ある程度のクルマ通の方ならご存知であろうカロッツェリア。イタリア車=カロッツェリアが手がけたデザインのボディ、と連想される方も少なくないのでは。その中でもとりわけ有名なのは、ピニンファリーナやベルトーネなどが挙げられ、フェラーリやランボルギーニなどのスーパーカーから、フィアットなどの量販車まで幅広く手がけてきた。
元はボディデザインを専門とした集団が始まりであり、自動車メーカー自身が仕上げたそれとは一線を画す美しさが特徴である。
シンプルだけど面で見せる立体的な陰影が美しいフェラーリ 275GTS
しかしながら、競争が激化してきた自動車業界はコストが高くつくカロッツェリアに変わって、自動車メーカー内にデザイン部門を設けることによって安く納めるようになる。そうした時代風景の中、ベルトーネは2度の破綻。ピニンファリーナはインドのマヒンドラグループに、 巨匠ジョルジェット・ジウジアーロ氏が設立したイタルデザインもフォルクスワーゲングループに買収されてからは、カロッツェリアが手がけるイタリアンカーはすっかり姿を消してしまったのである。
フェラーリ初のミッドシップレイアウトを採用したディーノ 246GT
これは多くのイタリア車ブランドをもつ、FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)も原因の一つであろう。2000年代には一時期経営を立て直したフィアットグループが、2014年に米クライスラーを傘下に収める前後あたりからどうもパッとしなくなった。分社化したフェラーリは好調を維持しているものの、ピニンファリーナ製ではないボディデザインはかつての優雅さや美しさから少しかけ離れたものになってしまったように見受けられる。どことなく大味になってしまってように感じるのは筆者だけであろうか。
これにはミレニアル世代の富豪層が台頭してきたことも関係してくるようにも思える。若い世代は繊細な高級感や美しさよりも、わかりやすいインパクトや派手さを好むようだ。