燃費が良くてパワフルでもある「ハイブリッド車」は、EVが伸び悩む中でやはり注目すべき存在です。しかしハイブリッド車の好燃費を支える「駆動用バッテリー」は、電池であるがゆえに必ず劣化しますし、その交換費用もかなり高額なはず。ハイブリッド車の駆動用バッテリーはどのぐらいの期間で寿命を迎え、交換にはどれぐらいの費用がかかるのでしょうか? 専門家が解説します。
- ハイブリッド車には「2種類のバッテリー」が存在する
- 近年のモデルなら駆動用バッテリーの寿命を気にする必要はほとんどない
- 中古のハイブリッド車は「保証付き」のほうが安心できる
ハイブリッド車のバッテリーの寿命はどれくらい?
ハイブリッド車には、通常の車と同じ補機用12Vバッテリー(電装品に電力を供給するためのバッテリー)のほかに、「駆動用バッテリー」が搭載されています。ハイブリッド車の好燃費を支えるこの駆動用バッテリーの寿命は、果たしてどれぐらいなのでしょうか?
補機用バッテリーと違い、駆動用バッテリーの寿命は長い
ハイブリッド車には、ヘッドランプやカーオーディオ、パワーウインドウなどのさまざまな電装品に電力を供給する補機用12Vバッテリーのほかに、車を走らせるための「駆動用バッテリー」が搭載されています。
駆動用バッテリーは、補機用12Vバッテリーのように3~5年程度で寿命を迎えてしまうものではありませんが、かといって永久に使えるものでもありません。そして駆動用バッテリーの寿命が近づいてきた際には「徐々に燃費が悪くなる」「走行中にエンジンがかかる頻度が高くなる」などの問題が発生することが予想されます。
そのような重要部品である駆動用バッテリーの寿命=普通に使える時間は、いったいどれぐらいなのでしょうか?
結論から申し上げると、ハイブリッド車の駆動用バッテリーの寿命は「車そのものの寿命と同じぐらい長い」と考えられます。
世界初の量産ハイブリッド車として1997年にデビューした初代トヨタ「プリウス」の駆動用バッテリーは「数年で劣化してしまった」というケースもあったようで、つい最近まで交換保証の対象となっていました。しかし、その後、バッテリー製造に関する技術は大幅に進化しました。また、バッテリーへの電気の出し入れの技術も同様に進化しています。フルハイブリッド車といってもバッテリー容量はEV用のそれと比べると1/30~1/40程度の小容量のものが大半で、しかもその容量をカツカツに使うような制御はしていないのです。
そのため現在販売されているハイブリッド車の駆動用バッテリーは、もちろん各ユーザーの使い方にもよりますが「廃車まで無交換で大丈夫」というケースがほとんどであるほどの長寿命になっています。
普通の使い方をする限りは「生涯無交換」でも大丈夫なはず
ネットで「ハイブリッド車 バッテリー 寿命」というようなキーワードで検索をかけると、「駆動用バッテリーの寿命は5年または10万km」としている記事が上位に表示されます。そのため「……ウチのハイブリッド車のバッテリーは大丈夫だろうか?」と不安になる人も多いと思いますが、5年または10万kmというのはあくまでも「メーカーの保証期間」です。
例えばトヨタのハイブリッド車の場合、メインバッテリー(駆動用バッテリー)の保証修理が受けられるのは「新車から5年間または10万km走行時点のいずれかの早い方まで」と公式サイトに明記されています。しかしこれは単なる保証期間の話でしかなく、実際は、100万km(地球25周分の距離)走れるかどうかはさておき、少なく見積もっても30万kmは普通に使えるだろうと考えられます。なぜならば、世の中にはすでに30万kmほど走行しているトヨタ「プリウス」やホンダ「アコード ハイブリッド」などのタクシー車両も数多く存在しているからです。
車の一般的な部品のメーカー保証は、たとえばトヨタの場合、3年または6万kmですが、エンジンやトランスミッションなどの重要部品は特別保証として5年または10万kmとなっています。ハイブリッドの駆動用バッテリーはエンジンと同じ保証期間です。エンジンの寿命が5年10万kmより長いのと同様に、ハイブリッドの駆動用バッテリーの寿命も保証期間より長いのです。
つまり、愛車を40万kmも50万kmも乗るつもりがある場合は別ですが、最高でも20万km程度までしか乗らないという一般的な使い方を想定するのであれば、ハイブリッド車の駆動用バッテリーは「生涯無交換でも大丈夫」ということになります。
マイルドハイブリッド車に使われているバッテリーの寿命は?
ここまではストロングハイブリッド(モーターだけでも車を走らせることができるハイブリッドシステム)の駆動用バッテリーの寿命について考えてきましたが、世の中の車には「マイルドハイブリッド」という仕組みが採用されていることもあります。マイルドハイブリッドは、ストロングハイブリッドと違ってモーターだけで車を走らせることはできないのですが、駆動補助用バッテリーと小型モーターが発進や加速などを効果的にサポートすることで、より力強く、より経済的に走ることが可能になります。
そしてスズキを中心に各メーカーが採用しているマイルドハイブリッドシステムの駆動補助用バッテリーの寿命についても、さほど心配する必要はありません。
初期のマイルドハイブリッド車では「10年程度でバッテリーが寿命を迎え、新品バッテリーに交換するのに10万円ほどかかった」というケースもあったようです。しかしこちらもストロングハイブリッドの駆動用バッテリーと同様に技術の進化が続いています。
そのため、現在新車として販売されているマイルドハイブリッド車の駆動補助用バッテリーも、最高でも20万km程度までしか乗らないという一般的な使い方を想定するのであれば――もちろん例外はあるでしょうが、基本的には「生涯無交換でも大丈夫」ということになるはずです。
ハイブリッド車のバッテリー交換はどこで?費用は?
前述したとおり、ハイブリッド車の駆動用バッテリーの交換が必要になる機会はほとんどないと考えられます。しかし、もしも交換しなければならなくなった場合は、どこで交換作業が行えるのでしょうか? またその際にかかる費用はいくらぐらいになるでしょうか?
高電圧ゆえ触ると危険! 交換はプロに任せよう
基本的には廃車にするまで、あるいは売却するまで、ハイブリッド車の駆動用バッテリーは無交換で使い続けることができると考えられます。とはいえ希にですがバッテリーに何らかの不具合が発生し、交換を余儀なくされるケースもなくはないでしょう。
もしもそうなった場合、交換作業はD.I.Y.で行うのではなく、正規ディーラーまたは認証・指定工場など設備の整った工場に依頼する必要があります。補機用12Vバッテリー(エンジンルームの隅などにある四角い小さなバッテリー)は、車に詳しい人であればD.I.Y.で交換できますし、詳しい人であれば、大きな危険は伴いません。しかしハイブリッド車の駆動用バッテリーは高電圧であるため、素人が触ると大変な事態が発生してしまう可能性があります。そのためハイブリッド車の駆動用バッテリーの交換は、絶対に専門家に任せるようにしてください。
保証期間終了後の交換にかかる費用は20万~30万円?
ストロングハイブリッド車の駆動用バッテリー交換にかかる費用は、実際に交換したという例がきわめて少なく、また少ないがゆえにメーカーも特には発表していないため、正確な金額は不明です。またそもそも、例えばトヨタのハイブリッド車の場合は前述のとおり「新車から5年間または10万km走行時点のいずれかの早い方まで」は、何か不具合が発生したとしても保証が適用され、無償で交換されることになります。
しかし保証期間が過ぎた後に万一(本当に、万一)駆動用バッテリーを交換する必要が生じた場合にかかる費用は、おおむね20万~30万円ほどであると推測されます。この金額は、日産が電気自動車「リーフ」を対象に行っている駆動用バッテリーの有償交換プログラムの金額から類推したものです。
同プログラムの場合、40kWhの新品バッテリーへの交換費用が82万円(※2018年3月時点)。EV用よりは圧倒的に容量が小さい1~2kWh程度のハイブリッド車用駆動バッテリーは本体価格がおそらく15万円前後で、その交換工賃と、バッテリーに付随する部品の価格と交換工賃がおおむね5万~15万円ほどであると考えると、総額は20万~30万円になるだろうという計算です。
とはいえここまで繰り返してきたとおり、最近のハイブリッド車の駆動用バッテリーを交換することはほとんどないため、この金額を重く受け止める必要はありません。
またマイルドハイブリッド車に使われている駆動補助用バッテリーも、保証期間終了後に交換するとなると10万円ほどはかかるようですが、こちらも最近のモデルであれば実際に交換することはほとんどないため、過剰な心配は不要です。
中古ハイブリッド車のバッテリーはどう考えたらよい?
ここまでは「ハイブリッド車を新車として購入する場合」について考えてまいりました。しかし「中古のハイブリッド車」を購入する場合には、駆動用バッテリーの劣化や不具合、交換作業や費用などについてどう考えるべきなのでしょうか?
メーカーの新車保証期間がたっぷり残っている年式を狙いたい
ここまで繰り返し述べてきたとおり、最近のハイブリッド車の駆動用バッテリーは短期間で劣化してしまうことはほとんどなく、また新車時から5年間または10万kmまでなどのメーカー保証も付帯しています。そのため新車ではなく中古のハイブリッド車を購入する場合においても「基本的には特に心配する必要はない」というのが結論になります。
しかし中古車は、新車を買う場合と違って「どうしても心理的な不安がつきまとう」というものでもあるでしょう。
そのため中古のハイブリッド車を検討するにあたって、もしも「購入後、同型車種よりかなり燃費が悪い」「夏場でもないのにエンジンのかかる頻度が高くなってしまった」など、駆動用バッテリーが劣化した場合特有の症状が出やしないかと心配な場合には、下記の基準に基づいて中古ハイブリッド車を選ぶようにするといいでしょう。
ほとんどの国産ハイブリッド車の駆動用バッテリーには、「新車から5年間または10万km走行時点のいずれかの早い方まで」というようなメーカー保証が付けられています。この期間内であれば、駆動用バッテリーに万一何らかの不具合が発生したとしても、無償での保証修理が行われるわけです。
であるならば、初度登録から1~2年ほどしか経過していない高年式中古車だけを購入対象にすれば、中古車であっても購入から3~4年間は、駆動用バッテリーの交換コストを心配する必要がなくなります。実際には5年程度でバッテリーが大きく劣化することはほとんどないのですが、こういった高年式中古車を選ぶようにすれば、心理的にはかなりラクになるでしょう。
「認定中古車」であれば心理的にも安心しやすい
また各メーカーが展開している「認定中古車」であれば、ハイブリッド機構に対しての保証が付帯しているのが一般的です。例えばトヨタ認定中古車には「中古車ハイブリッド保証」という制度があり、初度登録年月から10年目まで、または3年間の長いほうまで(ただし累計走行距離20万km以内)、駆動用バッテリーやハイブリッドコンピュータ、バッテリーコンピュータ等々の部位が無償で保証されます。またホンダ認定中古車にも同様のハイブリッド機構保証がありますが、こちらは走行距離無制限です。
とはいえ「ハイブリッドシステム警告灯は点灯していないが、なんとなく燃費が悪化した気がする」というレベルの劣化では保証適用とはならないはずですが、いずれにせよ「新しいモノ」あるいは「保証付きのモノ」を選ぶようにすれば、中古車であっても駆動用バッテリーについて心配する必要はさほどありません。
「欲しい車が高い…」「予算オーバー」
でも、あきらめることはありません!
今利用が急増している、新しい車の持ち方があるのをご存じですか?
それは車のサブスク、カーリースです。
カーリースは月額料金の支払いだけで車を持つことができ、料金は最初から最後までずっと定額です。
そして、車両本体価格の全額を負担する必要がないので、「買えない」「ローンが組めない」と思っていた車にも、無理せず乗ることができます。同じ車でも、カーローンの月々の返済額とカーリースの月額料金を比べたとき、リースのほうが安く抑えられる、ということがあるのです。
カーリースを検討するなら、おすすめは「おトクにマイカー 定額カルモくん」です。
定額カルモくんで、あの車にいくらで乗れるのか?
知りたい方は【こちら】から料金シミュレーションできます。
サービスガイド(パンフレット)もございます
買うのとカーリースって何が違うの?なぜそんなに人気なの?といった疑問にお答えしています。また、大手カーリース各社との料金・サービス比較も掲載しています。ぜひご覧ください(郵送もダウンロードも可能です)。
よくある質問
ハイブリッド車の駆動用バッテリーの寿命に関連して、よくある質問と回答をまとめました。
Q1:ハイブリッド車のバッテリー寿命は何でわかる?予兆は?
A:具体的な事例は多くないものの、構造的には駆動用バッテリーが劣化すると充電と放電がうまくいかなくなるため、徐々にですが燃費が悪化していくはずです。また信号待ちなどでアイドリングストップしている時間が短くなってきたり、長い上り坂を走っている途中でいきなりエンジン音が大きくなったりするのも、駆動用バッテリーの劣化の予兆です。そして最終的には警告灯が点灯します。
Q2:ハイブリッド車のバッテリーが壊れたらどうなる?交換しないとどうなる?
A:ハイブリッド車は駆動用モーターがエンジンスターターの役割を果たしているため、完全にバッテリーが壊れてしまうとエンジンがかからなくなり、走行不能となります。その状態になってしまうとバッテリーを交換しない限り、再び走り出すことができません。
Q3:ハイブリッド車のバッテリー上がりは自然回復する?
A: 補機用12Vバッテリーも、一度上がってしまったバッテリーが自然に回復することはありませんが、ハイブリッド車の駆動用バッテリーも同様に、上がってしまったものが自然に直るということはありません。ただし、次の質問の答えにあるように駆動用バッテリーが自然放電で完全に上がってしまうということは、ハイブリッドシステムの故障以外には構造的に起こりにくいことです。
Q4:ハイブリッド車に乗らないとバッテリーは上がる?
A:補機用12Vバッテリーは、車を使用していないときにも暗電流(微弱な電流)を消費しているため、長期間乗らないままでいるとバッテリー上がりを起こすことがあります。しかし駆動用バッテリーは暗電流がほとんどないため、完全に上がることはほぼありません。また「残量0%」と表示されていても実際はまだ残っていますし、長期間放置していたとしても、エンジンが掛かればすぐに充電されます。
※この記事は2024年6月時点の情報で制作しています