ドイツの人々はとにかく、壊れない、頑丈な道具を好みます。ドイツで売られている工具を見ると、ドライバーやスパナひとつとっても「ここまでゴツい作りにすることはないのでは?」と思うくらい、とにかく頑丈で重く、耐久性を重視して作られています。
ドイツの有名な登山用バックパックのメーカーに、ドイターという会社があります。耐久性を重視した頑丈な作りと、長時間背負っても背中が蒸れにくい設計で知られていますが、同クラスの価格帯の他社製品に比べて重量があります。道具は軽ければいいというものではなく、耐久性が犠牲になるくらいなら多少重くても構わない、といった価値観がドイツでは好まれているようです。
古いボルボを日常的に見かけるドイツでも希少なボルボ780
そうした理由からか、ドイツではボルボが人気です。多少重くても、頑丈で、耐久性に優れた道具としてのクルマ。かつてのメルセデス・ベンツに通じる質実剛健さを備えたクルマ作りが、ドイツ人の心の琴線に触れるのでしょうか。現行の車種よりもかつての850や900シリーズ、240といった少し前のモデルが、日常の足としてガシガシ酷使されているのをよく見かけます。ドイツでは週末に自然の中で過ごす人も多いので、そうした人々にとって、ステーションワゴンタイプのボルボは頼りになる相棒となっているのでしょう。
ところが先日、ベルリンにてとある一台のボルボを見かけて思わず「あっ」と声を上げてしまいました。直線基調のシャープでスクエアなデザイン。ゆったりとしたサイズ感に大きめのドアが2枚。そしてCピラーに取り付けられたイタリアの名門カロッツェリア、ベルトーネのエンブレム。ウッドパネルと革張りのシートによる色気のあるインテリア。日本でもめったに見かけることはなく、少し古いボルボが日常的に街中を走り回っているドイツでも希少な、ボルボ780との出会いでした。