高速バス利用時の悩みとして挙げる人が多い、乗り物酔い。
なぜ酔ってしまうの? 少しでも気持ち悪さを和らげる方法は?
乗車前と乗車中、気をつけるべきポイントを、専門家に教えてもらいました。
【アンケート調査】高速バスで「バス酔い」しますか?
乗り物酔いには人によって個人差があります。
ちょっとでも車に乗ると気持ち悪くなってしまう人もいれば、どれだけ揺れても平気な顔をしている人も。
本題に入る前に、まずは高速バスユーザーの皆さんが、どれだけ「バス酔い」しているのか、聞いてみました。
「高速バスで「バス酔い」をしますか?」
ご意見お聞かせくださーい!
— バスとりっぷ (@bustrip_news) 2017年11月14日
高速バスで「バス酔い」をしますか ?
「全くしない」は56%。
程度の差こそあれ、44%の人がバス酔いの経験ありとの結果が出ました。
そんな多くの人を悩ませるバス酔いには、どういう対策をするのがベストなのでしょうか?
今回は、「のだ耳鼻咽喉科」の野田哲哉先生にお話を伺いました。
そもそも乗り物酔いはなぜ起こるの?
具体的な対策の前に、まずは敵を知ることから。
乗り物酔いとは、そもそもどういう状態で、何が原因で起きるのでしょう?
「乗り物酔いの原因は、人間が自分の調節能力を遥かに越える揺れを受けることです。乗り物が動いている時には、体や目、胃腸が揺れており、それによって平衡機能障害を起こしています。激しい揺れが長い間続くと、吐き気や嘔吐などの胃腸障害の症状が出やすくなります。」
慣れれば平気!? 酔いやすい人や時期
酔いやすさは、体質や体調などにも影響されます。自分が乗り物酔いに強い体質か弱い体質かを、知っておくことも重要です。
「乗り物に酔いやすい人と酔いにくい人では、平衡機能にはほとんど差がありません。私の研究では、脳内での平衡機能と自律神経(胃腸)の結びつきが強い人が、酔いやすい人。2つの神経系の結びつきが強い人は、揺れの感覚の胃腸への影響が大きくなるはずです」
さらに、年齢によっても酔いやすさは変わってくるそうです。
「乗り物酔いは2歳くらいから始まり、小学校高学年から中学生が最も酔いやすい時期です。女性のほうが酔いには弱く、妊娠中、特につわりのある時期は酔いやすいです。ただ、何回も乗り物に乗っているうちに、抵抗力が強くなっていきます」
「慣れ」で克服できる場合もあるようですが、数をこなせば必ず治る......というわけでもありません。
それでは、長時間のバス移動で酔わないための対処法にはどんなものがあるのでしょうか?
これで安心!? 乗車前にやるべきバス酔い対策
酔い止めは乗る前早めに飲んでおく!
薬は、飲んですぐ効果が出るものではありません。飲むタイミングにも注意が必要です。
「酔ってからでも薬の効果はありますが、予防のためには効果の出はじめる時間から逆算して、乗車する30分~1時間前に服用しましょう。乗車前の待ち時間を、うまく使ってください」
お腹の状態は満腹も空腹もダメ
お腹が空いていると酔いやすくなりますが、逆に満腹もNG。中間の状態に保っておきましょう。
「空腹では血糖値が下がって脳の働きが悪くなるため、満腹では胃の揺れが大きくなるため、酔いやすくなると考えられます。乗車前やサービスエリアでの休憩時には軽く食事するとよいでしょう」
走行中に酔ってきた......そんな時は?
乗車前の対策はバッチリしたのに、走行中にやっぱり気持ち悪くなってきた......。そんな時は、すぐに酔い止めを服用。
それでも気持ち悪かったら、以下の方法を試してみてください。
「なるべく遠くを見ると良い」は本当だった!
もっともポピュラーな対策は「遠くを見る」ことでしょう。これには効果があり、その根拠もあるそうです。
「乗車中は自分の両眼自体が揺れているので自覚はありませんが、目に映るものは固定されていても、不規則に揺れているのを見ているのと同じ。人間の眼球を動かす能力には限界があり、激しく動くものは目で追いきれません。それによって、目の平衡機能障害が大きくなり、酔いやすくなるのです。遠くの風景など距離があるものは、揺れても目で追うことができます。なので、目を揺らさないようにして、遠くの風景を見ましょう」
では、カーテンが閉まっていたり、景色が見られない夜行バスの場合は?
「目をつぶっても、酔いは緩和されます。そのまま眠ってしまうのがベストですが、眠れなくても頭がボーっとしてくると、意識も薄くなって気持ち悪さを感じづらくなり、少し楽になります」
揺れないようにしっかり頭や身体を固定する
身体や頭の揺れ自体を抑えることも重要だそうです。
「揺れが大きければ大きいほど酔いやすくなります。気持ち悪くなってきたら、シートに頭を付けるなどして頭をできるだけ揺れないようにしてください。リクライニングは倒しておいたほうが、頭を固定しやすくなります」
【まとめ】バス酔い対策はこうすればOK!
野田先生のアドバイスを、まとめてみましょう。
乗車前や休憩時には──
・乗車30分~1時間前に酔い止めを服用
・空腹も満腹もNG。軽食をとる
乗車中に酔ってしまったら──
・遠くの景色を見る、あるいは目をつぶる
・目や頭を極力揺らさないようにする
長距離移動が多く、途中下車も自由にできない高速バス。
「酔ったらどうしよう......」と心配な人は、ぜひこれらの方法を実践してみてください。
【医師紹介】
野田哲哉先生
のだ耳鼻咽喉科の医師でありつつ、20年にわたって乗り物酔いを研究。
「平衡機能障害と嘔吐―動揺病の発症についての私見―」など、多くの論文を発表するとともに、HP「乗り物酔い研究室」でその成果を公開している。
乗り物酔い研究室
文/風来堂 イラスト/室崎ランコ