ドイツは爽やかな初夏の陽気が続き、川で泳ぐ人もちらほらと見かけるほど、暖かい日が続いています。各地ではクラシックカーの野外イベントが毎週のように開催され、冬の間はガレージでじっとしていた古いクルマたちも、この時期になると羽を伸ばすように公道に姿を見せ始めます。
そんな繊細な扱いが必要なクラシックカーたちに混ざって、季節や天候に関係なく、毎日黙々と走り続ける「日常の足として使われている古いクルマたち」が一定数存在します。そんなクルマの代表格が、今回ご紹介するメルセデス・ベンツW114/W115です。
約192万台生産の大ベストセラー
メルセデス・ベンツW114/W115が登場したのは1968年。1973年のマイナーチェンジを経て、1976年まで8年間、192万台近く生産された大ベストセラーです。1968年登場にちなんで「ストローク・エイト(ドイツ語でStrich Acht:シュトリッヒ・アハト)」と呼ばれます。上位車種に比べると小柄、という意味で「コンパクトクラス」との呼び名もありますが、実際は現在の「Eクラス」につながる系譜のミディアムサルーンです。
写真の個体はメルセデス・ベンツ230.4で、1973年から1976年の間に生産されたW115の後期型です。「縦目」と呼ばれる愛嬌のあるフロントマスクが特徴で、今のメルセデス・ベンツにはない、愛らしさを感じさせるデザインとなっています。後期型の特徴として、幅の広いフロントグリル、大型化したサイドミラー、猫耳形状のヘッドレストや、泥や雪が付着しにくい凸凹形状のリアテールランプが挙げられますが、写真の個体のテールランプは前期型のものを引き継いでいますね。
「最善か無か」の時代に生まれた名車
W114とW115の違いは、直列6気筒エンジンを搭載しているか否か、です。直列6気筒エンジン搭載車がW144、それ以外のモデルがW115となっています。写真のメルセデス・ベンツ230.4は、2.3リッターの直列4気筒ガソリンエンジン搭載車です。W115は他に、2リッター・2.2リッターの直列4気筒ガソリンモデルや、2リッター・2.2リッター・2.4リッターの直列4気筒ディーゼル、3リッター直列5気筒ディーゼルなどが用意されていました。