現在三菱が3本の柱として掲げているのがSUV、EV化、ADASだ。さまざまな自動車メーカーがその在り方を模索する中で、三菱の行こうとする道はどのようなものなのか? ジュネーブ・ショーの会場で開発責任者にその決意を聞いた。
REPORT◎大谷達也(Tatsuya Otani) PHOTO◎佐藤靖彦(Yasuhiko Sato)
こうした電気モーターの特性を生かすことで三菱の4輪運動制御技術はどう進化していくのか? この領域を担当する澤瀬薫CTEに訊いた。
「従来の4輪運動制御技術はメカニズムを基本としていたので、技術的に様々な制約が存在しました。これを電気駆動に置き換えると、技術的な自由度が格段に広がり、従来はできなかったことが可能となります。百瀬が説明したとおりレスポンスや制御性の向上はその最たるものですが、メカニズムで駆動力配分を行うとするとこれまではなくてはならな
かった湿式多板クラッチが不要になるのも大きなメリットです」
ご存じのとおり、湿式多板クラッチは圧着力を制御することで伝達する駆動力を調整するデバイスだが、クラッチを滑らせるため必然的に伝達ロスが生じるほか、レスポンスや耐久性についても制約が存在した。
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電動化された4WDは、いったいどんな走りをもたらしてくれるのか? 澤瀬CTEは「ドライバーの操作に対してクルマの動きが遅れるのは、クルマに重さがあるから。そこに電動化技術と4輪運動制御を入れるとクルマの動きに伴う慣性を打ち消して、タイムラグが限りなくゼロに近い操作感を生み出せます」と説明。いっぽうの百瀬CTEは「これまでSUVは『荒々しい』とか『粗暴』などと言われてきましたが、モーターの低速トルクと制御性を生かすことでもっとスマートでスムーズな走りを実現したい。バッテリーの搭載で重心高が下がってロールが抑制され、旋回中にドライバーのアイポイントが変化しにくくなるのも電動化車両の魅力。アウトランダーPHEVに乗っている家内は『街中での取り回しが容易になった』と喜んでいます」という。こうした技術は今後も順次実用化されていくが「“究極のSUV”最初の1台は、今年55歳の私たちが定年を迎えるまでに商品化したいですね」と打ち明けてくれた。