどよく回生できる走行パターンであれば、ホンダの1.5ℓハイブリッドも通常の1.6〜1.8ℓを思わせる力感を見せる。スバルの1.6ℓターボは今回のカローラやゴルフより150㎏以上重いレヴォーグでは控えめ感があるもの、滑らかに回り切るエンジンと、アクセルを踏むほど嬉々として曲がる4WD制御はなんともエンスー。過酷な突き上げもドンと受け止めるボディ剛性といい、カローラと双璧のスポーティなドラポジといい、チャレンジングな山坂道でのレヴォーグは今もあのラリーカーの血統を感じさせる。




 現在のトヨタのクルマづくり(=TNGA)は重心高や燃費など数値で表現できる部分だけでなく、前記のシャシー開発も含めて人間の感受性領域に踏み込んだ「味づくり」でもこれまでのトヨタになかった開発に着手している。新型カローラでも、目線の安定感や接地感に加えて、これまでのトヨタでは味わえなかった高速直進性やハイブリッドの熟成極まるドライバビリティには、お世辞抜きで驚かされた。




 少なくとも現在の日本の公道で試すことができる(一部の高速道で実験的に実施中の)120㎞/hまでなら、新型カローラはドイツ車のゴルフより肩の力を抜いたままズバーンとまっすぐ走る。さらに、お馴染みの1.8ℓハイブリッドがこれまでにないほどの精度で右足指の微妙な力加減にドンピシャで反応するのは素直に素晴らしい。このパワートレーンがあればこそ、自慢のスポーツカーはだしの操縦安定性もさらに輝く……というものである。




 ただ、そういうCセグメントど真ん中にして低重心を標榜するGA-Cを土台としつつ、ホイールベースやリヤオーバーハングなど、センターピラー以後を日本専用に切り詰めた新型カローラツーリングでは、その特有の成り立ちが後席空間や荷室にハッキリ影響している。荷室空間が4台中でミニマムなのはひと目で明らかであり、後席空間はレッグルームこそゴルフと同等だがヘッドルームはゴルフに一歩ゆずり、結果的には、荷室も後席も4台中で最もタイトと言うほかない。

 これとは正反対に空間効率で他を圧倒するのが、自慢のセンタータンクレイアウトをフル活用したシャトルである。ボディ後半の低床設計とアップライトな乗員配置が特徴のシャトルは、今回は圧倒的に小さなボディサイズなのに荷室容量はゴルフに次ぐ二番手であり、後席空間の広さは、左右方向を除けば堂々たるトップに君臨する。さらに、内装にもフィットにない立派な専用センターコンソールを奢るなど、シャトルは上級のCセグメント需要に食い込めるクラスレス感が売りである。ほかの3台と正面から較べると、さすがに走行性能や内外装の質感は一歩か二歩ゆずっても、圧倒的な空間効率と手頃な価格によって「一周まわってシャトルで十分では?」と思わせてくれる商品力は侮れない。




 ただ、こうしてCセグメントを中心とした国内外の主力ワゴンと並べてみても、新型カローラの操縦安定性や微妙なドライビング操作にピタリ追従するドライバビリティにおいては、間違いなくトップといえる仕上がりである。もちろん、それでいてシャトルに大きく引けを取らない取り回し性能や、明らかに高価なゴルフやレヴォーグに匹敵する質感や装備など、カローラ伝統の商品力も健在ではある。緊急自動ブレーキの機能や性能、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストによる「半自動運転」の利便性や安定性でも、この分野で先行してきたスバルのアイサイトに、すでに追いつ(き、道路標識認識のなどの一部機能では追い抜)いたと言っていい。




 それにしても、これまでのトヨタ……特にカローラと言えば、走りは普通でも「価格や質感など、コストパフォーマンスと総合的な商品力」で勝負するクルマだったはずなのに、今回はなにより「走り」に魅了されたのだ。そんな新型カローラは、まさに歴史的カローラと言うほかない。

ご存知、世界の自動車メーカーがベンチマークとする、全方位で隙のない仕上がりのワーゲン・ゴルフ。常に目標とされ、持てるすべての性能と特性が解析される。新型カローラの開発においても性能の比較対象として用いられた。



直列4気筒DOHC/1394㏄


最高出力:140㎰/4500-6000rpm


最大トルク:25.5㎏m/1500-3500rpm


車両本体価格:381万円


JC08モード燃費:17.3㎞/ℓ
4車の中で一番背が高く、ハイトワゴンの雰囲気を持つシャトルだが、SPORT HYBRID i-DCDと名付けられたシステ ムは1.5ℓi-VTECエンジン+7速デュアルクラッチミッションを搭載。その走りはHonda DNAによって活発そのものだ。



直列4気筒DOHC/1496㏄


エンジン最高出力:110㎰/6000rpm


エンジン最大トルク:13.7㎏m/5000rpm


モーター最高出力:29.5㎰


モーター最大トルク:16.3㎏m


車両本体価格:260万7000円
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