ホンダS800の周りには、スポーツカーが憧れだった時代の空気がいまも漂っている気がします。軽量コンパクトな車体、800ccで70馬力を発生するオートバイのようなエンジン、そしてフロントガラスの向こうに昭和40年代のハイウェイが見えそうなコックピットの佇まい。
どこをどう切り取っても楽しさ以外の要素が見当たらない、そんなS800のオーナー岡本祥太さんにお話をうかがいました。
──S800との馴れ初めは?
実はこのS800、年上なんですよね。70年式で僕が72年なので。それまで乗っていたのはスターレットやジムニー、会社に入ってからはRX-7に乗ってました。あの頃はバブルの名残が残っていて、仲間内でもレースしてる人がいたり、ジェットスキーで遊んだりと。そんな人達と遊んでるうちに、川重OBでJETSKI屋のFさんと知り合いました。
カワサキのエンジニアでありながら大のホンダ党で、現役時代からホンダのバイクや車を乗り継いでいて、とくにホンダS800に関してはサラリーマン時代から自宅ガレージでフルレストアをする程思い入れが強く、独立後もJETSKIの店なのに何故か店内に車があるちょっと変わった店でした。
最初はJETSKIの客として行っていたんですが、そのうち旧車イベントとかにRX-7で付いて行くようになり、次第に旧車の魅力に引き込まれていきました。当時、何故か店内でトヨタS800(ヨタハチ)のレストア中で、その作業を手伝ううちにレストア途中のそのヨタハチをフルローンで買ってしまいました(笑)。でも完成間近にちょっと試乗してみたら、ボディーが初期のモノコックですから、段差を乗り越える度にボディーがよれて、フレームのあるホンダSと比べるとこれがぜんぜん気に入らなかったんです。エンジンは空冷2発で好きだったんですが…。どうしよう、って言ってたらFさんが一言「ほなお前、エスハチにしとけや」って(笑)。