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センチメンタルな季節。古の時代の恋心に想いを馳せてみませんか?


豊かな四季の移ろいに、古くから、人は様々な物事や人に思いを馳せたり、焦がれたりしてきました。肌寒く感じることが増えてきた、こんな時季は、少し感傷的なムードを感じたりも。今回は和歌の中から、秋に想いを寄せる人へ詠ったものをご紹介します。移り行く季節と、そこで感じる想いに、ぜひ、キュンとしてみてください。


額田王より想い人へ

君待つと 我(あ)が恋ひをれば わが屋戸(やど)の
すだれ動かし 秋の風吹く

額田王(ぬかたのおおきみ)は飛鳥時代の女性歌人です。万葉集に残されているこの歌は、額田王が天智天皇を想って詠まれた歌とされています。現代の言葉に置き換えると『愛しい人を待って私がずっと恋しく思っていると、私の部屋のすだれが動いて、秋の風が入ってきた』となります。当時はすだれがドアのような役割でしたので、風でかすかに動いたすだれに、恋しく思う相手の訪れを期待してしまう気持ちは、誰しも経験があるのではないでしょうか。期待をしつつも、入ってきた秋の少し冷たい風に寂しさを感じる恋心を詠った歌です。心の温度と肌で感じる温度の対比がとても味わい深い歌ではないでしょうか。


柿本人麻呂より妻子へ

秋山に 落つる黄葉(もみじば) しましくは
な散り乱(まが)ひそ 妹があたり見む

柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)も飛鳥時代の歌人です。万葉集に残されているこの歌は、柿本人麻呂が赴任先の石見から都へ発った時の歌とされています。現代の言葉に置き換えると『秋山で落ちていく黄葉よ、しばらくの間は散り乱れないでおくれ、妻子のいるあたりを見たいから』となるでしょうか。長旅で妻子を連れて行くことのできない名残惜しさを、何度も振り返る情景が見えるようです。当時は「行ってきます」の別れが、2度と会うことができないかもしれない、今生の別れとなってしまうことが往々にしてありました。ですから、「時を止めて、これ以上離れたくない」という身を切るような想いとともに、葉が散って、枯れて、凍える寒さに閉ざされるような、これからの時間との季節の対比も感じられる歌ではないでしょうか。


山野憶良より星の恋人たちへ

秋風の 吹きにし日より いつしかと
我(あ)が待ち恋ひし 君ぞ来ませる

山野憶良(やまのうえのおくら)は飛鳥時代後期から奈良時代に活躍した歌人です。万葉集に残されているこの歌は、実は、七夕を詠んだ歌です。現代の言葉に置き換えると『秋風が吹き始めた日から、いつになるかと待ち焦がれたあなたが、今こそ来てくれる』といったところでしょうか。織姫が彦星への気持ちを表した歌です。1年もの間、巡る季節を越えて、ようやく会うことができる喜びに満ち溢れています。


藤原時平より女性へ

をみなえし 秋の野風に うちなびき
心ひとつを たれによすらむ

藤原時平は平安時代の人です。日本の歴史を学ぶ上でも、多くの逸話が残っており、物語やドラマなどでもしばしば描かれることの多い人物ですが、歌人としての一面も持っています。古今和歌集に残されたこの歌には様々な解釈がありますが、ストレートに現代の言葉に解釈をすると『可憐なおみなえしよ、秋の野原に吹く風にゆらゆらとなびいているけれど、その恋心を、誰に寄せているのだろうか』となります。この主題ともなっている「おみなえし」は、「女郎花」と書き、秋の七草のひとつで、黄色の小さな花を咲かせすらりとした姿から、美女を圧倒するほどに美しい、またそのような美しい女性を連想させる植物として、多くの歌で詠まれてきました。

この時期、心や体を何に動かされていますか?

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