食卓の前に置かれた、赤くて丸っこい14インチテレビに映し出されたカウンタックのテールランプ。私のスーパーカーブームはそこから始まりました。
「なんだあの形は?」という猛烈なインパクト。異界からの乗り物の猛烈な魔力が、小学校五年生のまだまだアホアホでスポンジーな脳みそに速やかに染み渡ったのです。目から入った情報は、その頃の音のイメージと一緒に我が脳みそにアーカイブされます。
「ランボルギーニのお兄さん、おいらとレースをしてみるかい」
ピンクレディーの歌声です。ドリフターズの西遊記。そう、いかりや長介が三蔵法師、孫悟空が志村けん、仲本工事が沙悟浄、高木ブーが猪八戒、役が足りなくなって加藤茶は「カトー」というよくわからない役で出ていたあの番組のエンディングテーマです。
そら、ランボルギーニでも筋斗雲とレースしたら勝てません。空を飛ぶのは反則です。地に足をつけて戦ってほしいものです。
キャノンボールと漆黒のカウンタック
レースというと、時代は少し後になるんですけど「キャノンボール」という映画がありましたね。あれの冒頭、ハイウェイを疾走する黒いカウンタックのシーンがものすごくかっこよくて大好きでした。
「横に並んだら窓がすーっと開いて、ドライバーと窓越しに目が合った次の瞬間、ニヤッと笑って、一気に加速してぶっちぎられた」
これって、クルマ好きだと誰もが誰かから「このあいだ高速道路でさぁ…」なんて、聞いた事のあるパターンというか…。既視感の塊のようなシチュエーションなんですけど、それの原典というか原風景というかおおもとのイメージは、もしかしたらあの並びかけたパトカーを「がるろおぉーん」と加速して置き去りにする黒いカウンタックなんではないかな、と思います。
カウンタックにはピンクなレディーがよく似合う?
あのカウンタックにも魅惑的な美人が二人乗っていまして、取り締まりのお巡りさんもそのめくるめくフェロモンパワーでハラホロヒレハレな感じにされていたわけです。そう、オビ・ワン・ケノービのフォースに操られてあっさり通行を許可したトルーパーのように。つまり、やはりカウンタックにはピンクなレディーがよく似合うんですね。「かうんたく」は「麗人」にかかる枕詞、なんて古典の授業で習ったような気もします。知らんけど。