ドイツが誇るスポーツカーメーカーの雄、ポルシェ。50年以上の長きにわたって生産されている911をはじめとして、スポーツSUVの新たなアイコンとなったカイエンやマカン、ポルシェの長年の夢をついに実現したフル4シータースポーツカーのパナメーラ、初代ボクスターの爆発的ヒットで盤石のエントリーモデルとなった718系などのラインナップを揃え、2017年は過去最高の営業利益と24万6375台の新車販売を達成。ポルシェは、かつてないほどの成功を収めています。
しかし、現在の成功が信じられないほど、ポルシェも経営不振に苦しんだ時代が存在しました。特に初代ボクスター登場以前、70年代半ばから90年代半ばまでの期間は深刻で、その状況を打破すべく「911に代わる主力車種を作り上げ、経営不振から脱出する」という目標を背負った、一連のFRモデルがデビューします。今回ご紹介するクルマもそんな時期に発表されたポルシェのひとつ、ポルシェ944S2です。
ポルシェがこだわったトランスアクスル
911に代わる車種を開発するにあたり、ポルシェが選択したレイアウトはトランスアクスルを用いたFRでした。ホイールベースが短く、リアが重く、操縦の難しい911のRRレイアウトは、当時のポルシェにとってゴールではなかったのでしょう。また、944以前のエントリーモデルである914は、操縦性と運動性の両立のためにミッドシップ・レイアウトを採用するものの、それまでのポルシェの特徴であったリアシートが設置できない、トランクが前後に分かれる、など実用性に難がありました。トランスアクスルのFRであれば、前後の重量バランスを適正化でき、操縦性と実用性を両立できると考えたのです。
エントリーモデル・914の後継車として1975年に924、911に代わるフラッグシップとして1977年に928がデビュー。どちらのモデルも、水冷エンジンをフロントに置き、トランスミッションをリアに置く、トランスアクスルを採用していました。トランスミッションを後方に追いやることで、前後の重量配分はほぼ50:50を実現。狙い通りの優れた操縦性を獲得します。