12月6日(木)、ジェイアールバスグループ9社で運転競技会が開催されました。
ジェイアールバス各社で個別に実施されていたこの競技会、全国大会としては、昨年に続き2回目です。当日は、9社から選抜された運転士が集まり、運転技術を披露しました。関係者のみの競技会ですが、今回バスとりっぷ編集部では、その様子を取材してきました。
全国ジェイアールバスグループ運転競技会に選び抜かれた15名の選手が集合!
会場は、お台場の東京臨海副都心イベントスペースP区画。当日は、あいにくの雨でした。テントスペースにて10時から開会式が始まります。
ジェイアールバス各社の重役の方々、来賓、取材陣に囲まれ、着席しているのは、各社から選び抜かれた15名の選手たち。ジェイアールバス関東の中村社長のあいさつ後には、選手宣誓も! ジェイアールバスグループの顔である運転士として、そして高い運転技術を競う選手として、正々堂々と競技を行なうことを誓いました。
競技会は、高速線の部、一般線の部に分かれており、筆記試験、実技競技があります。筆記試験は12月5日に行なわれており、この日は実技競技のみ。実技試験は路上競技と、構内での前進後退スラロームと隘路通過・方向転換(タコつぼ)の2つです。
それぞれの競技を見学しましたので、その様子をレポートします。
安全確認と丁寧なアナウンスが印象的だった「路上競技」
「路上競技」では、会場の外を実際にバスで走行し、100点満点の加点方式で採点されます。
採点項目は、出発点呼、お客様乗降場面、トランクの閉鎖確認、マイク放送案内などの接遇レベル。それに加え、今回新たな試みとして「通信ドライブレコーダー」を使用し、全体的な乗り心地、ETCレーン通過速度、走行速度、高速道走行時の運転動作、左右折時などの安全確認を審査員が乗車せずに審査します。
この競技では、来賓や取材陣もバスに乗車が可能とのこと。高速線の部の競技で乗車させてもらいました。
審査は乗車前の出発点呼からスタートしています。点呼も安心・安全のために、重要な任務の1つ。競技とはいえ、真剣そのものです。
点呼が終わると、乗客を乗せて会場を出ます。競技中は、運転技術や走行速度などだけでなく、安全確認をきちんと行なっているかや社内アナウンスの接遇なども審査対象です。
そのため、走行後間もなく「本日運転を担当いたします乗務員の○○と申します……」と、実際の高速バス乗車時と同じアナウンスが始まりました。その後も、車内設備の案内や、乗客を気遣うアナウンスは続きます。
しかも、競技中は「前方車両注意」「カーブ注意」「制限40!」「サイドブレーキよし!」「左よし右よし前方よし」などすべての安全確認を口にしながら走行していましたので、選手は想像以上にしゃべりっぱなしで忙しそう。にもかかわらず、車内アナウンスは丁寧で運転もスムーズだったのはさすがです。
そして、実際に安全確認を口にしているのを聞くと、気を抜くことなく常に安全に気を配っていることがよくわかりました。ちなみに、今回乗車したバスの選手は、審査対象外の一般道を走行中もしっかり口に出して安全確認を行なっていたのも印象的でした。
バスは、首都高台場入口→首都高芝公園出口→一般道(審査対象外)→首都高芝公園入口→首都高台場出口→会場、のルートで走行。所要時間は35分ほどでした。
高い運転技術を目の当たりにした「前進後退スラローム」
構内で行なわれた競技「前進後退スラローム」では、選手の高い運転技術を見ることができました。
競技は、パイロンの間をスラローム走行し、前進停止位置で左右のバイロンの間に停車。その後は、バックでパイロンの間をスラローム走行、ゴール地点で左右のパイロン間に停車します。制限時間は8分です。
第2回全国ジェイアールバス運転競技会12月6日(木)に開催された「第2回全国ジェイアールバス運転競技会」の様子です! 大きな車体にもかかわらず、見事な後進スラロームでした!
バスとりっぷさんの投稿 2018年12月10日月曜日
採点では、速さよりも安全・確実性を重視し、制限時間は長めに設定、パイロンへの接触に対しての減点を重くしているそう。
パイロンに接触することなく、バックでもすらすらと運転する高い技術は、車を運転しない私にとっては、まるで神業のようでした。
ついつい応援したくなった「隘路通過・方向転換(タコつぼ)」
同じく構内で行なわれた「隘路通過・方向転換(タコつぼ)」は、スタート地点から、パイロンと高さ3mの棒でつくられた隘路(あいろ:狭くて通行の困難な道)を通過し、16m×14m四方(一般車は14m×12m)のタコつぼエリアへ。T字型のタコつぼエリア内で転回し、再度隘路を通りゴール地点へ戻るという競技。制限時間は12分です。
こちらの競技も、大変高い技術が必要です。
というのも、スタート直後の隘路に加え、タコつぼ内も何度もバックをしながらやっと180度転回できる広さな上、タコつぼの出入り口も3.5m(一般車は3m)と、バスが通るには極めてギリギリの幅。
高い技術を持った選手たちでも、パイロンに一度もぶつからずに、この競技を終えるのは、一筋縄ではいきません。常に「パイロンにぶつかりそうでぶつからない」といった様子。ときには、ぶつかってしまうこともあり、見ていてちょっぴりハラハラ、心の中でつい応援してしまうような競技でした。
いよいよ結果発表! 今年の優勝者は……?
すべての競技が終わると、日野セレガに搭載されたドライバー異常時対応システム(EDSS)の実演や、デンソーセールスの通信型ドライブレコーダーの実も行われました。
その後はいよいよ、閉会式と結果発表です。
一般線の部と高速線の部からそれぞれ、金賞、銀賞、銅賞が発表、表彰されます。
優勝したのは、高速部門では、ジェイアール九州バス代表、博多支店の坂元さん、一般線の部では、ジェイアールバス東北代表、白沢事業所の今さん。銀賞、銅賞の選手たちと共に、大きな拍手に包まれました。
2018年3月に30周年を迎えたジェイアールバス。30周年を記念して何ができるか検討した結果、安心・安全を提供することが結果として1番お客様のためになると、この全国大会を開催したそうです。
高い運転技術を目のあたりにしただけでなく、運転士の安心・安全への配慮や運転への真摯な姿勢も感じられた「第2回全国ジェイアールバスグループ運転競技会」。取材を通して、運転士さん一人ひとりの運転技術や安全への心がけで、安心してバスが利用できるのだなと感じました。
(バスとりっぷ編集部)