二十四節気の「穀雨」とは、暖かな春の雨が穀物を潤す時期のことで、「こくう」と読みます。そろそろ春は終わりに近づき、夏が近づくころでもあります。「穀雨(こくう)」と言われるようになった由来やこの時期の過ごし方などをご紹介します。
二十四節気の「穀雨(こくう)」とは
今年2025年は4月20日が二十四節気の1つ「穀雨(こくう)」です。この4月20日から次の暦である5月5日の「立夏(りっか)」の前日までが「穀雨」の期間とされています。
「穀雨」は、「百穀を潤す春の雨が降るころ」を意味しています。「穀雨」の前の暦が4月4日の「清明(せいめい)」です。「清明」の頃には雪が降らなくなり、「穀雨」の頃には、霜がおりることも少なくなると言われ、「穀雨」は田植えや種まきの準備を始めるのに適した時期とされてきました。
4月の二十四節気は、4日の「清明」で始まり、その次が20日の「穀雨」となります。次の暦は夏の始まりとされる5月5日の「立夏」となりますので、「穀雨」は春としては最後の二十四節気の暦となります。
「穀雨」と「農業」
穀物や野菜が育つためには、適度な雨が必要です。「穀雨」は、冬の間は閑散としていた田畑に、恵みの雨をもたらす時期です。
昔から農業を始めるのには「穀雨」を目安としてきました。田んぼに水を張り、田植えの準備を行ったり、畑に麦の種まきや夏野菜の植え付けを行ったりするなど、本格的に農業を始める時期にあたります。昔から農家は、穀雨の時期にしっかり農業の準備をすると、その年の収穫が豊かになると信じられていました。
また、二十四節気は中国から伝わってきた暦であるのに対し、日本で作られた暦には「雑節」があります。その雑節の一つ、5月1日の「八十八夜」は、茶摘みの頃ですが、田植えの目安ともされています。「穀雨」の期間に入っているのもうなずけますね。
なお、「八十八夜」は、立春から数えて八十八日目で、八十八という感じを組み合わせると「米」という文字になることや「八」は末広がりで縁起が良いということから、農業にとって縁起が良いとされてきました。
「穀雨」の頃の天気の注意点
「穀雨」の頃にあたる4月下旬から5月初めごろは、気温が上がるとともに、空気中に含むことのできる水蒸気量が増えるため、一度に降る雨の量が増えるころでもあります。雨が降る時には、シトシトと優しい雨が降るのか、それともバケツをひっくり返したような激しい雨の降り方なのか、雨の降り方に加えて、予想される雨量や雨の降る時間などにも注意して、雨対策を行う必要があるでしょう。
日中晴れれば、何をするのにも過ごしやすい頃です。4月下旬の最高気温の平年値は東京で21.1℃と、暑すぎず寒すぎず快適に過ごせる日が多くなります。ただ、条件が揃えば気温上昇しやすく、最高気温が25度どころか、30度近くまで上がることも少なくありません。
また、寒気の影響を受けにくくはなるものの、日によって寒暖差が大きいのが特徴です。「穀雨」の期間にある「八十八夜」は霜降りにくくなることから、「八十八夜の別れ霜」などと昔から言い伝えられてきましたが、その一方で「九十九夜の泣き霜」という言葉も言い伝えられています。立春から数えて九十九日目となっても、まだ霜の被害を受けることも稀にあるということです。気を緩めがちですが、急な冷え込みには油断せずに気を付けたい時期でもあります。
「穀雨」の時期の過ごし方
「穀雨」の時期は、春から夏へ移り変わるころで、身近な自然の変化を目で楽しむことができます。
桜の季節から生き生きとした新緑が美しい季節に変わり、藤の花やツツジの花が美しく咲き誇ります。若葉が美しく、森林浴にもぴったりの季節になりますので、公園や山道にハイキングやピクニックに出かけるのも良さそうです。
また、「穀雨」は植物が育ちやすい時期になりますので、夏野菜の植え付けにもぴったりです。家で育ててみたい、トマトやナスなどガーデニングを始めるのにも良いでしょう。
田畑に目を向けて見ると、日に日に穀物が育つ様子が見られるかもしれません。快適に過ごせる日が増える一方で、夏もすぐそこまで近づいています。半袖や帽子など夏物の準備を整えながら、自然にも目を向けて、春から夏への移ろいを楽しんでみてはいかがでしょうか。