登山はできるだけ単独ではなく、2人以上で山に入るのが基本です。山では想定外のトラブルがおき、単独登山の場合には救助を呼ぶこともできない状況になることも珍しくありません。ところが他に誰かいる場合には、その人に助けを呼んできてもらうなんてこともできます。
とはいえ、理想は複数人での登山だとわかっていても、登山仲間と休みが合わないという人や、自分のペースで登山するのが好きという人もいるはずです。そこで今回は、ソロ登山・単独登山を安全に楽しむために、どのような備えが必要なのかについてご紹介します。
ソロ登山で必要となるアイテムを用意する
ソロ登山する場合には、複数人での登山の荷物の他に下記アイテムを用意しましょう。
・緊急用ホイッスル
・エマージェンシーシート
・ファーストエイドキット
・予備のバッテリー
・予備の食料
この5つは必ず荷物に入れておきましょう。いずれも遭難や滑落を想定したもので、誰にでも起こるトラブルのひとつです。複数人での登山とは違い、そこからトラブル解消までの時間を、すべて自分で乗り切らなくてはいけないのがソロ登山の難しさになります。
遭難や滑落をしたときに、自分の居場所を誰かに伝えるためには緊急用ホイッスルは必須です。エマージェンシーシートは寒い夜をしのげますし、ファーストエイドキットはケガを簡易的に処置できます。
自分は遭難なんてしないと思っている人もいるかもしれませんが、数百メートルの低山でも遭難により亡くなっている方もいます。繰り返しますが、山での遭難は誰にでも起きる可能性がありますので、単独で山を登る場合には遭難に備えたアイテムを用意しましょう。
事前の情報収集がとても重要
複数人で登山をする場合には、初めての山でも情報収集をあまりしなくても、問題なく登れることもありますが(本当は好ましくありませんが)、ソロ登山の場合には事前の情報収集がとても重要になってきます。
・登山ルートの確認
・過去の遭難情報
・天気予報
・直近で同じルートを登った人のレポート
このような情報をしっかりとチェックしましょう。下調べしすぎると登る楽しみがなくなるという人もいるかもしれませんが、登る楽しみよりもリスク管理のほうが重要です。特に過去の遭難情報や事故情報、そして天気予報の情報はしっかりと頭に入れておきましょう。
天気予報をチェックして、当日もしくは直近で雨が降っている場合には、登山計画を見直してください。おすすめは登山の中止ですが、どうしても登りたい場合には、ぬかるんだ道でも滑りにくい登山靴を用意するなどの対策を行ってください。
情報収集をしっかりとすることで、遭難リスクは大幅に減らせます。どうしても情報収集する時間がないという場合には、初めての山ではなく、慣れ親しんだ山を登るのがおすすめです。
登山計画を立てて家族や友人と共有する
1人で登山するメリットのひとつが、自分の好きなタイミングで好きな山に行けるということですが、完全に自分だけでクローズする登山は避けましょう。登山計画を立てるのは普段の登山と同じですが、それを家族や友人と共有してください。
登山計画を詳しくチェックしてもらう必要はありませんが、入山する前と下山した後に連絡を入れる約束をしておいてください。その際に「◯時までに連絡がなかったら遭難した可能性がある」と伝えておきましょう。
また、Google Mapの「現在地の共有」機能を使って、位置共有しておくのも有効です。ただし、位置共有できるのは電波の入る山のみです。圏外の山に登るような場合には、YAMAPアプリの「みまもり機能」を使って現在地を共有しておきましょう。
ただしYAMAPアプリの「みまもり機能」は、すれ違う人が少ない山ではそれほど有効ではありません。このため単独登山をする場合には、圏外になる山はできるだけ避け、スマートフォンの電波が届かない山を登りたいなら、登山する人が多い人気の山を選びましょう。
あらゆるトラブルを想定して対策を立てておこう
ここまでご紹介した内容を読むと、「そこまでする必要はあるの?」と疑問に感じている人もいるかもしれません。確かにそこまで備えておかなくても、ほとんどのケースでトラブルに合うことがないまま下山できます。
ただし、山での事故や遭難は確率論で起きます。警察庁の発表によると令和4年の山岳遭難発生件数は3,015件あります。遭難者数は3,506件で、そのうち327名が亡くなっているか、行方不明となっています。この中にはもちろんベテランの登山家も含まれています。
しかも遭難件数も遭難者数も増え続けており、いつ誰が遭難してもおかしくありません。そういうときに備えがあるのとないのとでは、生存率が大きく変わってきます。
自分だけは大丈夫という、根拠のない自信は捨てましょう。あらゆるトラブルが起きることを想定して対策を立てて山に向かう。それがソロ登山するときに、忘れてはいけない大切な心構えであり、その心構えこそが自分の身を守るために必要な最大の備えになります。