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雪道以上に危険!?路面凍結に注意すべき場所や時間帯は?安全に運転・歩行するポイント


冬季の路面凍結は積雪よりも危険で、日本全国で多くのスリップ事故や転倒事故を引き起こしています。路面が濡れて気温が氷点下になると凍結が起こりますが、気温が氷点下でなくても、日陰や夜間には凍結することがあるため注意が必要です。特に注意すべき場所は橋や交差点、トンネルの出入口、日陰などです。運転対策としてスタッドレスタイヤの装着やスロースピードでの運転が推奨されます。歩行者は小さい歩幅ですり足で歩き、すべりにくい靴を履くことが重要です。凍結が予測される時間帯や条件を理解し、未然に事故を防ぐ心構えが必要です。

何かと不安の多い冬の道。積雪・降雪はもちろんですが、凍結した道路のすべりやすさはそれ以上!車はスタッドレスタイヤを履いていても普段のようには止まれません。

路面凍結は、路面が濡れていて、路面温度が氷点下になっているときに起こります。油断しがちですが、雪に限らず雨や霜、湧水などでも”路面が濡れた状態”は生じます。また誤解しやすいですが、”気温”が氷点下でなくても凍結する可能性があるので、ご注意ください。

路面凍結によって、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故は全国で毎年数多く発生しています。思わぬ事故に遭わないためにも、路面凍結に注意すべき場所や凍結した道路を運転・歩行するポイントについて、事前に確認しておきましょう。


路面凍結とは

路面凍結とは、路上の水分が凍結した状態のことです。
凍結した路面では、タイヤや靴との間の摩擦(抵抗)が小さくなるため、すべりやすくなります。そのため、車の場合はハンドルやブレーキの制御がきかずスリップしたり、歩行者の場合はすべって転倒したりと、事故が起こりやすく大変危険です。

北海道では、札幌市内だけでも毎シーズン1000人以上が凍結した路面で転倒して救急搬送されているそうです。
一方で東京都内(※)でも、1月に積雪があった2021年度の冬は604人でしたが、積雪がなかった2022年度の冬でも、50人が凍結などによる転倒事故で救急搬送されています。

路面凍結は、決して寒冷地や降雪地帯だけで起こるとは限らないのです。

※稲城市、島しょ部を除く


路面凍結の種類はさまざま 見た目や特徴は?

ひと口に路面凍結といっても、その見た目や特徴はさまざまです。いくつか代表的なものをご紹介します。

凍結して表面が氷に覆われた状態の路面を「アイスバーン」といいます。一般的には、表面に光沢がなく、黒または茶色やグレーっぽい見た目をしています。

アイスバーンの中でも、表面が光沢を帯びてつるつるしている凍結路面は、「つるつる路面」や「非常にすべりやすい路面」といって区別されます。

その中でも、鏡のように表面がなめらかでつるつるになった路面が「ミラーバーン」です。ミラーバーンは、スタッドレスタイヤなどによって磨かれてできるため、交通量の多い交差点や道路付近でよく見られます。まさにスケートリンク状態のため、車の停止・発進や、歩行者が横断歩道を渡る際など、十分な注意が必要です。

また、表面が薄い氷膜に覆われ、黒く濡れているように見える路面は「ブラックアイスバーン」と呼ばれます。ライトがあたると光って見えます。一見濡れているだけにも見えるため、凍っていることに気づきにくく大変危険です。冬季に路面が黒く濡れているように見えたら注意をしましょう。

路面凍結の種類

路面凍結の種類


凍結した道路はどれくらいすべりやすい?

凍結した道路は、雪道(積雪や降雪している道路)以上にすべりやすくなっています。

過去(1997〜2006年の10年間)に土木研究所が行った調査(高田ほか, 2010)によると、冬季に北海道の一般国道で発生した車のスリップ事故は、約1割が雪道、残りの9割は凍結した道路と、積雪よりも凍結した道路での事故の方が多くなっていました。

路面のすべりやすさを示す値として、「すべり摩擦係数」があります。この値が小さいほど、路面がすべりやすい状態であることを表します。

<路面状態とすべり摩擦係数>
乾燥した道路:約0.7〜0.9
雪道:約0.2〜0.4
凍結した道路:約0.2以下

ただ、すべり摩擦係数だけでは、イマイチすべりやすさがイメージしにくいと思いますので、車がブレーキをかけてから止まるまでの「制動距離」で比較してみましょう。
日本自動車タイヤ協会の試験結果によると、スタッドレスタイヤを装着した普通自動車が時速40kmで走行した場合の制動距離は、乾いた道路で約7.9mです。これに対して、雪道(圧雪状態)では21.0m(乾いた道路の約3倍)、凍結した道路(つるつる路面)ではなんと78.7m(乾いた道路の約10倍)もありました。

このように、万が一路面凍結でスリップしてしまった場合、車は簡単には止まれなくなってしまいます。凍結した道路を走行する際には、ノーマルタイヤでの走行はもちろんのこと、スタッドレスタイヤを履いていても十分に注意しなければならないのです。

路面状態ごとの制動距離の比較(スタッドレスタイヤ使用時)

路面状態ごとの制動距離の比較(スタッドレスタイヤ使用時)


路面凍結が起こる条件

路面凍結は、(1)雪や雨などによって路面が濡れていて、(2)路面温度が氷点下になるときに起こります。ただし、この条件はそう単純ではありません。(1)と(2)について、もう少し詳しく見ていきましょう。

(1)路面の状態
「路面が濡れた状態」の発生はさまざまです。
とくに注意したいのが、雨が降ったときや、日中気温が上がって雪がとけたときです。そのあと夜間にかけて冷え込むと凍結するおそれがあるので注意しましょう。
また、「路面が濡れた状態」は、雨や雪に限りません。例えば、霜や放射霧、地下水やトンネルの湧水が道路に流れ出しているような状態でも、路面凍結の可能性があります。

(2)路面温度
路面温度は、気温とは異なります。日陰や夜間には、路面温度が気温よりも低くなることがあります。予想最低気温が3〜4℃くらいでも、路面温度が氷点下に達して路面凍結が発生する可能性があるため注意しましょう。

ちなみに、車のメーターパネルやエアコンパネルに雪の結晶のようなマークが表示される場合があります。これは、「低温表示灯」や「フリーズマーク」と呼ばれ、路面凍結の可能性があることをお知らせしてくれる機能です。メーカーにもよりますが、だいたい外気温が3℃以下になると点灯するようになっているようです。
あくまでひとつの目安にすぎませんが、このマークが点灯したら、濡れた路面では凍結の可能性があるかも、という意識をもって運転するとよいでしょう。


路面凍結が発生しやすい時間帯は?

路面凍結が起こりやすい時間帯は、気温が下がる夜間から朝にかけてです。日が沈むと、気温とともに路面温度もどんどん下がっていき、一般的に明け方前後に最も低くなるため、凍結の可能性が高まります。

また、朝は日差しによって凍った路面の表面がとけ始めますが、実はこの凍結した路面の表面が少しとけている状態というのが、非常にすべりやすく危険です。

こうした背景もあって、車のスリップ事故や歩行者の転倒事故は、朝の通勤時間帯にとくに多くなっています。
冬季は、夜間はもちろん、朝の運転や歩行の際には路面凍結に十分注意をして、時間に余裕を持って行動しましょう。


路面凍結しやすい場所は?

以下の場所では路面凍結が起こりやすいため、車の運転や歩行の際にはとくに注意しましょう。

・橋の上や陸橋、トンネルの出入口付近
橋の上や陸橋、トンネル出入口付近は、風が通ることで路面温度が下がりやすいため、路面が凍結しやすくなっています。

・交差点付近
交差点付近では、横断歩道や停止線などの白線は水が染み込みにくく、薄い氷の膜が出来やすくなっています。
またすでに積雪や凍結がある場合、交差点付近は多くの車が停止・発進を繰り返す場所であるため、車の熱やタイヤの摩擦熱によってとけて再凍結することで、さらに路面がつるつるになっていることがあります。

・日陰
日陰はいったん路面が凍結すると、完全にとけるまでに時間がかかります。建物の北側や山間部など、日陰になりやすい道では、日中でも凍結している可能性があります。

・バスやタクシーの乗降所、お店や地下鉄駅の出入り口など(歩行者)
歩行者の場合、バスやタクシーの乗降所、お店や地下鉄駅の出入り口、車の出入りのある歩道付近では、積雪時には雪が踏み固められて凍りやすくなっています。

路面凍結にとくに注意すべき場所

路面凍結にとくに注意すべき場所


【路面凍結対策〜自動車編〜】スリップ事故を防ぐ運転の仕方

凍結した路面では、ひとたび車がスリップしてしまうと制御することは難しいため、「スリップさせない運転」をすることが重要です。路面凍結によるスリップを防ぐ運転のポイントを見ていきましょう。

(1)スタッドレスタイヤなどの装着は必須、かつ過信しない
路面凍結のおそれがある場合には、スタッドレスタイヤなどの冬用タイヤまたはタイヤチェーンを必ず装着しましょう。沖縄県を除いて、積雪・凍結した道路をノーマルタイヤで走行することは、法令で禁止されています。積雪がなくても路面凍結する可能性があることを理解し、タイヤの準備をしておくことが大切です。

一方で、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンも万能ではなく、絶対にすべらないわけではありません。過信しすぎず、下記のポイントを意識して運転しましょう。

(2)スピードを出さず、車間距離を十分にとる
すでに説明した通り、凍結した道路ではブレーキを踏んでから停止するまでの距離が長くなります。安全な位置で停止し、スリップによる追突事故などを防ぐためにも、いつもよりスピードを落とし、車間距離を多めにとって走行しましょう。
なお、雪道でも車間距離は普段の2倍以上と言われていますので、さらにすべりやすい凍結道路では、それ以上の車間距離をとることをおすすめします。

(3)急ハンドル、急ブレーキ、急発進はNG
急ハンドル、急ブレーキ、急発進など「急」のつく運転は、凍結した道路ではスリップの原因になるため避けましょう。
停止する際には、早い段階から、ゆっくりやさしくブレーキをかけてください。エンジンブレーキを使って減速してからフットブレーキを使うのも有効です。ただし、急なエンジンブレーキの使用は逆に危険ですので、注意してください。
発進時には、タイヤが空転しないよう、ゆっくりアクセルを踏みましょう。

(4)カーブではスローイン・スローアウト
凍結した道路では、カーブを曲がりきれずに道路の外側へ飛び出してしまったり、対向車線にはみ出してしまったりする危険があります。

遠心力はスピードに比例して大きくなるため、スピードを落としきれなければ、摩擦力が小さい凍結道路では車が横すべりしてしまいかねません。また、ブレーキとハンドル操作を同時にすると、タイヤのグリップ力が縦横に分散してしまい、スリップしやすくなります。

そのため、まずはカーブに入る前にしっかり減速(スローイン)をしましょう。十分にスピードを落とした状態でカーブへ進入し、ゆっくりハンドルを切り始め、再びゆっくりと戻してから、徐々に加速(スローアウト)をするのがポイントです。

(5)無理に運転をしない
凍結した道路の運転に自信のない方は、無理せずルートを変更する、昼間の時間帯に移動する、運転を控えるといった判断もときには必要です。


【路面凍結対策〜歩行者編〜】すべって転倒しない歩き方

凍結した道路で転んで思わぬ怪我をしないよう、歩き方や靴の選び方はどのような点に注意すればよいのでしょうか?ポイントを見ていきましょう。

(1)歩幅は小さく、すり足で歩く
凍結した道路を歩くときは、歩幅が大きいと体のゆれも大きくなって重心を崩しやすいため、小さな歩幅で歩きましょう。

そして、足の裏全体をつけてすり足気味に歩くのがポイントです。すり足といっても、完全に足を擦りながらではつまずいてしまうこともあるため、軽く足を浮かせるくらいで歩きましょう。

(2)時間に余裕を持って歩く
急いでいると、うっかり凍結路面の歩き方を忘れてしまいがちです。また路面の凍結状態をよく確認しながら歩くためにも、時間に余裕を持って歩きましょう。

(3)両手はあけて歩く
万が一転んだ時にも受け身を取れるよう、手はポケットに入れずに歩きましょう。荷物で手を塞がないよう、カバンは両手があくリュックがおすすめです。おしゃべりやスマートフォンなどのながら歩きは、足元への注意が低下して危険なのでやめましょう。

(4)すべりにくい靴を履く
凍結した道路を歩くときには、ヒールはもちろんのこと、革靴や普通のスニーカーもすべりやすいので避けましょう。できれば、靴底に深い溝やすべり止めがついた冬靴がおすすめです。
ただし、深い溝があっても底が硬いとすべりやすいため、柔らかいゴム底のものを選んでください。

ちなみに、私自身は長野県に引っ越す際にスノーシューズを購入しましたが、雪がとけて凍ったあとの路面でのホールド感が全く違いました。
路面凍結に慣れていない人こそ、こうした靴を持っておくと安心感が違うように思います。ですから、降雪地帯や寒冷地でなくても、東京や名古屋のように年に1、2回でも降雪の影響がある地域であれば、冬靴を持っておくのがおすすめです。

そうはいっても、わざわざ専用の靴を買うというのはハードルも高いでしょう。その場合、すべり止め効果のある靴用アタッチメントも販売されているので、いつもの靴に取り付けるという方法もあります。

路面凍結時の歩き方のポイント

路面凍結時の歩き方のポイント

路面凍結に慣れている人はいません。
ですが、路面凍結の条件や発生しやすい場所・時間帯を知っておくことで、「凍結しているかも」と推測できるようになり、対策や心構えができるようになります。凍結した道路の運転や歩くポイントを理解して、未然に事故を防ぎましょう。

(参考)
・札幌市 「雪日の自己転倒 救急搬送」
・東京都消防庁 「積雪や路面凍結に関わる救急事故に注意しよう」
・高田ほか(2010) 「北海道の一般国道における冬期交通事故の形態について」 (独)土木研究所

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