ランチア・フルビアを探し始めたきっかけは、新婚旅行でイタリアのトスカーナに行ったときのことだった。
新鮮だった素のフルビアとの出会い
フィレンツェ郊外の町の駐車場に、レンタカーのフィアット500を停め、妻と一緒に目的のお店に向かって歩き出すところだった。クラシックスポーツカーらしい特徴的なエンジン音が響き、駐車場から1台のクルマが動き出した。反射的にカメラを取り出してレンズを向けると、そこには今までに見たことがない、絵の具のような緑色のランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3があった。イタリア人らしい中年の夫婦が、買ったばかりのショッピングバッグをリアシートに載せて楽しそうに乗っている。ただ、それだけの景色だが、私の目にはとても新鮮に映った。
ラリーのイメージが強いランチア
ランチア・フルビア・クーペは、一般にモンテカルロラリー等で活躍した「ラリーカーのベースになったクルマ」としてよく知られている。
クラシックカーイベントで見かけたことのあるランチア・フルビアは、どれもそんなラリーのイメージを前に押し出したクルマが多かった。イタリア車らしい赤いボディに貼られた多数のステッカー、マッドフラップ、バンパーレスに、追加のドライビングランプ。わかりやすい格好の良さなのだが、数多くあるラリー仕様のフルビアには正直食傷気味だった。
アンダーステイテッドなランチア
ランチアと聞いて、多くの人が思い浮かぶのはストラトス、037ラリー、デルタS4などのWRCを制したブランドのイメージだろう。しかし、それ以前のフィアットに買収される前のランチアは、上品だが控えめで、精度の高い最先端の技術を惜しげなく使う、妥協の無い高品質な車を作るメーカーだった。ラリー仕様を否定するつもりはまったく無いが、私にとっては、ロードカーのランチアにはそちらのイメージを求めてしまう。
そのイメージを、フィレンツェで見かけたフルオリジナルのシリーズ3には感じることが出来た。夫婦で楽しそうに乗っているというのも、男気溢れるラリーカーのイメージからかけ離れていて好印象だった。